関西

【大阪】【兵庫】阪急生まれのB級グルメ&ニュータウン鉄道の行く末──JR福知山線(JR宝塚線)・神戸電鉄公園都市線 #39

ニュータウンに入れない大阪直通電車

惜しい点があるとすれば、福知山線と神戸電鉄の直通運転はかなわないことだ。両者とも1,067mm軌間、直流1,500V電化であるため規格は同じなのだが、公園都市線は最大18m車4両編成までの入線にしか対応しておらず、日中でも20m車8両編成が走る福知山線の車両を受け入れることはできない。また、神戸電鉄の車両を大阪へ乗り入れようにも、18m4両編成では大阪付近の混雑に対応できないし、神戸電鉄の車両は六甲山の急勾配に対応するための特殊装備が多く、通常の車両に比べて高価であり、増結は難しい。三田駅で増解結をしようにも、敷地に余裕があるとは言えず、増結車を待機させておくスペースもない。よって、福知山線と公園都市線は、対大阪への輸送を担う役割は同じながら、直通運転はほぼ不可能といっていい。

▲三田で発車を待つ公園都市線ウッディタウン中央行き

これは、大阪のベッドタウンとなることが北摂三田ニュータウン開発の前提であったにもかかわらず、福知山線と神戸電鉄の直通運転が考慮されなかったという、計画段階の失敗があるように思う。三田市が位置するのは兵庫県であり、兵庫県の建前としては県都・神戸を無視した開発計画を練ることは難しかったのだろう。「神戸に行かない神戸電鉄」が走るほど大阪と結びついた街になったにもかかわらず、大阪への直通列車が走らないという、ニュータウン住民の利便性が置いてけぼりになる事態を招いてしまっている。

また、福知山線の列車は一駅隣の新三田を始発とする列車が多いため、三田では着席が難しいことから、ニュータウン住民も公園都市線を使わず、直接バスや車で新三田駅に乗り付ける利用が多くなっている。三田駅の乗降人員が一日約36,000人なのに対し、新三田駅の乗降人員は一日約30,000人と、それほど差がない。

新三田駅付近は開発が抑制され、今でも駅前に農地があるほどなので、新三田駅の乗降人員はほぼ全てがニュータウン住民とみていい。三田駅の乗降人員は市街地に加えて有馬・三田線の乗り換えも含むため、公園都市線を利用するニュータウン住民は、36,000人のうち半分もないだろう。故に、ニュータウン住民が福知山線で大阪へ出る際は、公園都市線利用の三田駅乗り換えではなく、バスや車で新三田駅へ向かうほうが多数派であると言える。

公園都市線は、三田から一旦大阪方面へ出発し、二度の直角カーブを描いてニュータウンへ向かう。このため経路はL字を描いており、三田─フラワータウンは直線で結べば3km程度なのだが、公園都市線はL字の直角部分にあたる横山駅を経由していくため、4.3kmと遠回りだ。このことからも、三田駅から直接フラワータウンへと向かう経路で建設すればよかったのではないかとも思うが、今となっては覆水盆に返らず。

※Google Map の「マイマップ機能」で加筆。以下、本記事中の地図は全て同様。

図のように、三田駅からフラワータウンへ直接向かう経路であれば、福知山線の支線としての大阪への直通運転(図中青線)も、三田線の延伸線として神戸・新開地への直通運転(緑線)も容易になっただろう。ただ、三田の市街地の裏手を回り込む経路になるため、三田の郊外にあたる三田線横山駅へ接続するよりも建設費はかさんでしまう。(図は当初計画通りウッディタウン中央―カルチャータウン間を延伸)

しかし、ニュータウンの性格からして、大阪へも神戸へも乗り換えを要する鉄道というのは、果たしてどれほど必要とされただろうか。三田駅と新三田駅の乗降人員にそれほど差がないという事実に、正直に現れてしまっているように思う。新三田で座席が埋まってしまうために三田乗り換えでは座れないし、三田駅まで1kmも遠回りをするためにバスや車で新三田駅へ行った方が早いしでは、このような結果になるのは明白だ。

▲神戸電鉄三田駅。残念ながらここからの乗客では座席は埋まらない

また、前回も触れたが、ニュータウンから神戸へのアクセスを第一に考えるならば、有馬・三田・公園都市線は遠回りの新開地経由ではなく、谷上から北神急行線に乗り入れる方をメインルートにすべきであった。しかし、有馬・三田・公園都市線およびJR福知山線は狭軌(1,067mm)なのに対し、北神急行線・神戸市営地下鉄西神・山手線および直通運転を予定している阪急神戸線は標準軌(1,435mm)と、現状のままでは谷上を境とした直通運転ができない。神戸市営地下鉄西神・山手線―北神急行線―神戸電鉄有馬・三田・公園都市線をすべて1本で結んだとすれば、以下の図のような鉄道ネットワークが広がっていたはずだ。

これにより、三宮―三田間は約40分(5分短縮)、三宮―ウッディタウン中央は約45分(10分短縮)で結ぶことができ、三田のニュータウンは神戸のベッドタウンとしても発展していたことだろう。しかし、このプランだと大阪へは相変わらず三田で乗り換えになる。大阪をとるか神戸を取るかでどちらかに分かれることになるが、どっちつかずな現状よりもマシだと思う。

ニュータウンの設計段階から、公園都市線を福知山線の支線として、あるいは神戸へ通じる幹線の一部として計画に織り込んでおけば良かったとしか言いようがない。しかし、様々な利害対立の調整や、思惑の交錯があって今があるということも、忘れてはひいけない。今があるのは、先人たちの努力の結晶でもあるのだ。

▲他の乗客がいない神戸電鉄の車両。どうしても寂しさを感じる

これから考えるべきは、御多分に洩れずに高齢化してゆくニュータウンを、どのように維持発展させてゆくか。大阪や神戸の附属地としての役割だけでは、いずれ限界に突き当たる。

幸い、北摂三田ニュータウンの域内には工場や研究機関、大学・高校なども複数立地しており、住宅都市一辺倒の機能ではないため、大阪・神戸から三田方面へ向かう流れもある。これを活かして研究開発の拠点へとなっていくのか、ゆとりある環境をいかしたベンチャーの拠点になっていくのか。或いは、10~20年をかけてゆっくりと人口が増えていったために、ニュータウン住民の世代間の交代がうまくいくのか。どのような未来を目指してゆくかは、何も地元だけの課題ではない。

奇跡の発展を遂げた三田市の将来がどうなってゆくか…これからの歩みを、注意深く見守ってゆきたい。

(兵庫編 おわり)

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