東京駅から常磐線特別快速に揺られること48分で、茨城県龍ケ崎市の佐貫駅に着く。一見何の変哲もない、関東平野のただなかにあるこの駅から、たった3駅・4.5kmだけを結ぶ小さな鉄道が出ている。100年前と変わらぬ区間を、今日もディーゼルカーがトコトコと走っている。
生まれながらの「培養線」
関東鉄道竜ヶ崎線は、常磐線と接続する佐貫(茨城県龍ケ崎市)―竜ヶ崎(同)を結ぶ、全線4.5kmの路線。常磐線から外れた龍ケ崎市街地と、常磐線における龍ケ崎市街地の最寄りとなる佐貫駅を直線で結ぶ、純粋な市街地連絡のための短距離支線だ。
※自治体名は「龍ケ崎市」、路線名・駅名は「竜ヶ崎線」「竜ヶ崎駅」表記。本項もそれに従うものとする。
この竜ヶ崎線、たった3駅・4.5kmながら、見所が盛りだくさんである。まず、最大の特徴としては、全線1閉塞であり、途中駅での列車交換がないこと。このため、1列車が佐貫―竜ヶ崎間をひたすら往復するだけという、至極単純なダイヤである。片道7分、折り返し3分としても20分間隔運転が限度であり、20分間隔となるのは6~8時台のみ。他の時間帯は終日30分間隔前後の運転となっているが、常磐線との接続の関係から、完全な20・30分間隔とはなっていない。
次の特徴は、佐貫・入地・竜ヶ崎ともホームは1面1線、すべて南側に設置されているため、運転席が点対象でなく線対称の配置となっていること。我が国の鉄道は左側通行であるため、視界を得るために運転席は左側に設置されることが多い。しかし、竜ヶ崎線の車両はワンマン運転の際の安全確認をしやすくするため、竜ヶ崎向きの運転台が右側(=ホーム側)設置となっている。このため、北側には非常用の客用扉はあっても、ホームがないために乗務員扉がないのも、外観上でわかる大きな特徴である。
かつて、竜ヶ崎線のような短距離の「培養線」は各地に存在し、幹線から外れた町村への貴重な足となっていた。しかし、短距離ゆえに輸送効率が悪いことから運賃が割高になったり、本線との直通運転が廃止されて利便性が悪化したり、これら培養線は姿を消していった。こうした培養線は小回りの利くバスへ置き換えられることが多く、元・培養線の鉄道代替バスはどこもそれなりの本数を維持しているところが多い。東京都内でも東急砧線(二子玉川―砧本村間2.2km:1969年廃止。東急バス玉06で代替)、京急大森支線(大森海岸―大森停車場前間0.7km:1937年廃止。京急バス大森駅発着各路線で代替)などの例がある。また、京王多摩川原支線→京王相模原線(調布―京王多摩川)、帝釈人車軌道線→京成金町線(京成金町―柴又)のように、培養線が延長・発展して、本線の一部へと取り込まれる例も見られた。
そのような中で、昔ながらの「培養線」の在り方を守り、今なお常磐線と龍ケ崎市街地の連絡に徹する竜ヶ崎線は、貴重な存在と言えるだろう。同じ関東鉄道の鉄道路線ながら、幹線的性格を持つ常総線とは対極の存在である竜ヶ崎線の姿に、迫ってみた。
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「玄関口は無人…佐貫駅」