関東

【茨城】”関東の北海道”を駆ける──関東鉄道常総線 #40

地域の期待を背負う関鉄快速

しかしながら、関鉄としてもみすみすTXへ乗客を取られるばかりではなく、積極策も打ち出している。その最大の目玉が、2005年のTX開通と同時に、守谷─下館間で開始した快速運転。従来、普通しかなかったところ、守谷・水海道・石下・下妻・下館のみ停車。普通では60分前後を要するこの区間を最速44分で結び、1日6往復運行している。この快速運転の開始により、下館─守谷─秋葉原が最速1時間22分・運賃2,110円で結ばれるようになった。これはJR水戸線・JR宇都宮線経由(1時間50分・1,660円)よりも20分早く、小山─上野で新幹線を利用(1時間20分・3,500円)するのに匹敵する早さである。

▲下館から秋葉原までの速達性をアピールする広告。往復割引きっぷを使えばJRよりも安くなる(下館駅)

このため、守谷から最も離れた下館ですら新幹線に匹敵するスピードとなったいま、下妻などからはわざわざ下館・小山を経由する必要がなくなり、単線区間から東京方面へは、守谷経由がメインとなった。守谷周辺の減収を単線区間からの掘り起こしで補いたいところであるが、そもそも茨城県は複線区間ですらクルマ社会が基本であるため、ちょっとやそっと関鉄がスピードアップしたからといって、そうやすやすと鉄道利用にはならない。下妻周辺から下館へ出ていた流れを守谷経由に誘導することで、平均乗車距離を長くすることには繋がったが、現状では単線区間からの掘り起こしは、守谷周辺の減収を補うまでには至っていないのだという。

▲停車駅表でも快速が主役。普通よりも16分早いことをアピールする

しかし、鉄道のスピードアップで利用の掘り起こしに成功したという関鉄の例は、クルマ社会における鉄道の役割に道筋をつけたといえるのではないだろうか。1日6往復であっても普通より16分も速い快速が走っていることで、鉄道が再び人々の役に立つということを証明してみせた形だ。沿線では快速のさらなる増発・スピードアップに対する期待が高い。

特に下妻市では、大学進学を機に東京で下宿を始めるしかなかった…というのが、快速運転によって通学可能範囲が広がり、下宿でなく自宅通学を選ぶ学生が増えつつあるという。これこそ、まさに鉄道による地域貢献といえるのではないだろうか。結果的に東京への学生の流出を防ぐには至っていないが、茨城県西部は県都・水戸への交通が不便で、所要時間の上では東京へ向かうのと変わらない。そうであれば、東京へ向かうのは常であるし、そこを改めるのは少なくとも関鉄の仕事ではないだろう。

今回は、地域の期待を背負う快速への乗車は叶わなかったが、TXが到着する度にパラパラと関鉄へ向かう人の流れを見るにつれ、TXと関鉄の乗り継ぎが完全に定着しているさまを実感できた。守谷乗車で単線区間まで乗り通す人もそこそこおり、TX開通で対東京が30分近く短縮された効果は、関鉄の単線区間にも着実に波及しているようであった。

▲TXから関鉄へ向かう乗換客。細いながらも列車毎に流れができる

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「守谷から下館へ」

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