兵庫編の締めくくりに、阪急沿線が産んだB級グルメを紹介したのち、三田のニュータウンの行く末について考えてみることとしたい。
阪急十三「やまもと」のねぎ焼
有馬温泉から神戸電鉄で新開地へ到着し、新開地始発の阪急神戸線特急梅田行きへは9分接続。15分ヘッドの神戸電鉄に対し、10分ヘッドが基本の阪急・阪神へは接続が良くない面もあるが、致し方無し。今回も、僅か1分前に先発の特急梅田行きが出て行ったばかりだった。19:55に新開地を出発し、梅田の1駅手前、阪急の3幹線(神戸線・宝塚線・京都線)が集まる十三駅に到着したのは20:26。
▲阪急の主要3路線が集まる”扇の要”十三駅(京都線ホームで撮影)
ここ十三は、概して高級なイメージを持つ阪急の中でも、庶民的な飲食店街が広がっていることで知られる。肩を寄せ合うような横丁が縦横無尽に広がっており、東京でいえば蒲田や日暮里のような雰囲気。梅田から阪急で1駅の場所に、こんなディープな世界が広がっているというのも、意外や意外。2014年には密集市街地ゆえに駅近隣の飲食店街で火災が発生し、十三駅西改札口が86日間にわたり閉鎖されるという出来事もあったが、現在は焼け跡に新しい店が再び建っているというくらい、元気な街だ。阪急沿線にありながら、「コテコテの大阪」に近い空気を感じるのは、なんだか新鮮な体験だ。
▲大きな駅の割に小ぢんまりした十三駅西改札
その十三駅西改札口からアーケードを抜け、国道を渡ってすぐのところに「ねぎ焼 やまもと」の本店がある。ねぎ焼とは、お好み焼きの先祖にあたるものだ。水に溶いた小麦粉を使うのは同じだが、丸く伸ばした生地の上に大量の青ねぎを乗せ、そこに肉などの具をのせ、一気に水分を飛ばして焼き上げる。この焼き上げに技術を要するため、焼き上げたものを店員さんが目の前に持ってきてくれる。関西風お好み焼きは客が焼くスタイルが多いが、ねぎ焼は焼くのも店員さんの役目。味付けは醤油が基本で、どろっとしたソースではないのも、お好み焼きとの相違点だ。
店内はカウンターのみで、帰りにねぎ焼をつついてちょっと一杯…という感じの客で賑わっていた。しばらく待つと、待望のねぎ焼が目の前の鉄板に運ばれてきた。鉄板の上に乗っているので、最後まで冷めない。はふはふ、じゅわり。うん、これは関西風お好み焼きよりも、自分にとっては好みの味だ。
感動しているうちにぺろりと平らげ、オムそばも注文。これも鮮やかな手つきで鉄板の上を踊り、さっと出てきた。うん、これも旨い。値段も安いし、ちょっと寄って帰ろう、という気分の時にはちょうどいい店だ。持ち帰りの人も多く、気軽に親しまれている様子が伺える。
「お高い阪急」の中にあった「お値打ちねぎ焼」。阪急沿線に溶け込んだ、まさにソウルフードなのだった。
▲梅田などにも支店を持つが、発祥はここ十三
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うまくいかない三田駅の接続