東北・北海道

【福島】芦ノ牧温泉へ、大内宿へ…日本の原風景を求めて──会津鉄道会津線 #66

今なお続く”駅前食堂”…芦ノ牧温泉駅前・牛乳屋食堂

まずは腹拵えに牛乳屋食堂へ。まだ11時前だが、区間急行南栗橋行きで浅草駅を5:58に出てから約5時間が経っており、いい加減腹が減る頃合いである。特急リバティ会津101号にしても浅草を6:30に出ているため、少々早いが食堂へ向かう。

牛乳屋食堂へは駅のすぐ近くで、駅からの道が国道121号にぶつかる位置にあり、駅からはほんの1〜2分も歩けば着いてしまう。もとは「駅前食堂」として出発した牛乳屋食堂ではあるが、会津線と並行する国道121号のすぐ近くでもあり、いまやクルマでの来店客の方が圧倒的に多く、少し離れたところに駐車場も構えている。

▲駅前通りが国道121号とぶつかるところ。このあたりが上三寄集落の中心部である

さて、この辺りの集落の名は「上三寄かみみより」といい、駅前からの道路が国道121号にぶつかる所にある郵便局も、芦ノ牧温泉駅前でなく「上三寄郵便局」であり、郵便局前にある会津バスのバス停も「上三寄」である。上三寄の名は、1889年の町村制施行前、この地にあった3ヶ村が合併して誕生したことによる。

当の芦ノ牧温泉は上三寄集落から5kmほど離れており、国鉄時代は集落の名を冠した「上三寄駅」であった。1987年の会津鉄道転換と同時に、芦ノ牧温泉の最寄駅であることから現駅名に改称している。

▲国道上にある会津バス「上三寄」バス停

とはいえ、ここが上三寄集落であることに変わりはないので、郵便局やバス停は変わらず上三寄を名乗り続けている。特にバス停の場合、本来の芦ノ牧温泉も通るため、5kmも離れたこのバス停が下手に「芦ノ牧温泉駅前」などと名乗れば、間違いの元である。

その「上三寄」バス停を経由する会津バスは、ほぼ会津線と並行する、会津若松駅前─上三寄─芦の牧車庫─大川発電所前を結ぶ「芦の牧線」のみ。会津線よりもやや少ない1〜2時間おきの運行であり、しかも会津若松駅─上三寄(芦ノ牧温泉駅)というほぼ全区間で会津線と並行するため、列車との接続は考慮されていない。よって、芦ノ牧温泉駅から芦ノ牧温泉へは、旅館の送迎車で送り迎えしてもらうのがメインである。

開店は11時なので店先で少々待つことになるが、早くも行列ができていることが多い。名簿に名を書き、店向かいにあるお土産屋などを眺めていれば、あっという間だ。

さて、その印象的な店名は、もともとこの店が牛乳販売店から始まったことによるもの。国鉄会津線・上三寄駅が開業したのが1927年、それ以来駅とともに歩んできた老舗である。駅に集う人々のために食堂を始め、そのまま「牛乳屋が営む食堂」という意味で、「牛乳屋食堂」として定着している。その歴史もあって、店内でもドリンクの一つとして牛乳を提供しているほか、売店でもラベル付きの牛乳を販売している。

さて、牛乳屋食堂の名物といえば、会津名物ソーツカツ丼と、牛乳屋食堂ならではのミルク味噌ラーメンである。

▲会津ソースカツ丼とミルク味噌ラーメンのセット。牛乳屋食堂を代表する味だ

隣町の喜多方ラーメンに代表されるように、会津はラーメン処である。水と土が良いところとあらば、稲はもちろん製麺も盛んになるというわけだ。ミルク味噌ラーメンのクリーミーなスープが、会津中太麺の中華麺によく絡み、とても美味い。

そうした中で、甘めのソースにひたされたカツ丼が、またいいアクセントになるのだ。福井や信州・駒ヶ根こまがねのソースカツ丼と違い、会津ソースカツ丼はパン粉がザクザクとした、ワイルドな食感が特徴。ごはんとカツの間にキャベツが敷きつめられるのは、駒ヶ根と同じだ。西欧料理の性格が強い福井はともかく、駒ヶ根も会津と同じ山に囲まれた町であり、似たような食文化が育まれたものと思う。

駅前食堂らしく、次に乗る列車の時間を伝えておくと、対応を優先してくれることもある。この時間帯の会津線は本数が少なく、特に下り会津若松行きは、次の11:41発を逃すと、次は13:16まで待たなければならない。このため、10:40に芦ノ牧温泉駅に着いて、次の11:41発に乗ろうと思ったら、11時の開店と同時に入ったとしても、11:30には店から出なければならないので、かなり忙しない。上り会津田島行きであれば、次の列車は12:22なので、余裕を持って食事ができる。

オススメはミニカツ丼とミルク味噌ラーメンのセット、1,380円。メニューにはないが、「ラーメンを差額の支払いで他のラーメンに変更できます」という注意書きがあるので、この組み合わせでも注文できる。

▲こちらは会津ソースカツ丼とラーメンのセット。会津風の醤油味が素朴な雰囲気

今なお「ローカル線の駅前食堂」として多くの客を迎える、牛乳屋食堂。国道121号からもアクセス至便なため、観光シーズンにはかなり混み合うこともある。列車で訪れる際には、行列に巻き込まれることが無いよう、10:40のリレー101号で訪れることをお勧めしたい。

会津ラーメンの牛乳屋食堂

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