九州・沖縄

【沖縄】冒険と開拓の島・西表島へ──安栄観光フェリー西表島大原航路・西表島交通バス #69

生活航路・西表大原航路

さて、石垣空港から東バス⑩空港線に乗り、石垣港離島ターミナルへ着いたのは10連休初日、4/27(土)の10:30ごろ。ここから石垣港11:00発→大原港11:35着の便に乗り、大原港12:18発→豊原12:23着の西表島交通・一般路線バスで「日本最南端のバス停」豊原バス停を目指す算段でいた。

▲乗船客で賑わう石垣港離島ターミナル

安栄のカウンターには数人の列ができていた。八重観のカウンターがどことなく暇そうなのに対して、安栄のカウンターは忙しない。両者の差といえば割引の違いか、西表島の送迎バスくらいの違いしかないのだが、ここまで差ができるのは波照間航路の有無だろうか。それにしても次の波照間行きは石垣港11:50発までなく、1時間以上あと。この差がどこから来るのかは、気になるところ。

安栄のカウンターで、ウェブ予約5%引き+東バス発行の安栄観光フェリー割引券(130円引き券×2枚)を駆使し、乗船券を購入。往復3,440円のところ3,010円まで安くなった。この2つの割引は併用できるので、大いに利用価値がある。

出発まで25分ほど余裕があるので、ターミナル内のお土産店「とぅもーるショップ」へ。お土産だけでなく、おにぎりやお弁当などの食料も売っているうえ、奥には八重山そばを出してくれるイートインもあるため、コンビニのような使い方ができる。繰り返すが、西表島には個人経営の小規模なスーパーしかないため、こうした軽食、惣菜、飲料といった補給は望めない。可能な限り、石垣港にいるうちに仕入れておいた方が良い。今回は、余分にポーク玉子おにぎりを複数買っておいた。

「八重山そばハーフ」は200円と格安ながら、細切れのソーキがちゃんと乗った本格派。同じく買ったポーク玉子おにぎり(250円)と一緒に食べれば、口の中いっぱいに沖縄の味が染みわたる。石垣港へひっきりなしに出入りする船を眺めながら、まだ4月だというのに蒸し暑いなか、そばを啜った。

出航15分前を目処に、西表島大原航路の定位置である「3番のりば」へ向かうと(この言い回しも鉄道駅そのもの)、既に20名ほどが列を作っていた。待っている間に列は少しずつ長くなり、最終的には30名ほどが大原港行きを待っていた。スーツケースや大きなリュックを抱えた観光客は意外とそこまで多くなく、沖縄らしい顔立ちの地元客と半々。自分の後ろには真っ黒に日焼けした青年がゴム草履履きで待っており、いかにも地元のウチナンチュといった風情。このまま小田急江ノ島線の急行あたりに乗っけても違和感はないくらいで、言い換えればそのくらい航路が生活に根ざしたものであるということ。石垣港の活気は、こうした地元の人々の活発な流動に支えられたものでもある。

出航5分前に小型高速船「あんえい88号」が姿を現し、手早く接岸。船員さんが船尾部分に渡り板を掛けると、いよいよ乗船。モーター等の機器類が乗る船尾部分は開放的なつくりで、スピードに乗ってくればいかにも気持ちいいだろうが、波を被るリスクもある。機器類を持参していたため、船尾から中央部の船底に設けられた座席へ移り、シートベルトを締めた。

▲シートベルトを締めるよう求める注意書きが目立つ

座席に座ると、「シートベルトを締めずにいて高波の影響を受け、腰骨の骨折に至った例があります」という強めの表現の警告文が目立つ。怪我人が出たことがあるとあらば、シートベルトを締めない理由はない。地元客のオバアはそんなの無視して買ったものを眺めているが、ああいう世代ともなれば「今日はそんなに時化ない」ことがわかっているのだろう。島での経験を積んでいるからこそ。

3席×右左×10列の60席と、船尾の20席ほどを加え、定員は80名ほど。羽田空港からの始発便で繋がるリレーにしては、意外とキャパは少なめ。大原港行きの10分前、10:50には鳩間島経由上原港行きが出航してゆくところで、浦内川クルーズやマリュドゥの滝などの観光スポットを目指す向きは、そちらへ集中しているのだろう。

シートベルトを締めたあたりで、大原港行きは浮桟橋を離れた。11:00、石垣港発。

石垣港の防波堤を横目に海へ出ると、もう竹富島が望めた。なるほど、珊瑚礁の島だけあって、島影がどこまでも平坦である。どだいコメ作りに適した島には見えず、そうであるからこそ竹富島から水資源の豊富な西表島への通耕が行われたのだろう。今も昔も、物資の乏しい離島の生活には困難がつきまとう。

右に竹富島・小浜島、左に黒島・新城島の島影を眺めていると、「まもなく西表島大原港に着きます」というアナウンス。たった30分と少しで着いてしまった。なんともあっさりした航海で、ちょっと拍子抜け。いともあっさりと接岸し、船員さんがロープを渡し、渡り板を浮桟橋へ掛けていく。

▲大原港へ到着

石垣港と比べると、だいぶあっさりした「なかまりん」ターミナルビルが出迎えてくれた。ターミナルビルの中には安栄・八重観それぞれのカウンターが出ていて、やはりここでも受付が分かれるというのは、石垣島と同じだ。

「なかまりん」という愛称がついている通り、ここは正式には大原港でなく仲間港という名がついている。仲間というのは近隣を流れる仲間川から採った名で、大原とは近隣の地名を指す。つまり、大原地域にある港だから皆慣習的に大原航路、大原港と呼んでいるのである。公式の資料など、大原港のことを「仲間港」と記している史料は少ないが、地元でもほぼ「大原港」で通されている以上、こちらも同様の書き方とする。

▲観光客の多くは由布水牛車乗場行きの臨時バスへ乗り換えていく

それにしても、西表島最大の交通ターミナルである大原港のターミナルビルにすら食堂1件ないとは…。当然、タクシーの待機などといったものは基本的になく、食料品の販売といったものもない。賑わっているのは、ターミナルビルからバス停を挟んだ向かいのお土産品店くらいなもので、それもパンやおにぎりの類は全く無く、フルーツなどにごく一部西表島産のものがある以外、島のものというのは少ない。文化芸術というよりは大自然を満喫するツアーが中心であることもあり、お土産を西表島だけで生産するわけにはいかないのだろう。やはり、おにぎりを石垣港で買っておいてよかった。

▲あんえいバスへの乗り換えも多かった

降り立った30名ほどの乗客のうち、観光客風は日帰りバスツアーの観光バスへと乗り込んでいくか、12:10発・由布水牛車乗場行きの西表島交通臨時バスに乗り込んでいった。やはり日帰りバスツアーの観光バスと、同じ観光車を使う由布水牛車乗場行き臨時バスの差はわかりにくく、両方のバスで右往左往する人が後を絶たなかった。制度ももちろんだが、乗車場所をきっちり決めるなど、ハード面での改善も必要だと思う。

由布水牛車乗場行き臨時バスは、定刻通り12:10に出発。石垣島のバスといい、八重山のバスは案外と時間に正確である。沖縄本島や宮古島のバスが始発からして遅れたりするのとは、大きな違いがある。島民の気質にもよるのだろう。

こちらが待つ豊原行きは12:33発なので、由布水牛車乗場行き臨時バスを見送ってから、なお20分ほど待ち時間がある。しかし、40分ほどあった待ち時間のうち、なかまりんターミナルビルやお土産品店を覗いていると、そんな時間はあっという間だった。鮮やかな黄緑色を纏った中型ノンステップバスが到着し、バスを降りた10名ほどの全員がフェリーターミナルへと向かってゆく。

▲豊原行きの一般路線バス

白浜発豊原行きはあと2つで終点なので、大原港から豊原行きへ乗るのは自分だけだった。それだけに、半ば貸切状態の路線バスに乗るという、得難い経験であった。

***

次回は、「日本最南端のバス停」豊原から、「日本最西端のバス停」白浜まで、西表島をトコトコと走るバスに乗って、辿ってみよう。

(つづく)

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