九州・沖縄

【沖縄】LCCを迎える南ぬバス──宮古協栄バス【9】みやこ下地島空港リゾート線 #54

宮古島のバスを変える?下地島空港エアポートバス

さて、そんな観光客に使いづらい宮古島のバスであるが、下地島空港のジェットスター就航によって、観光客にも使いやすいバスへと生まれ変わる、きっかけを掴むかもしれないのだ。

先述の通り、現行の宮古空港に乗り入れる路線バスは一日3.5往復と、お世辞にも使いやすいとは言えない。乗り入れるのは【5】新里宮国線だけで、リゾート施設が多い旧上野村と平良市街を結んでいるのだが、起終点の宮国はリゾートから少々遠く、徒歩15~20分を要する。つまり、観光客にはほとんど利用されていないと言っていい。

▲夕刻の【5】新里宮国線。この便は空港には寄らない

しかしながら、下地島空港へは2社がエアポートバスを運行することが発表されている。しかも、2社とも平良市街および宮古空港を経由して上野のリゾートまでを運行するというから、下地島空港だけでなく宮古空港にとってもリゾート直結のエアポートバスが走り始めることとなり、さらには平良市街⇔リゾート間の利用もできるようになるため、宮古島のバス旅が便利になるのだ。歴史的な方針転換と言えると思うが、どういった背景があるのだろうか。

まず、エアポートバスを運行すると表明したのは「宮古協栄バス」。島内5路線の路線バスを運行し、貸切やタクシーも手掛ける島内最大手の事業者である。

※画像は下記リンクより引用

ジェットスター就航の下地島空港、バスで便利に 3月30日から運行 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/382673

【9】下地島空港リゾート線は、起終点含め25の停留所を設け、「みやこ下地島空港」と「シーブリーズカジュアル前」の間を1時間10分、運賃800円で結ぶ。空港行きはシーブリーズカジュアル8:50発→みやこ下地島空港10:00着で、11:10発のGK324便に余裕をもって間に合う。空港発は10:25着のGK323便を受け、みやこ下地島空港11:00発→シーブリーズカジュアル12:10着。途中、平良港に近い「マティダ市民劇場前」などの平良市街を経由したのち、宮古空港、東急ホテル前を経由し、旧上野村のシーブリーズカジュアル前へ至る。当面はこの1往復のみだが、航空便が増えればその分増便する方針だという。宮古協栄バスの代表は「航空運賃を抑えて宿泊や体験に費用を掛ける旅行客が増えている。リゾートエリアを運行する路線はこれまでないので多くの人に利用してもらえるのではないか」と沖縄タイムスのインタビューに語っており、期待を隠せない様子が窺える。

そして、もう1社は那覇に本社を置く「中央交通」。同社は貸切のみ那覇・宮古で営業している事業者であり、乗合バスは初参入となるだけに、この発表には少々驚いた。会社の公式ホームページを見てみても今のところエアポートバスに関する記載は一切なく、空港ターミナルのホームページでのみ情報が公開されているだけだ。

▲みやこ下地島空港のHPで公開されている中央交通:みやこ下地島エアポートライナーの経路図。なんとグーグルマップそのまま
▲時刻表・運賃表もこのPDFが公開されているだけだ

その「みやこ下地島エアポートライナー」は、宮古協栄バスとは対照的に停車停留所をかなり絞り込んでおり、みやこ下地島空港、平良港、宮古空港、宮古島東急ホテル&リゾーツ、シギラリゾート(宮古協栄バスの終点・シーブリーズカジュアルから徒歩10分程度)のみと、起終点含め僅か5停留所。空港行きはシギラリゾート8:45発→みやこ下地島空港10:00着、空港発はみやこ下地島空港11:10発→シギラリゾート12:25着と、ほぼ宮古協栄バスと同じような設定だが、全線の運賃は1,000円と、若干高め。走行ルートも渋滞に左右されないようにするためか、平良市街を極力避けており、定時性はこちらのほうが高そう。また、みやこ下地島空港とそれ以外の停留所の間でしか利用はできず、みやこ下地島空港を介さない利用はできないのも特徴(クローズドドアシステム)。

エアポートバスが2社となったのは、ジェットスターの使用機材であるA320-200の定員・180席から算出してのことだろう。観光バス1台の定員は40~50名程度であり、補助席を最大限使っても60席程度。つまるところ、成田からの便が満席で到着し、その半数がバスを利用したとしても、バス2台の輸送力を必要とする。そこで、平良市街に既存路線・停留所を多数持つ宮古協栄バスが平良市街向け、新規参入の中央交通がリゾート直行と、役割を分けることとしたのだろう。特に宮古協栄バスは路線車を多数持っており、クローズドドアシステムではないことから、一般路線バスの一員としても利用されることから、一般路線バスが充当される可能性もある。そうなると、貸切車しか持たない中央交通とは設備面で差がつくこととなり、リゾートへ向かう観光客にとっては評価が分かれることになろう。

▲ジェットスター等のLCCとJAL、ANAといったレガシーキャリアが肩を並べる状況も当たり前になった(中部国際空港)

そしてもう1点の画期的な点は、宮古空港からの利用も可能としている点だ。宮古空港↔リゾート間は各施設の送迎バスが充実しているからいいにしても、宮古空港↔平良市街間を利用できるバスが、1往復とはいえ増発となったのは大きい。現状でも1日3.5往復ではあるが那覇―宮古線を中心にある程度乗継は考慮されているため、【9】みやこ下地島空港リゾート線によって新規接続となる航空便はないが、今後【9】が増発されていった場合、既存の【5】と合わせて1時間に1本程度利用できるようになるかもしれない。

また、宮古協栄バス【9】みやこ下地島空港リゾート線だけでなく、中央交通の「みやこ下地島空港エアポートライナー」も、クローズドドアながら宮古空港にも停車する。このため、既存の宮古空港↔リゾートホテル間送迎バスと、これら下地島空港エアポートバスを宮古空港で乗り継ぐ利用も取り込むことができよう。リゾート地区からみやこ下地島空港へは、宮古空港と比べて倍以上の距離があり、それだけの距離を無料送迎するというのも、特に宿泊単価が高くないLCC客とあって効率が悪い。そうであるならば、宮古空港で下地島空港からのエアポートバスと、ホテル送迎バスを乗り継いでもらうというのも一案であるし、1日1便のジェットスター目掛けて伊良部大橋に送迎バスの大行列ができる・・・といった事態も避けられる。これなら、タクシーの客を奪ってしまうということもない。

(次ページ)
「タクシー不足でバスの出番!」

1 2 3 4 5