東北・北海道

【栃木】【福島】期待を背負う特急リバティ会津──野岩鉄道会津鬼怒川線・会津鉄道会津線 #65

2017年に廃止された、東武浅草発、快速東武日光・会津田島行き。その後を継ぐ南栗橋発急行東武日光行きに乗り、日光線と鬼怒川線の分岐駅、下今市へ8:07に降り立った。

▲下今市で分割したのち、発車を待つかつての快速会津田島行き。

※記事中の写真は複数回の訪問の中で撮影したものを組み合わせていますので、旅程と一致しない時間帯のものがあります。ご容赦ください。

鬼怒川温泉までは結構な混雑

8:15、下今市発。特急リバティ会津101号会津田島行き。下今市から先の東武鬼怒川線・野岩鉄道野岩線・会津鉄道会津線内は特急列車であることは変わらないものの、この区間は普通列車が少ないため、乗車券だけでも空席に座ることができる特例がある。

ただ、どう見ても特急の見た目であるだけに、下今市のホームでは「特急列車ですが、乗車券だけでご利用いただけます。鬼怒川温泉、会津田島方面へお出でのお客様、どなた様もこの電車をご利用ください」と案内があったほか、ホームに貼り付けられた乗車目標にも「乗車券だけでご利用いただけます」との添え書きがあった。それでも不安な人はいるようで、「これ、本当に乗っていいんですか」と駅員さんに尋ねるご老人もいた。

下今市からの乗車は30名ほど。急行東武日光行きからの乗り換えが半分、東武日光方面からの乗り換えがもう半分といったところか。早朝とあってまだ鬼怒川温泉や野岩線・会津線方面の温泉地を目指す動きは鈍く、多くは日光方面への登山客であるようす。また、登山客は伝統的に(?)普通列車・鈍行の志向が高く、中央本線でも特急よりも普通の方が登山客はよく見る。下今市の分割をやめて急行を4両とも東武日光行きとし、鬼怒川温泉・野岩線・会津線方面をすべて特急に任せるというのは、実情に即した変更なのかもしれない。

▲運良く窓側に座れた。日本の伝統的な紋様があしらわれたシートは快適。Wi-Fiも備えている

下今市からの乗客は空席を探し、適当に座っていく。といっても3両編成ではそこまで空いておらず、1両5名くらいは立ち客が出た。僕は偶々窓側・通路側とも空いていた座席にありつけたが、やはり1時間に1本の各駅停車が特急車3両・・・というのは、やはり輸送力不足気味である。8:15、下今市発。

この日光エリアの周遊客に合わせた、東武日光→鬼怒川公園行きが1本/日、新藤原→東武日光行きが5本/日設定されており、東武日光―会津若松間を直通する快速AIZUマウントエクスプレスも2本/日あるが、全部足しても東武日光⇔鬼怒川温泉方面の直通運転は多くない。特急連絡を主眼とした下今市―東武日光、下今市―鬼怒川温泉方面の区間列車は1時間に1本程度設定されているので、これを東武日光―鬼怒川温泉間の直通運転とするなどしてもっと直通電車を増発し、特急リバティ会津の乗車券のみでの利用を減らす方向に持っていければベストだ。

▲大谷川を渡る(下今市─大谷向)

下今市を出るとほぼ直角に近い急カーブを切り、大谷川橋梁を渡る。大谷川は日光連山からの流れを集めて鬼怒川、そして利根川へと注ぐ川で、雪解け水が覆う時期もあることから、川幅はかなり広い。また、川の両岸が急カーブとなっていることもあって、特急といえど30km/h程度の徐行で渡っていくので、川の流れがよく眺められる。この大谷川を渡ると、もうすぐ鬼怒川温泉というサインでもあり、日光線と鬼怒川線の区切りとして印象的なポイントである。

大谷川橋梁を渡りきると、すぐに大谷向駅となる。下今市駅から見て大谷川の向こう岸にあるから大谷向・・・という安直(?)な駅名であるが、これは日光街道今市宿があった江戸時代からの地名で、下今市駅側に今市宿の本陣があったことによるもの。開業時は大谷向今市という名で、より今市の中心地との一体感を感じさせる名であった。そういえば、日光線の新古河駅も、茨城県古河市内でなく埼玉県側に駅があるにも関わらず、渡良瀬川対岸の古河市街に由来する駅名であり、所在地はずばり向古河。大谷向と似たような感覚であり、川が多く、両岸の交流が盛んだった関東平野ならではの地名と言えるのかもしれない。

大桑、新高徳、小佐越と経て、次は東武ワールドスクウェア・・・だが、停車時間帯は東武ワールドスクウェア開園時間の9~18時に限られるため、8時台の特急リバティ会津101号は通過。周囲は鬼怒川温泉街の南端に位置し、東急ハーヴェストクラブ鬼怒川などこの駅を最寄りとするホテルも多いので、東武ワールドスクウェア専用駅かのような扱いを改め、終日停車としてはどうかとも思う。

▲東武鉄道の停車駅案内でも東武ワールドスクウェア駅の営業時間が明記されている

下今市から20分で鬼怒川温泉に着く。鬼怒川線最大の駅だけあって、さすがに多くの乗客が席を立った。リバティ会津登場前は鬼怒川温泉行き特急の始発が遅く、リバティ会津が浅草6:30発なのに対し、スペーシアきぬは8:00発まで待つ。この間には浅草発のけごんと、JR新宿駅からの直通特急・日光1号と、朝が早い日光観光に合わせ、東武日光行きの特急が連続する。そういった事情もあって、朝イチで鬼怒川温泉に着くリバティ会津で到着する温泉客が案外多いのかもしれない。1分停車のうちに3分の1くらいが下車し、立ち客はいなくなった。8:35、鬼怒川温泉発。

▲観光客で賑わう鬼怒川温泉駅。鬼怒川温泉発喜多方行きの快速AIZUマウントエクスプレス1号が発車を待つ

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「産業鉄道として出発した鬼怒川線」

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