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【山梨】試される「道をゆく志」──富士急行線・富士急山梨バス河口湖─御殿場線 #47

東京から山梨へ通う高校生

7:16、相模湖駅着。45分前に出たばかりの駅へ、再び戻ってきてしまった。

相模湖駅へ降り立った乗客は10名ほどで、全員が改札口を抜けた。自分以外の乗客は殆ど東京方面へ向かい、跨線橋を上がっていく。7:20発下り普通大月行きを待つ乗客は、もう1名しかいなかった。

ほどなく211系の下り普通大月行きが到着。高尾を過ぎているのでドアは自動では開かず、ボタンを押してドアを開ける。この動作そのものが、大都市圏を脱していることを物語っていよう。

7:20、相模湖発。JR中央線普通大月行き。

ハイカーばかりだった6時過ぎとは打って変わって、乗客は高校生ばかりだった。中央本線の普通は殆どが高尾始発ななかで、この列車は立川始発。高尾までに乗った高校生で6両編成のロングシートが完全に埋まっており、完全に通学列車の様相を呈している。東京方面へ向かう高校生ばかりでなく、小仏こぼとけトンネルを越えて山梨方面へ下る通学の流れもこれだけあるということに驚く。私立高校への通学は都県境関係なしに、かなり広域の動きがあるということに、公立高校出身の自分はどうも馴染みがない。この普通も珍しい立川始発であるということからして、立川〜高尾→山梨方面への通学に対応する列車という性格が浮かび上がってくる。

藤野でも何名か乗り込み、このまま大月までどんどん混む一方なのではないかと思っていた矢先、7:29に到着した上野原で高校生の八割方が降りた。下車する高校生の人波で、コイルバネ台車の車体が揺れるほどだ。おそらく上野原駅から富士急山梨バスに揺られること9分、日大明誠高校の生徒たちであろう。河岸段丘の下にある上野原駅と、段丘上にある上野原市街地はかなりの高低差があるため、バスの利用が一般的。特に7時台の通学ラッシュの時間帯は、バスが5〜10分間隔で頻発している。

上野原からは山梨県となり、入れ替わりに山梨県内の高校へ向かう県立高校生が乗り込む。大規模住宅地を抱える四方津しおつでの乗車もそこそこあり、ロングシートが再び埋まりはじめる。

梁川やながわ、鳥沢、猿橋を経て、終点・大月の上りホームの4番線へ、7:48に到着。富士急に1・2番線、JRに3・4・5番線が振られており、JRが遠慮したような番号が振となっているのが興味深いところ。上野原到着前のボリュームには及ばないが、それでも6両編成からいっぺんに吐き出された乗客は、紛うことなき人波であった。改札口へ向かう乗客と、富士急行線へ乗り換える乗客とが、1本しかない跨線橋へ殺到する。

高校生はほぼすべてが改札口へ向かう。おそらく大月駅徒歩7分に所在する、山梨県立都留つる高校の生徒だろう。校名こそ「都留」だが、これは山梨県を甲府を中心とする国中くになか地方と、大月・富士吉田を中心とする郡内ぐんない地方に大別したうち、郡内地方の古い名称である「都留郡」に由来する。なお、大月市の南隣である都留市は、南都留みなみつる谷村町やむらまちを中心として1954年に合併して成立し、合併時に郡名を市名に採用したものであり、「都留」という市街地があるわけではない。

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富士急行線で富士山駅へ

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