西表島への2つの航路
西表島へのアクセス手段は二つある。一般旅客航送を行う船会社としては安栄観光(安栄)・八重山観光フェリー(八重観)の2社があり、他にも一部のツアー会社がツアー専用の船舶を運航する場合があるが、一般の用に供されるのはこの2社。どちらも石垣島・西表島に独自のカウンターを持ち、かつ乗船券は2社共通で取り扱っているため、相互利用が可能である。しかし、割引券や付帯サービスまで共通化されているわけではないので、特に西表島への渡航の際には注意を要する。西表島への航路は2つあるが、どちらにも安栄・八重観の2社が就航している。
メインルートとなるのは、石垣港から南東部の大原港へ向かう「西表島大原航路」。1日11.5往復(石垣港発7:00〜17:30、大原港発7:40〜18:20)、およそ1時間1本が運航される。大原航路は欠航率が低い上、大原港周辺(大原・豊原・大富)は人口800名と西表島で最も人口が多く、竹富町役場も移転が予定されるなど、大原港は西表島の玄関口として機能している。この大原港からのアクセスとなる豊原、大原、大富、古見、美原、高那にかけての地域を、「西表東部」と呼ぶことが多い。かつて東部地域の中心はもっとも古くから開けた古見であったが、最近では交通の便の良さから専ら大原が東部地域の中心として機能している。
そしてもう一つのルートとなるのが、島北部の上原港に発着する「西表島上原航路」。こちらは大原航路よりもやや少ない1日8往復が運航され、うち2往復は西表島から北へ5kmほど離れた鳩間島にも寄港し、鳩間島から西表島・石垣島への連絡も兼ねている。西表島観光の中心となる浦内川クルーズ・トレッキング等は上原港の方が近く、主に観光の玄関口として機能しているものの、風向きの関係で上原航路は欠航率が高い。しかし、上原航路欠航時でも大原航路は運航していることが多いため、そのような場合は大原航路への振り替えが行われ、船会社により大原港―上原港を結ぶバスも運行される。大原港を中心とした「西表東部」に対し、上原港を中心とする船浦、上原、中野、住吉、浦内、祖納、白浜そして舟浮にかけてを「西表西部」と呼ぶ。かつての西部地域の中心は古くから開けた祖納であったが、現在では東部地域と同様、港がある上原へと移っている。
そして、広大な西表島ならではの特徴として、船会社自ら大原港・上原港への送迎バスを運行しているという点が挙げられる。船賃だけで島内のバスを利用でき、お得と言えばお得なのだが、この送迎バスの取り扱いが2社で大きく異なる上、島内のみの一般路線バスとの絡みもあって、余計に複雑なのだ。特にフェリー到着時は、取り扱いが異なることを知らずに、観光客が両社のバスを右往左往する場面が日常化しているのは、大きな問題のように思う。以下、島内の一般路線バスから順に、西表島の交通について見ていこう。