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【千葉】東京ディズニーリゾート ホテル&アクセス史──浦安物語(4):ディズニーリゾートライン・ディズニーリゾートクルーザー #83

1983年の東京ディズニーランド開園以来、二人三脚で歩んできたオフィシャルホテル・パートナーホテル。だが、近年のホテル急増により、その受け入れ態勢に無理が生じている面もある。今回は、パークに付き物のホテルと、ホテル・パークを結ぶバス、モノレールのお話。

目次

浦安中に広がるTDRホテル

1983年の東京ディズニーランド(TDL)開園当時、TDL周囲に宿泊施設はなく、またオリエンタルランド(OLC)は自前の宿泊施設を持たなかった。これは、開園時点ではまだイチ開発業者に過ぎなかったOLCに宿泊施設運営のノウハウがなかったことと、土曜がまだ「半ドン」が一般的であった頃であり、欧米流のバカンス・バケーション文化が日本に根付いていなかったことによるもの。

▲OLC公式サイトより。1983年のTDL開園当時の模様。

従ってパークのゲスト(東京ディズニーリゾート=TDRでは入園客のことをこう呼ぶ)は、その日のうちにまたシャトルバスで東西線浦安駅まで戻り、東西線に揺られて都心へ戻るしかなかった。アジア初のディズニーランドとあって、国内に限らず遠方からのゲストも多かったことと思うが、一日中遊び疲れたゲストが、バスと電車を乗り継がねばホテルへ戻れないというのは、かなりの負担だったことだろう。

▲浦安市内で路線バスを運営する東京ベイシティ交通は、かつて「オリエンタルランド交通」として生まれ、1983年の開園から1988年の京葉線舞浜駅開業までの5年間、パークと東西線浦安駅の間のシャトル輸送に徹していた。現行塗装はその当時の意匠を引き継いでいる。

その声に応え舞浜地区初のホテルとして誕生したのが、1986年開業のサンルートプラザ東京。パークの平面駐車場に隣接するが、パークのエントランスまでは800mほど離れており、シャトルバスでのアクセスが基本となっている。その後1988〜1990年にかけて次々とホテルが開業し、最終的には以下の6棟が「東京ディズニーリゾート オフィシャルホテル」として建ち並ぶようになった。

▲かつてTDLに存在した「スタージェット」からオフィシャルホテル群を眺める。右からサンルートプラザ東京、東京ベイ舞浜ホテル、東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート、ヒルトン東京ベイの端部。
  • ↑舞浜駅・TDLエントランス方面
  • サンルートプラザ東京→東京ベイ舞浜ホテル ファーストリゾート(1986年開業、2019年リブランド)
  • 東京ベイ舞浜ホテル(2007年開業)
  • 東京ベイホテル東急→東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート→グランドニッコー東京ベイ 舞浜(1990年開業、2010年リブランド、2020年再リブランド予定)
  • ヒルトン東京ベイ(1988年開業)
  • (東京ベイNKホール跡:1988年開業、2005年閉場。2013年にOLCが取得、2015年解体。2019年現在は更地)
  • 第一ホテル東京ベイ→ホテルオークラ東京ベイ(1988年開業、2002年リブランド)
  • シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(1988年開業)
  • ↓ディズニーリゾートライン ベイサイド・ステーション方面

これらホテルはOLCと経営は別であるが、オフィシャルホテル宿泊者は入園制限中でも入園ができる等の特典があり、3カテゴリあるTDRとの関係ホテルの中で、オフィシャルホテルは最も扱いが高い。

また、オフィシャルホテルが建つのと前後して、舞浜から京葉線で1駅離れた新浦安駅エリアにも「パートナーホテル(2004年カテゴリ新設)」、また浦安市外には「グッドネイバーホテル」が開業していった。現在は、以下の4棟がパートナーホテルとして登録されている。

▲新浦安駅前・オリエンタルホテル東京ベイからの眺め。高層の住宅団地の間を、高架の京葉線が伸びてゆく。
  • 浦安ブライトンホテル東京ベイ(新浦安駅前:1993年開業。2013年よりOLCグループ)
  • 新浦安オリエンタルホテル→オリエンタルホテル東京ベイ(新浦安駅前:1995年開業。2007年リブランド。※OLCとは資本関係なし)
  • ホテルエミオン東京ベイ(浦安市日の出:新浦安駅よりシンボルロードを南へ徒歩10分:2005年開業)
  • 三井ガーデンホテルプラナ東京ベイ(浦安市明海あけみ:2007年開業)

そして、これらオフィシャルホテル・パートナーホテルの経営ノウハウを吸収していったOLCは、直営の「ディズニーホテル」という新ブランドを立ち上げるに至った。その第1号となったのが、2000年開業の「ディズニーアンバサダーホテル」。舞浜駅とは同時開業のOLCによるショッピングモール「イクスピアリ」を通じて繋がっており、立地としてはオフィシャルホテルよりも良いものだ。

▲初のディズニーホテル・ディズニーアンバサダーホテルのロビー。オフィシャルホテルでは権利の関係で難しかったディズニーキャラクターの装飾が、OLCグループのここではいっぱいに広がっている。

「ディズニーホテル」はホテルのグレード、サービス、価格帯いずれも平均がオフィシャルホテルより高めに設定されている代わり、朝食はルームサービスが基本だったり、ミッキーたちによるライブキッチン、グリーティングサービスがあったり、「ハッピー15エントリー」という一般ゲストより15分早く入園できるサービスがあったりと、OLCグループならではのサービスが充実しているのが特徴である。

▲ディズニーアンバサダーホテルのロビー。映画から始まったミッキーらしく、ミッキーがカメラを構える像が立っている。

第1号のディズニーアンバサダーホテルに続き、2001年には東京ディズニーシー(TDS)直結の「ホテルミラコスタ」、2005年には新浦安地区に廉価版の「パーム&ファウンテンテラスホテル(→2016年に『東京ディズニーセレブレーションホテル』へリブランド)」、2008年にはTDLエントランス正面の「東京ディズニーランドホテル」が続けてオープンし、2019年現在は4棟が「ディズニーホテル」として運営されている。

▲ディズニーホテルでは最後発となる、東京ディズニーランドホテル。平面駐車場の一部を転用して建設された。

ディズニーリゾートライン開通とオフィシャルホテル

そして、ディズニーホテル・オフィシャルホテルの方向性が固まったのが、2001年のTDS開園・TDS直結のOLCによるホテル「ホテルミラコスタ」のオープン、TDRを周回するモノレール「ディズニーリゾートライン」の開通である。

▲舞浜駅前を走り抜けるディズニーリゾートライン。13m級2扉車体×6両編成の輸送力は定員537名と、バスよりも圧倒的に高い

「夢と魔法の王国」をテーマにアメリカからの輸入を基本としたTDLに対し、TDSは「冒険とイマジネーションの海」をテーマとした、日本オリジナルのパーク。ほかの世界のディズニー・パークの中に「シー」を冠したものはなく、開園18年を経た今でも世界で唯一無二の存在だ。米国ディズニー社のイマジニア(技術者)も開発に関わってはいるものの、TDLの開発当時と異なり、TDSは完全にOLCの主導である。1983年のTDL開園から18年を経て、OLCの商品開発力が米国ディズニー社と肩を並べるレベルにまで成長したという証左である。

▲TDSのメインエントランス最寄りとなる「メディテレーニアンハーバー」の景観。7つの海にちなみ、パーク内は7エリアに分かれている

舞浜駅からデッキで接続されているTDLと違い、TDSはエントランスが舞浜駅から1.2kmと結構離れている上、徒歩アクセスは公式には案内されていない。このため、舞浜駅からTDSへは、舞浜駅に隣接し、イクスピアリと一体となった「リゾートゲートウェイ・ステーション」から「東京ディズニーシー・ステーション」までディズニーリゾートラインに乗車するのがメインである。

▲TDSを象徴するアイコン「ディズニーシー・アクアスフィア」。水の惑星・地球を象徴している。背後はディズニーリゾートラインの東京ディズニーシー・ステーション。

ディズニーリゾートラインは舞浜駅とTDSを結ぶのが主な役割ではあるが、この間に「東京ディズニーランド・ステーション」と「ベイサイド・ステーション」の2駅が設置されており、TDRを周回してリゾート内の各施設を結んでいる。

▲東京ディズニーランド・ステーション。舞浜駅からTDLは徒歩アクセスできるためモノレールの利用は多くないが、主にホテル宿泊者がこの駅を利用する

TDSの開園に伴い、オフィシャルホテルにも変化が起きた。まず、今まではホテルエリアに隣接するTDLへのアクセスだけを考えればよかったので、パークエントランスとホテルロビーを結ぶシャトルバスを走らせていれば事足りたが、今度はTDSまでのアクセスを考えなければならなくなった。しかしながら、一部分散するとはいえTDLへのシャトルバスを今までと同等に確保しなければサービスダウンになってしまうし、かといってTDSへのシャトルバスを純増させるのはホテル側にも負担になる。各ホテルからのバスがTDSへひっきりなしに集結するのでは、バスが増えすぎてバスターミナルに負担をかけすぎてしまう。

▲ディズニーリゾートクルーザー(2代目)。アメリカ風の特殊装飾が施され、非日常気分を盛り上げてくれる。

このため、舞浜駅─TDL─ホテル間を循環運行していたシャトルバスを再編し、ホテル─舞浜駅、ホテル─ディズニーリゾートライン:ベイサイド・ステーションへの2系統とした。ホテルからTDL・TDSへはいったんバス(アメリカ風の装飾が施された『ディズニーリゾートクルーザー』となった)でベイサイド・ステーションへ向かい、そこからディズニーリゾートラインへ乗ってもらうという形に改められた。これにより、パーク前のバスターミナルにバスが増えすぎるのを防ぐと共に、パーク周辺の道路混雑の緩和に貢献している。輸送力もバス1台よりモノレール6両編成の方が高いことは言うまでもなく、車内混雑の緩和にも寄与している。

▲ディズニーリゾートクルーザー車内。吊手がミッキーの顔、座席もミッキーのパンツにちなんだもので、子供には大人気である

ただ、せっかくTDLのエントランスに近接した場所に構えたオフィシャルホテル群は、目と鼻の先だったTDLへの直通交通手段を失うこととなった(TDLに最も近かったサンルートプラザ東京→東京ベイ舞浜ホテル ファーストリゾートのみ、ベイサイド・ステーションよりもTDLバスターミナルの方が近かったため存続)。

▲繁忙期には一般型バスもディズニーリゾートクルーザーの応援に入る。こちらは普段キャスト・スタッフ輸送を担っている車両。

このため、ホテル―TDL間の送迎バス廃止の代替・経過措置として、オフィシャルホテル宿泊者には宿泊日数に応じたディズニーリゾートラインのフリーパスが無料サービスされていたが、これも段階を追って廃止され(OLC直営の『ディズニーホテル』のみ継続)、現在では一般ゲストと同じ扱いになっている。これならば、TDSへのゲストはともかく、TDLであればパークからすぐの舞浜駅から京葉線に乗っても同じことであり、しかもディズニーリゾートラインの運賃は1回200円(当時)と、JRの初乗り130円(当時)に比べてむしろ高かった。

▲東京ディズニーランド・バスターミナル・ノース。メインエントランスの目の前だが、容量が限られるためにパートナーホテル・シャトルバス、ディズニーリゾートクルーザー(ディズニーアンバサダーホテル行きのみ)、および一部の高速バスしか乗り入れが認められていない。

また、ベイサイド・ステーションに集約されることとなった無料送迎バス改めディズニーリゾートクルーザーにしても、問題は多い。ベイサイド・ステーション自体がリゾートクルーザー乗り換え専用駅としての扱いであるため、歩道と直接接続していない。このため、ホテルからベイサイド・ステーションへは道路向かいで目と鼻の先(徒歩3分程度)なものの、徒歩アクセスは案内されておらず、5~10分間隔のリゾートクルーザーを待たねばならない(バスターミナルを突っ切れば公道に出られるが推奨されていない。ホテルによっては徒歩を案内していることもある)。そのリゾートクルーザーにしてもモノレールと接続ダイヤを組んでいるわけではないので、リゾートクルーザーとモノレールの乗り継ぎが悪いこともある。

▲舞浜駅ロータリーを出るディズニーリゾートクルーザー(3代目)。ノンステップ化されたが、特殊装飾は控えめなものとなり、見た目は一般の路線バスとそう変わらないものとなってしまった。

そのリゾートクルーザーにしても、徒歩3分程度の距離を行ったり来たりという、ストップ&ゴーをひたすら繰り返す運用であるだけに、劣化が激しいようだ。2001年に導入された初代リゾートクルーザーはその過酷な運用が祟り、わずか7年ほどで廃車となっている。

▲京葉線と並走するディズニーリゾートクルーザー(初代)。2001年登場の初代車のデザインは凝りに凝ったもので、今でも初代車の人気が一番高いという。

半径500mほどのオフィシャルホテル群を、リゾートクルーザーによって無理矢理ベイサイド・ステーション1駅に集約するくらいなら、もう1駅増やし駅を南北2箇所として(『ノース・ベイサイド・ステーション』『サウス・ベイサイド・ステーション』とでもすれば良かろう)、ホテルへの徒歩距離を縮める代わりにバスは走らせず、公道を跨ぐデッキで結べば良かったのではないかと思うが、今となっては後の祭りだ。

▲東京ベイNKホール跡に残る地図。東京ベイホテル東急→東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾートのリブランドが反映されておらず、名前が削られたのみ。2001年のディズニーリゾートライン開通当時の雰囲気を残している。

そこまでして集約したディズニーリゾートラインにしても、旗色は良くない。オフィシャルホテルへはベイサイド・ステーション乗り換えの不便さが祟り、宿泊者すらTDLへは舞浜駅へのシャトルバスを利用した(ホテルでもTDLへは舞浜駅から徒歩を案内することが多い)。また、ホテル従業員にとってもベイサイド・ステーション利用は乗り換えが増えて不便なため、通勤利用も振るわなかった。あまりに不便なため、舞浜駅からホテル従業員専用の特定バスが走るようになったほどだ。

▲東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート公式サイトより。ホテル→TDLへはディズニーリゾートライン乗継でなく、JR舞浜駅からの徒歩を案内している。

このため、2007年には200→250円への大幅値上げを余儀なくされ、2014年には消費税率の引き上げに伴い260円へと更に値上げ。TDS1回の来園で520円がかかるようになり、負担感はより大きくなった。片道260円といえば、JRであれば舞浜─新橋・秋葉原/南船橋(220円)よりも高い。オフィシャルホテルへ帰るために、舞浜─東京間よりも高い運賃を払わなければならなくなったのだ。

▲ベイサイド・ステーションに到着するモノレール。日中の輸送力は持て余し気味だ

2001年のTDSオープンはオフィシャルホテルにとって勝機だったはずなのだが、ディズニーリゾートライン開通によるパークへのアクセス改悪・有料化によって、むしろ逆風が吹くこととなった。また、より新しく、よりパークへ密着したディズニーホテルが立て続けにオープンしたことで、オフィシャルホテルは「ディズニーホテルが満室だったり、高すぎたりした時の次善の選択肢」になってしまったことも逆風となった。パートナーであったはずのOLCによって、今度は苦しめられる展開になってしまったというわけだ。

▲オフィシャルホテルの中では最も歴史が長いサンルートプラザ東京。値段もリーズナブルで、TDL徒歩圏であることから根強い人気を保っている。

2002年の第一ホテル撤退(これは第一ホテルが2000年に倒産したことも大きい)、2009年の東急撤退による相次ぐリブランドは、オフィシャルホテルの苦境を体現しているようにも感じられる。2019年のサンルートプラザ東京→東京ベイ舞浜ホテル ファーストリゾート、そして2020年に予定される東京ベイホテル東急→東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート→グランドニッコー東京ベイホテル 舞浜への2度目となるリブランドが続いており、オープン当時からリブランドを経ていないのは、ヒルトン東京ベイ、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル、東京ベイ舞浜ホテルの3つと、半減してしまった。

▲オフィシャルホテルの中ではシェラトンと並んで高級志向が高いヒルトン。ウェディングなどの会食設備も充実しており、パークに直接関係ないイベントにも多く利用される。

問題だらけのTDR送迎バス乗降場

2001年のTDSオープンと前後して、オフィシャルホテル・パートナーホテルのみならず、舞浜・新浦安周辺にはTDR客を見込んだホテルのオープンが激増した。パートナーホテルのうち、ホテルエミオン東京ベイ(2005年)、三井ガーデンホテルプラナ東京ベイ(2007年)も、この流れに乗って開業したもの。

▲新浦安地区に点在するホテル。長らく駅前の2棟のみだったが、2000年代に入りこれだけ点在するようになった。

パートナーホテル加盟の4ホテルは、オフィシャルホテルすら認められていないTDL・TDSバスターミナルへ「パートナーホテル・シャトルバス」が乗り入れている。TDSへ向かうならば、ベイサイド・ステーションで乗り換えが必要な上、モノレールが有料となるオフィシャルホテルよりも、寧ろ離れているパートナーホテルの方が便利という有様である。

また、京葉線沿線はもちろん、京葉線沿線ですらない東西線の西葛西・葛西・浦安などのビジネスホテルも、こぞってTDRへと送迎バスを出すようになった。毎朝8:00のオープン、22:00のクローズが近くなると、色とりどりの各ホテルからの送迎バスが、TDRへと列をなして向かうほど。

▲送迎バス乗降場に集まる各種バス。目当てのバスを探すだけでも一苦労である

送迎バスを出さないまでも舞浜へのアクセスを確保できる京葉線沿線では、ホテルの開業ラッシュとなっている。その中でも、京葉線の各駅停車しか止まらず、これといって駅前に何もなかった潮見は、アパホテル東京潮見駅前(2009年)のオープンを皮切りに、ホテルリブマックス東京潮見駅前(2017年)、東京イーストサイドホテル櫂会かいえ(2020年予定)、東京ベイ潮見プリンスホテル(2020年予定)と、駅前に4棟もの大型ホテルが立て続けにオープンし、さながら舞浜のベースキャンプのような駅前になってしまった。

▲かつては京葉線の各駅停車が毎時4本のみ停まる地味な駅だった潮見。2013年以降は武蔵野線直通電車が毎時3本増え、毎時7本の電車が停車するようになったことから、それまで乗降客数は2万人足らずであったところ、現在は2万5千人程度と増加傾向にある。

こうなると、従来のパーク目の前にあるバスターミナルでは、とても押し寄せる送迎バスを捌ききれなくなる。そのため、従来は観光バス駐車場として運用されていた平面駐車場のうち、パークに最も近い部分を改修して、2013年頃から「東京ディズニーランド・バスターミナル・アネックス」「東京ディズニーシー・バスターミナル・アネックス」とし、パートナーホテル以外の各ホテルへの送迎バスや、貸切観光バス・夜行ツアーバス等の発着場所として運用を開始。2019年にはよりわかりやすくするため、それぞれ「東京ディズニーランド・バスターミナル・ウエスト」「東京ディズニーシー・バスターミナル・サウス」へと改称されている。

▲エントランスから離れた「東京ディズニーランド・バスターミナル・サウス(旧アネックス)。エントランス前の賑わいからは離れている

しかしこの旧アネックス、なかなかの曲者。かつて駐車場だった部分を改修しただけあって、バスターミナルとはいっても、駐車場にガードレールや照明、最低限の案内板が取り付けられただけという、臨時乗降場に毛が生えたようなものである。屋根やベンチの類は全くない上、パークのエントランスまでは、たっぷり400〜500mは歩かなければならない。

▲エントランスまではガードレールとバリケードに囲まれた無味乾燥な通路を延々と歩かされる

また、既存のバスターミナルの連番で14〜22番の停留所が設けられているものの、停車場所が決まっているのは夜行バス等の、運賃が発生する乗合バスのみ。それ以外の各ホテルへの送迎バスや、貸切観光バス等は、特に停車場所は決められておらず、たまたま空いているところにどんどん停車させてゆくというスタイル。そのため、送迎バス・貸切観光バスの乗客は待機場所で目当ての送迎バスが来るまで待ち(ここにベンチや屋根などは当然ない)、目当ての送迎バスが来たら自分からバスへ向かってゆき、乗り込むといった手数になる。どこに目当てのバスが停車するかわからないため、色やデザインを覚えておかないと、乗り逃してしまうことになる。また、数多のバスが共用で使うため、時刻表の掲出なども全くない。

▲乗降場に停車する東京ベイ東急ホテルの送迎バス。路上からの乗降と変わらず、車いすやベビーカーの乗降には介助を要する。

おまけに、14〜22番のりばと、送迎・貸切観光バスのりば(番号なし)への道はかなり手前で分岐するのだが、この分岐の案内がガードレールに取り付けられているのみで、極めてわかりにくい。22番の突き当たりまで行って初めて気付く…という人もよく見かける。ガードレールの高さにしか案内がないので、多少の人混みになっていると案内が人に隠れて目に入らず、見落としやすいのだ。その分岐の先も、観光バス駐車場と送迎バス乗降場の境目もあいまいであり、特に目印もない駐車場の一角を曲がらないと、送迎バス乗降場には辿り着けない。

さらに、この送迎バス乗降場は基本的に駐車場の一角を改修して造られたものであるため、入場時にはパーキングのゲートを通過しなければならない。そのため、パーキングが混雑している繁忙期などは、送迎バスがパーキングゲート前の渋滞に巻き込まれ、身動きが取れなくなることもしばしば。パーキングゲート前から送迎バス乗降場まで10〜20分を要することもある。こうなると、ホテルで案内される送迎バスの時刻表が役に立たない。「こんなにバスが遅れるなら、もっと遅くまでパークに居ればよかった」という残念な思いをする人もいるだろう。

▲パーキングゲート前の渋滞。バスもこの渋滞に付き合わされるのは何とかならないものかと思う

加えて、多くの送迎バスはホテル→TDL→TDS→ホテル(あるいは逆)のような周回ルートを辿るため、後回しにされた側は2回もパーキングゲート前の渋滞に付き合わされることになる。こうなると、ロスタイムは30分近くに上る。

▲広い駐車場の中をバス乗降場へと進んでゆく

TDLと同様、TDSにも駐車場の一角を送迎バス乗降用に割り当てているが、こちらはTDS自体のオープンから日が浅いせいか、エントランスから150mほどと、比較的近い。

こんなに遅くて不便だと、特にTDLでは貴重なパーク滞在時間が削られてしまう。都心に泊まって舞浜駅まで電車で来た方がマシ…ということにもなりかねない。やっと乗降場に着いても、そこから400〜500mも駐車場砂漠の中を歩かされるようでは、パークに対する心象も悪くなる。せっかく宿泊しても、パークに着く前、あるいは出た後にヘトヘトになってしまうではないか。

▲東京ベイ東急ホテル前のバス乗り場。駅から離れたホテルが多いため、どのホテルもこうした広いバス乗り場を有する。

ディズニーリゾートラインの活用で混雑緩和を!

こういった状況であれば、モノレール開業当初に比べて持て余し気味の「ベイサイド・ステーション」のバスターミナルを有効利用すべきだ。

▲ディズニーリゾートライン公式サイトより。ベイサイド・ステーションの全景。

ベイサイド・ステーションのバスターミナルは、2001年の開業当時に存在したオフィシャルホテル5棟に合わせ、1〜5番のりばが設けられている(2007年に東京ベイ舞浜ホテルがオープンしたため、現在は5番のりばを同一グループの東京ベイ舞浜ホテル・東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾートで共有)。ただ、5番のりばまですべてリゾートクルーザーで埋まることは少なく、その収容力が発揮される機会は少ない。

▲ディズニーリゾートライン公式サイトより。バスのりばは1~5まであり充実しているものの、フルに埋まることはあまりない

この余裕を送迎バスへと振り向けてはどうだろうか。つまり、ベイサイド・ステーションのバスターミナルの一部を送迎バス用に解放し、パーキングゲート前の渋滞が見込まれる場合は、ここからモノレールに乗ってもらうようにすればよい。また、特にTDLの送迎バス乗降場はエントランスまで遠いため、小さい子連れなど、歩くのを嫌う向きにも同様にモノレールに乗ってもらえばよいだろう。

▲ディズニーリゾートライン公式サイトより。こちらはリゾートパーキング(TDL平面駐車場)に面した側だが、駐車場の客はたいてい1kmほど歩いてエントランスへ向かうため、ここに駅があることはあまり知られていない

また、ベイサイド・ステーションはTDRの外周道路に面しているため、国道357号(東京湾岸道路)とのアクセス性がよい。そのため、パーキングゲート前が渋滞している場合であっても、その渋滞が外周道路にまで波及してくることは少ないので、ベイサイド・ステーションまでなら繁忙期でも定時運行が可能になるのではないかと思う。現在の味も素っ気もない送迎バス乗降場で、いつくるのか分からないバスを延々と待つより、たとえ260円かかったとしても、TDRの雰囲気が漂うなかに時間通りにバスがやってくるベイサイド・ステーションの方が、落ち着いてバスを待てるだろう。

▲リゾートパーキングからベイサイド・ステーション、そしてシェラトンホテルを眺める。立派な歩道が整備されているが、誰一人通らない

ベイサイド・ステーションのオフィシャルホテルと反対の向きは、TDLの平面駐車場が延々と広がっている。せっかく駅前なのに平面駐車場が広がるばかりなのはもったいないし、駅前の駐車場をバス用に少し割り当てて、送迎バス乗降場をベイサイド・ステーション前に移すのもありなのではないかと思う。

▲ベイサイド・ステーションからはこの歩道がTDLエントランスまで通じているが、やはり通る人はいない。ここに送迎バスを発着させ、渋滞時にモノレールへの乗り換えができるようにしてはと思う

とはいえ、ベイサイド・ステーション発着への統一はディズニーリゾートラインへの乗車を半ば強制するような印象も与えてしまう。ならば、パーキングゲート前の渋滞が見込まれる開園直後と閉園前後はベイサイド・ステーション発着のみとし、送迎バスの利用が少なくなる10〜19時あたりの閑散時間帯は既存の送迎バス乗降場に発着とすればよいだろう。送迎バスの定時制向上とならび、パーキングゲートの渋滞緩和にもなる。

▲ここまで埋まるのは繁忙期くらい。普段は広大な駐車場砂漠が広がるのみだ

問題があるとすれば、ベイサイド・ステーションの敷地は、バスターミナルも含めてOLCの社有地であるということ。つまり、送迎バスを含めた一般車の乗り入れを一切認めていないし、公道からの徒歩アクセスも建前上は禁止しているのである。ただ、そこは現行のパーキングゲートを通過させるのと同じように、バスターミナルの入口で入構許可証のようなものをバス乗務員さんに提示してもらえばよいだろう。許可証がないバスは進入禁止とすればよい。

利用者不足に悩むディズニーリゾートラインの利用促進と、パーキングゲートの渋滞に悩まされる送迎バスの問題を、ベイサイド・ステーションバスターミナルの送迎バス解放は一挙に解決してくれるはず。検討されて然るべきと思うのだが、いかがだろうか。

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上空を伸び伸びと走るディズニーリゾートラインを見ていると、これをいっそのことシンボルロード上空に延伸しては…という思いが、ふつふつと湧いてくる。

▲海辺を走るディズニーリゾートライン。パーク内からは見えないように設計されている

新浦安に点在するホテル群からの送迎バスは、パーク周辺の渋滞を招いているといってもいい状況にある。そこで、特にホテルが集中するシンボルロード沿いと既存のモノレール線を直接つなぎ、送迎バスをモノレールへと移行させると共に、新浦安駅から離れた新町地区や、新浦安駅と浦安駅を結ぶ通勤・通学の足としてはどうか、というわけ。

新浦安で終点にしてもいいが、どうせなら東西線まで伸ばしたい。浦安ICを越えた先、市役所付近に「浦安元町」駅、そして浦安駅で終点となれば、もう言うことはないだろう。

ディズニーリゾートラインが新町地区、中町地区、そして元町地区を貫き、浦安市の3地区を結ぶとあれば、これほどシンボリックなものはない。市内融和の象徴として走るモノレールは、観光ばかりでなく通勤にも大きく役に立つ。京葉線がストップしたとしても、モノレールで東西線まで辿り着けるようになれば、舞浜が陸の孤島になるのを防ぐことができる。

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…だいぶ絵空事を書き連ねたが、ともかく現状のTDRを取り巻く交通には問題が多い。訪日旅行客4,000万人時代を迎え、そのキャパシティは逼迫する一方だ。モノレールを市内に張り巡らせるとまではいかないまでも、駐車場をやっつけ程度に改修したバス乗降場は問題だらけだし、放っておいても乗客が乗るはずのモノレールすらも有効利用できていないのは、実態に即した対応ができていない証拠ではないか。

▲ベイサイド・ステーションからTDLへの歩道。スペース・マウンテンの印象的な建屋がそびえるが、パーク内の喧騒とこの通路は無縁

浦安市域を越え、周辺の各地に増え続けるホテルから押し寄せる送迎バスは、あまりに数が増えすぎて周囲に悪影響を及ぼすレベルになりつつある。いくつかのホテルが連携して東京ベイシティ交通の路線バスを活用する(=宿泊客へのバス運賃サービスなど)のもマネジメントのあり方の一つであるし、PASMO導入による有料化(=基本的に有料とし、ホテルフロントでの処理をすれば返金するなど)も方法の一つ。とにかく、無料の送迎バスが市内に溢れている現状は、渋滞が深刻化する前に、打てる手を打っておかなければならない。

▲混雑する朝のシンボルロード。前を走るのは「パートナーホテル・シャトルバス」

近年はTDR自身、度が過ぎた混雑で悪い噂が立つようになってしまっている。イメージ商売のOLCにとって、悪い噂ほど恐るべきものはないはずだ。その混雑緩和策の一つとして、モノレールやバスの効率的なマネジメントによる交通混雑の軽減は、ひいては地域全体の発展に資するものになるはずだ。

▲国道357号に入ると、送迎バスばかりでなくこうした観光バスも多数舞浜方面へと流入してくる。このバスの大群を、TDRは毎日捌き続けているのだ

TDL、TDSとも新エリアのオープンが控え、今後も発展が続くTDR。川﨑千春が夢見て、高橋政知が形にした「絶えることのない人間賛歌の聞こえる広場」が今後もそうであるために、後世の人間も努力を続けていかなくてはならない。彼らが生涯をかけて創り上げた夢と魔法の王国が、これからも訪れるゲスト一人一人へ、感動を届けられるように。

(浦安編 おわり)