「車内中ほどまでお進みください。快速門司港行き、ドアが閉まります」
夕刻の博多駅ホーム。ドアに手をかけ体を押し込んで乗るレベルの混雑は、東京の夕ラッシュと何も変わるところはない。
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バスがメインのキャナルシティ博多
地下鉄天神駅から那珂川畔を歩き、キャナルシティ博多へ向かった。
キャナルシティ博多へ最も近い地下鉄駅は地下鉄空港線祇園駅で、広大なキャナルの場所にもよるが徒歩5分程度。空港線に加え箱崎線が接続する中洲川端駅からは、博多最古の商業地域・川端通商店街を経由して徒歩8分と、地下鉄利用の場合は最もよく利用されるルートだろう。そして広域アクセスを担うJR博多駅まででも徒歩10分、繁華街の中心たる天神からでも徒歩15分程度。駅直結というわけではないが、どこの駅からも近くも遠くもない…という絶妙な距離感。
キャナルの性格からして普段使いのものを買うというよりは、キャナルにしかないブランドショップやアパレル、カルチャーショップ等が来店目的の中心と思われるため、毎日来るというよりはたまに来るところ、という感じ。従って買い物帰りは荷物も多いと思われ、駅からやや距離があるキャナルは、都心部にありながら車での来店が多数を占めるのではないだろうか。
博多駅からキャナルまでの道のりは一般的なビジネス街だからまだしも、天神からキャナルへの道のりは繁華街…というか、歓楽街として名高い中洲であり、昼間は眠ったように静かだが、夕刻ともなればネオンの光が輝きだす。歓楽街特有のにおいも立ち込め、那珂川の水面は爽やかだが、決して歩いていて心地よい道のりではない。川べりの歓楽街という様子は、目黒川に沿って連れ込み宿さながらのラブホテルが立ち並ぶ、東京・五反田を彷彿とさせる。
従って、キャナルへの公共交通機関はキャナルの目の前からすぐ乗れる、西鉄バスが中心となっているようだ。天神〜キャナルシティ博多〜博多駅を最短距離で結ぶ「キャナルシティラインバス」が5〜10分間隔でシャトル運行しているのをはじめ、市内各所まで直通する西鉄バスが「キャナルシティ博多前」「キャナルイーストビル前」から多数発着している。キャナルからは博多駅へも天神へも福岡都心100円区間に含まれることから、博多駅から徒歩10分、天神から徒歩15分程度であってもバスを選ぶ来店者は多いだろう。
ただ、明らかに外国人観光客をはじめとした旅行者を対象にしたショップが少なくない中で、アクセスをほぼ西鉄バスに頼っている現状は、決して旅行者にとって優しくない。
博多駅〜キャナル〜天神をシャトル運行する「キャナルシティラインバス」や、博多駅〜天神〜ウォーターフロント地区を循環運行する「連節バス」など、単純かつわかりやすい運行に特化した系統もあるにはある。しかし、この2つも含め、似たような性格を持つ都心部のシャトルバスが並存しているあたり、西鉄バスの複雑怪奇ぶりを象徴していると言えよう。
西鉄バスの複雑さは他都市の追随を許さない折り紙つきで、ちょっとやそっとでわかるものではない。「天神〜博多駅100円」に釣られて、適当に来た「博多駅行き」に乗ろうものなら、遠回りの経路(『住吉通り経由』など)だった上に渋滞に巻き込まれ、地下鉄なら6分・200円のところに30分もかかってしまった…なんて話は珍しくないのだ。
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「七隈線”キャナル新駅”への期待」