関西

【兵庫】関西の奥座敷・有馬温泉を目指した鉄道たち──神戸電鉄有馬・三田線 #37

急勾配を強力電車で克服した神戸電鉄

現在、有馬温泉へと通じている唯一の鉄道、神戸電鉄有馬線。神戸市中心部の三宮をやや外れた湊川─有馬温泉間22.5kmの路線であるが、実質的には神戸高速鉄道線の新開地─湊川間0.4kmを含め、なおかつ有馬温泉の1つ手前の有馬口から分岐する三田線・有馬口─三田間12.0kmを含んだ、新開地─湊川─有馬口─三田間32.4kmが、神戸電鉄の本線として機能している(以下、この区間を『有馬・三田線』と呼ぶ)。ここから外れた有馬線の有馬口─有馬温泉間2.5kmは実質的に本線の「有馬支線」のような状態で、この区間のみをシャトル運行する列車が、有馬口で本線の上下列車に接続する形となっている。

「有馬支線」を支線として切り離したことで、有馬・三田線は神戸市中心部と内陸の三田をショートカットして結ぶこととなった(32.4km)。JR福知山線・東海道線利用では尼崎経由となり、大回りとなる(三田─尼崎─神戸間59.1km)。

しかし、所要時間・運賃を比較すると、神鉄準急58分・750円に対し、JR丹波路快速・新快速の乗り継ぎで57分・970円と、所要時間では拮抗してしまっている。これは、前回レポートした通り、福知山線が隘路区間をトンネルでパイパスしたことで高速運転が可能になり、丹波路快速が120km/h運転をしているのに対し、神鉄は六甲山を上下するために50‰に達する急勾配区間を多数抱えており、最高でも80km/hに抑えられてしまっているためだ。

神戸市の発展とともに、神鉄沿線の山々へも郊外住宅地が開発されていき、三田近くでは北摂三田ほくせつさんだニュータウンの開発・福知山線のスピードアップに伴い、福知山線の支線となる公園都市線を開通させるなど、「有馬」を外した神戸電鉄は乗客を増やしていった。しかし、近年は郊外住宅地の高齢化によって乗客が減少し、かつては5両編成もあったところ最長でも4両編成となり、ワンマン運転の拡大、昼間の減便など、省力化が進んでいる。それでも新型6000系・6500系を導入して老朽車両を取り替えたり、朝夕に優等列車を増発してスピードアップを図ったりと、大都市・神戸を支える鉄道であることに変わりはない。

三田で発車を待つ有馬・三田線普通新開地行きの6000系

福知山線三田駅と神戸電鉄三田駅は、隣接していてエスカレーターで結ばれているが、建物は別。開業時は国鉄有馬線が貨物輸送を行っていたため、神戸電鉄は福知山線と貨車の直通をする必要がなかったこと(ただし国鉄有馬線廃止後の一時期に貨物列車が走ったことはある)、また旅客列車も当時非電化だった福知山線への直通運転はできなかったことで、ホームの位置を福知山線にぴったり合わせる必要がなかった。このため、神戸電鉄の駅は福知山線とややズレた位置に設置されたものと思われる。

大阪からの福知山線が着くと、一定数の乗客がパラパラと神戸電鉄の方に向かってくる。北摂三田ニュータウン内のみを走る公園都市線はもちろん、三田近くの有馬・三田線も実質的に福知山線の支線として機能しており、福知山線との直通列車こそないものの、緊密な関係にあることがわかる。

次の有馬・三田線新開地行きは17:08発。武田尾から乗った福知山線普通新三田行きからは、16:52着のため16分接続となり、少々間が空いてしまっているが、これは17:05着の丹波路快速との接続を主眼においているためだろう。もっとも、16:52着の普通新三田行きは川西池田で宝塚快速の接続を受けているのに、三田では1本前の新開地行きと1分接続で、実質的には乗り換え不可。接続の悪さが神戸電鉄利用を遠ざけていないか、少々不安になる。

三田駅南口は元々の市街地。中高層のマンションも立ち並ぶ

ホームに立つと、有馬・三田線の神戸・新開地行き新型6000系と、公園都市線ウッディタウン中央行きの5000系が発車を待っていた。新開地行きはともかく、「ウッディタウン中央行き」とは、いかにもニュータウンの鉄道らしい。

有馬・三田線新開地行きの3分後には公園都市線ウッディタウン中央行きも続行。三田周辺のニュータウンへの帰宅客が、2本並んだ電車へと三々五々乗り込んでゆく。普通新三田行きからの乗り継ぎよりも、丹波路快速からの乗り継ぎは多く、4両編成の座席が程よく埋まった。

17:08、三田発。神戸電鉄有馬・三田線普通新開地行き。

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ニュータウンを結ぶ…神戸電鉄三田線

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