関東

【茨城】新駅設置とバス再編で「攻めのローカル鉄道」へ――関東鉄道竜ヶ崎線(2) #44

命脈尽きる稲敷エリア広域バス

そうしたローカル路線バスの衰退に歯止めをかけるべく、茨城県および自治体が2017年から実証運行を行なっているのが「稲敷エリア広域バス」である。竜ヶ崎駅からは「美浦みほ・龍ケ崎ルート」が出ており、あみプレミアム・アウトレットを経由し、美浦村役場に近い「みほふれ愛プラザ」を終点とする。

1日4往復と関鉄バスの江戸崎線よりも本数は少ないが、途中の「牛久市奥野生涯学習センター」で「江戸崎・牛久ルート(ひたち野うしく駅〜江戸崎)」、「あみプレミアム・アウトレット」で「江戸崎・阿見ルート(ひたち野うしく駅〜荒川沖駅〜江戸崎)」と相互に接続する。途中二ヶ所で相互に接続を取るため、直行系統がない時間帯でも面的に利用できるのが大きな特徴だ。途中停留所も一般路線よりも少なく設定されており、ローカル路線バスにありがちな「誰もいない停留所にダラダラと停まっていく」ということがない。

この「広域バス」は稲敷エリアだけでなく、前回の常総線の終点・下館駅〜筑波山口を結ぶ「筑西ちくせい市広域連携バス」や、県南東部の「鹿行ろっこう広域バス」など、ローカル路線バスが廃止されてしまった地域において、2017年から相次いで運行を開始している。広域バスは集落を縫って走るというよりも、国道バイパスを経由して停留所を少なく抑えたものが中心であり、速達性を持たせて都市間連絡の機能を重視していることが、旧来のローカル路線バスとの最大の差であろう。

言わば、ローカル路線バスを現代風に再編したものといえる。公共交通機関不毛の地となってしまった茨城県の希望の星となれるか期待がかかっていたが、残念ながらこの稲敷エリア広域バスは3路線中2路線が2019年3月で運行終了となることが決まっている(出典:茨城新聞クロスアイ https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15432318865194 )。美浦・龍ケ崎ルートが含まれるかどうかは不明だが、阿見町が費用負担に難色を示しているとされ、阿見町を経由する美浦・龍ケ崎ルートおよび江戸崎・阿見ルートが廃止となる可能性が高い。また、鹿嶋市・潮来いたこ市・行方なめがた市を結ぶ「鹿行北浦ろっこうきたうらライン(鹿島大野駅〜潮来駅)」から鹿嶋市が脱退することも決まった(出典:茨城新聞クロスアイ https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15445386340671 ) 。 一部路線では定期券導入など、定着の兆しを見せている広域連携バスであるが、やはり猛烈なクルマ社会の中では、いくら面的連携の機能を持たせたといっても、ローカル路線バスの生き残りは非常に厳しい。なにせ、下館などは筑西市広域連携バスの運行が始まるまで、”バス無しの市”という不名誉な状態にあったほど、茨城県は公共交通機関不毛の地なのだ。

このうち、竜ヶ崎駅14:40発のみほふれ愛プラザゆき広域バスを見てみたが、竜ヶ崎駅からの乗客は僅かに数人だった。龍ケ崎市街地ではやや北に外れ、流通経済大学にも近い「龍ケ崎一高前」と、中心商店街の東端にあたる「龍ケ崎二高前」にしか停車しないため、竜ヶ崎駅←→市街地連絡の機能を持たないこともあるだろうか。それでも僅か数人とはいえ、クルマ社会のただなかでもバスを頼りにする人がいなくはないのだが、中型ワンステップバスに乗客数名ではいかにも非効率。「この乗車数ではなあ…」と思ってしまうのも、また然りなのだった。

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「連携を欠くコミュニティバス」

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