下地島空港。かつてこの空港は定期便がなく、もっぱらパイロットの訓練に用いられる空港として有名であった。そんな一般人お断りの空港が、世界へ開かれようとしている。
変わりゆく宮古諸島の交通
下地島空港が所在する下地島は、宮古島を主とする宮古諸島に属し、幅数十メートルのごく狭い海峡を隔てて、宮古諸島で二番目に大きい伊良部島と接する。伊良部島とはなかば一つの島のように扱われ、長らく同じ宮古郡伊良部町に属していた。
1979年の空港建設以来パイロット訓練に用いられ、その傍ら1980年からは那覇への定期便も飛んでいたのだが、1994年に休止。当時は宮古島への架橋がなく、フェリーで宮古島に渡ることなく伊良部から航空機に乗れる意味合いはあったのだが、やはり本数の多い宮古空港に利用が流れてしまうのか、振るわなかったようだ。
しかし、2014年に各航空会社とも下地島空港での訓練を中止してしまったことで、空港の活用策が課題となる。ちょうどその頃、存在感を増してきていたのがLCC。2012年にピーチ・アビエーション(APJ)が大阪/関空─那覇線、ジェットスター・ジャパン(JJP)が相次いで東京/成田─那覇線へ参入。2013年にはピーチが大阪/関空─石垣線、2014年にはバニラ・エア(VNL)が東京/成田─奄美線へと就航し、周辺の島々と本土がLCCで結ばれてゆくなか、宮古島はLCCの就航に至っていなかった。そのため、活用策が模索されていた下地島空港と、着陸料が安い空港を求めていたLCCの利害が一致し、2017年に下地島空港の再旅客化が正式決定。三菱地所の主導で旅客ターミナルが整備されることとなったのだ。
この間、2015年には通行料無料の橋としては日本一長い「伊良部大橋」が開通し、宮古島と伊良部島、下地島が橋で結ばれた。これによって、宮古島から再旅客化される下地島空港までのアクセスが飛躍的に改善されることとなった。伊良部大橋の開通が、下地島空港の再旅客化を後押ししたのは言うまでもない。
ジェットスターによる東京/成田─宮古/下地島線の就航が3/30に決まり、空港アクセスバスの運行も発表されるなど、宮古諸島はLCCの受け入れ態勢が構築されつつある。それに伴い、従来の地元需要に特化した体制から、観光客にも使いやすいようになりつつある。そんな変わりゆく南ぬ島をゆくるバスの姿に迫るべく、僕は宮古空港へと降り立った。
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「存在感皆無の空港連絡バス」