早朝1本のみ!【3】東回り一周線
翌8/12(月祝)、この日は石垣島北東部の伊原間から、北西部の景勝地・川平湾を見物したのち、石垣島西海岸を経由して石垣市街へ戻る行程を組んでいた。
伊原間から石垣島北海岸を辿るバスは、以下の1日2本しかない。
- 8:00【3】東回り一周線 バスターミナル行き
- 12:45【8】西回り伊原間線 伊原間始発バスターミナル行き
このほか、石垣空港を始発として於茂登トンネルを抜け、空港と川平方面を短絡する系統として【11】米原キャンプ場線があるが、こちらもやはり1日2本しかない上、伊原間は通らない。従って、12:45発では出足が遅くなるので、やや頑張って早起きし、8:00発の【3】東回り一周線に乗るしかなかったのだ。
石垣空港先回りの【3】東回り一周線が1日1本なのに対し、反対回りとなる川平先回りの【2】西回り一周線が2本あるのは、地元客・観光客の流れとして、川平地区の方が求心力を持っているからではないかと思う。
伊原間→川平公園前方面が伊原間8:00・12:45の2便しかないのに対し、川平公園前→伊原間方面は以下の通り、倍の4便がある。
- 11:23【8】西回り伊原間線 伊原間行き
- 13:37【8】西回り伊原間線 伊原間行き
- 15:48【2】西回り一周線 バスターミナル行き(日祝運休)
- 18:13【2】西回り一周線 バスターミナル行き
つまり、伊原間→川平→伊原間と行き来することはできても、その逆はほぼ不可能なダイヤとなっている。午前中に伊原間から川平へ向かい、午後に折り返してくるという流れに合わせているようだ。
石垣─川平間は、石垣島のメインラインとなる石垣─白保─石垣空港間に次いで往来が多く、バスも複数系統を合わせて1時間に1本程度が確保されている。そのため、伊原間の住民が川平へ向かう用はあっても、その逆はほぼないのだろう。伊原間12:45発が最終という、浮世離れしたダイヤが組まれているのは、そのせいだろう。
「コーラルリゾート石垣島」前でバスを待つ。誰も通らないどころか車一台やってこず、鳥の声とカエルの声が響くだけ。そんな路上で何と無しに時間を過ごすのも、またいいものだ。舟越7:43発。
2分で伊原間に着く。【6】平野線とは停車場所が分けられており、道路脇の転回場に停車。
「発車は8:00ちょうどです。15分ほど停車しますので、宜しければ近くのビーチをご覧ください。降りて右手に行くとありますので」
今日は祝日なので、平野→伊原間の【5】平野伊原間線の区間運行はなかったが、学校登校日であればこの転回場で2本のバスが接続していることと思う。
接続と時間調整を兼ね、12分の小休止。停車中ヒマなので、思っていたことを乗務員さんに聞いてみた。
S「昨日乗った平野線は黄色のバスだったんですが、これは緑色ですね。色による違いってあるんですか?」乗「ああ、これは路線によって色を分けているんです。平野線が黄色、一周線は緑、というようにね」
路線バスでラインカラーが設定され、それが車体色にもなっているという例は、あまりないように思う。利用者にとっては誤乗防止になりわかりやすいのだが、バス会社にとっては路線毎に車両を共通化できず、車両のやり繰りが面倒になる側面もある。
乗「空港線とは車両も変えていますし、カラー別が面倒というわけでもあまりないんですよ。空港線はやはり大きな荷物をお持ちの方が多いですから、通路の幅を広く取ったり、荷物置き場も設けています。反対に、こうしたローカル系統では座席が多いのが一番ですから、極力座席を多くしているんです」
乗車時間が最大40分であり【4】【10】合わせて15分間隔運行の空港線と、乗車時間が長い場合1時間半〜2時間にわたる上に1日数本のローカル系統では、当然求められる車両の在り方も違う。どうせ充当する車両が違うのであれば、塗装も分けてしまえばいいという、ある種合理的な考え方ではある。石垣島の路線バスは、石垣空港─石垣港離島ターミナルを直行で結ぶカリー観光を除いて東バスしかないため、他社と区別する必要がないという背景もあるだろう。コーポレートイメージを統一する必要がないのだ。
「新しい空港ができて、LCCが就航して、お客さんは本当に増えたと思いますよ。市街地から空港が遠くなったので、前ならタクシーに乗っていた方も、運賃が上がったおかげでバスに乗るようにしたという方も多いです。ただ、こうして北部まらでバスに乗ってくれる方は、まだまだ。なので、こうしてバスに興味を持って乗ってくれるというのは、ありがたい限りです」
思いがけずお礼まで言われてしまった。石垣島のバス事情について端的にまとめられた、良いコメントを頂き、お礼を言いたいのは寧ろこちらなのだが。
「お待たせしました。川平経由バスターミナル行き、発車致します」8:00、伊原間発。乗客はやはり5名ほど。
舟越から次の栄までは5.1kmあり、この区間で最も長い。野底半島の尾根を横切るため、アップダウンが激しい峠道が続く。その峠道が終わると県道79号から逸れて集落内へ寄り道し、栄に着く。ドアを開けて暫く停車するも、乗降なし。続く兼城、下地、下多良間、上多良間でも乗降はなく、淡々と走る。
伊土名では少年とオジイの2名が乗車。下り4本・上り2本の過疎区間のうち、伊土名は経由地に挙げられる主要停留所であるが、やはり伊原間以来の動きがあった。
先に乗り込んできた少年は、あまり石垣島のバスの仕組みをわかっていないのか、乗り込むなり千円札を片手に「終点まで」という。ミンサー柄のTシャツを着ているが、部活の遠征か何かだろうか。乗務員さんが「終点までは1,000円以上するけど、1,000円のフリーパスじゃなくていいの?」と聞くも「いや、現金でいいです、終点まで」と繰り返す。「現金だったら、降りるときに払ってもらうので、整理券を取ってください」と説明され、ようやく整理券を手にした。オジイは馴染みのようで、スッと整理券を手に乗り込む。
伊土名から次の大田までは4.2kmあり、舟越─栄に次いで長い。大田まで来るとあとは川平方面に向かって集落が連なり、停留所の間隔も短くなってくる。富野で於茂登トンネルを抜けてきた【11】米原キャンプ場線が合流し、もう2往復本数が増える。
その米原停留所(『米原キャンプ場前』とも呼称される)では時間調整のため1分停車。少し先、キャンプ場の目の前でオバア1名を乗せた。市街地まで往復するのか、1,000円の1日フリーパスを購入していた。
荒川、山原を経て、吉原から先は【7】吉原線が加わり、さらに2往復増える。ここまで来ると上り6本・下り8本と、生活路線としてはまあまあの本数になってくる。【7】吉原線は【8】西回り伊原間線の区間運行のような性格で、独自区間を持つがバスターミナル─川平公園前─吉原間を結ぶのは【2】【3】一周線および【8】西回り伊原間線と同じ。下りバスターミナル発7:10・12:15、上り川平公園前発8:03・12:53の2往復が走り、午前中の本数が少ない【2】【3】【8】を補完している。その吉原からはいよいよ川平湾の眺めが見られるようになり、数人の観光客の目は釘付けだ。
仲筋、大嵩と経て川平湾の底を迂回し、大嵩の先でバスターミナル方面からの路線と合流する。その次の「ヨーン」停留所は充てる漢字すら無かったのか、森の中で異様な雰囲気を放っている。海の近くだが鬱蒼とした森であり、川平湾の豊かな自然を感じる。
ヨーン停留所付近の森を抜けると、いよいよ川平地区。集落を取り囲むように「川平郵便局前」「川平ロータリー」「川平公園前」の3停留所が設けられており、川平地区を経由していく【2】【3】【7】【8】は時計回りに周回し、折り返していく。また、川平地区の先のクラブメッド方面へ向かう【9】【11】は一周せずに川平郵便局前↔︎川平公園前↔︎川平ロータリーの順に停車するため、停車順序には注意が必要。
川平地区の中をゆっくりと進み、川平公園前には8:50着。川平湾を巡るグラスボート等のアクティビティは9:00からの営業で、それに合わせた設定なのだろう。自分を含め観光客は全員が下車。そして乗車は外国人を中心に10名程度おり、9時前とは思えないほど停留所には人が多い。観光時間帯になればもっと多くなるだろう。
川平公園前停留所のあたりは土産物屋が並ぶよくある観光地の佇まいだが、立ち売りはおらずギラギラしてはいない。押し売り紛いのしつこい客引きすらいるイヤな観光地も目につくなかで、川平湾はどことなくのんびりしている。これも、島全体がどことなくのんびりした、八重山ならではなのかもしれない。
ただ、その中でも東バスは定時運行を守り、沖縄本島や宮古島と違ってバスは時間通りやってくるのは、やはりありがたい。石垣港離島ターミナルでのフェリー接続、石垣空港での飛行機接続など、離島架橋がない故、交通機関同士の接続が多いという事情もあるかもしれない。見知らぬ土地でもバスが時間通りやってくるのは、それだけで旅の者に安心感を与えてくれるのだ。
(つづく)