関東

【茨城】現代に生きるミニ鉄道──関東鉄道竜ヶ崎線 #43

昭和の面影を残す…竜ヶ崎駅


車庫線が右へ分かれると、緩いS字カーブを描いて終点・竜ヶ崎駅に到着する。

いかにも元は1面2線あったというのがよくわかるホームの配置で、2番線跡は現在駐車場になっている。

▲ホーム跡が駐車場として利用されていることがわかる

列車が到着すると、改札係員が「舟」に立ち、降車客を出迎える。今や「舟」が現役である駅も、そう多くない。多くは舟の脇に立っている簡易IC改札機へICカードをタッチしてゆくが、中には切符を手渡す乗客もいる。入地では切符を手にすることはできないので、佐貫からの乗客であることがわかるのだ。逆に何も持っていない場合は、入地からの乗客と判断されるというわけだ。なるほど、これならワンマン運転でも整理券は要らない。

竜ヶ崎駅は行き止まりの先に駅舎が建っている構造で、竜ヶ崎より先への延伸は考慮されていない。舟が現役なのもそうだし、手書き看板の「駅長事務室」が残っていたりと、一昔前の地方の駅といった雰囲気が色濃く漂っている。改札窓口と出札窓口(有人きっぷうりば)が兼務できるつくりになっているのも、地方の主要駅によくある構造だ。

▲味のある手書きフォントが印象的

改札前にはベンチが複数脚並び、冷暖房完備の待合室も設けられている。これらは竜ヶ崎線の乗客ばかりでなく、竜ヶ崎駅前から発着するバスの待合室も兼ねており、列車発着時に限らない人の動きが見られる。かつては竜ヶ崎駅前から稲敷・江戸崎など、茨城県県南の鉄道から離れた地域へ向かう関東鉄道バスが多数発着したという。現在ではクルマ社会化の進展とともにバス網が衰退し、竜ヶ崎駅前に発着するバスもめっきり少なくなってしまった。

バスが向かう稲敷方面へは、実際に竜ヶ崎線を延伸する計画もあった。1900年に竜ヶ崎線が開通したのち、1902年には竜ヶ崎から14kmほど離れた伊佐津(現・稲敷市)への延伸にとりかかっているものの、日露戦争の開戦に伴う物資の高騰などが重なり、断念したという経緯がある。もし延伸が実現していたら現在の4.5kmというミニ路線ではなく、18.5kmある中規模路線に成長していたことになるが、同時に不採算区間を抱えるリスクも負うことになった。

▲規格品のようでいてオリジナリティあふれる駅名標

2007年に廃止された、もと関東鉄道の一員であった鹿島鉄道線も、石岡─鉾田間26.9kmのうち、常磐線から近い石岡─常陸小川間7.1kmは、竜ヶ崎線と同等の毎時2〜3本/hの列車が走っていた。しかし残り19.8kmの不採算区間を抱えていたことで、全線廃止という憂き目に遭ってしまったのだ。竜ヶ崎線は、不採算区間になりかねないローカル区間への延伸を行わなかったことで、現代に生き残ったとも言えるだろう。

▲きっぷにももちろんコロッケ

さて、「竜鉄コロッケ☆フリーきっぷ」を買い求めるべく、改札の駅員さんに声をかけた。「では、一旦外の窓口へ回ってください」と言われ、改札をスルーして出札窓口へ。結果的に佐貫から竜ヶ崎まで乗車券を持たずに乗ってしまったことになるが、このあたりはなんともローカルらしい、ユルい対応である。

厚紙のフリーきっぷにデカデカとした日付印が押され、加盟店のパンフレットと共に手渡された。関東鉄道のフリーきっぷ類は常総線のものも含めて全てこのスタイルで、券売機では購入できない。しかし、無味乾燥なものになりがちな券売機購入のフリーきっぷよりも、こうして厚紙に日付印を押してくれるフリーきっぷの方があたたかみもあり、思い出にも残りやすいと思う。券売機へと移行していく事業者も多いなか、関東鉄道は昔ながらのスタイルを守っている。

このきっぷ、なかなかお得である。竜ヶ崎線の一日乗車券に、加盟店で使えるコロッケ券150円分をセットして500円というものだ。佐貫─竜ヶ崎間の片道が220円(現金・IC同額)=往復440円なので、コロッケ券150円分を含めて590円分を500円としている。さらにこのきっぷなら竜ヶ崎線も1日乗り放題となるため、乗り鉄を楽しみたい向きにもオススメだ。

* * *

▲駅名標にも龍ケ崎市のキャラクター「まいりゅう」が躍る

ローカル感たっぷりの竜ヶ崎の駅舎を出ると、目の前はバスターミナル。その先は龍ケ崎市の中心市街地となる商店街が続いている。高層建築が少なく、空がなんとも高い。山並みがどちらを向いても見えないあたり、ここが関東平野のど真ん中なのだということを実感する。山並みが全く見えないという環境は、我が国においては非常に珍しい。

▲バスターミナルとタクシー乗り場を併設する竜ヶ崎駅前

美味しいコロッケと楽しい出会いを求めて、龍ケ崎をぶらりと歩いてみよう。

(つづく)

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