九州・沖縄

【沖縄】LCCを迎える南ぬバス──宮古協栄バス【9】みやこ下地島空港リゾート線 #54

存在感皆無の空港連絡バス

東京/羽田―宮古線は、JALグループ・ANAグループとも1日1往復ずつ。

JALグループは、日本トランスオーシャン航空(JTA)により、東京/羽田6:40発→宮古9:50着(JTA021便)、宮古19:45発→東京/羽田22:15着(JTA022便)がB737-800で運航され、現地滞在時間を目一杯とる設定。JAL本体でなく、沖縄に整備拠点を置くJTAによる運行だからこそ、宮古でとんぼ返りしなくて済む運行ができるのだ。

ANAグループは、ANA本体により、東京/羽田11:40発→宮古15:00着(ANA087便)、宮古15:45発→東京/羽田18:20着(ANA088便)と、こちらはホテルのチェックインに合わせた設定。ANAは沖縄に拠点がないため、宮古でとんぼ返りせざるを得ない。

この他はすべて那覇空港で乗り継ぎとなるため、東京から最も早くに宮古へ到着でき、最も遅くまで滞在できる、このJTA21便・22便に観光客が集中する。金曜日出発であったが、ほぼ満席の盛況であった。

沖縄らしい赤瓦を戴いた宮古空港ターミナルビルは、南国らしく開放感のある建物。自然光が入ってくる中庭に出ることもでき、南国の太陽をいっぱいに浴びることもできる。唯一の東京直行便から降り立った観光客は、空港に迎えに来るホテルのバスや、レンタカー会社のシャトルバスに乗り込んでいく。

▲開放感あふれるターミナルビル

・・・しかし、宮古島唯一の公共交通機関たる路線バスの存在感は、殆どない。

まず、宮古空港のホームページを覗いてみても、路線バスによるアクセスは全く紹介されていない。それもそのはず、空港ターミナルに乗り入れるのは宮古協栄きょうえいバス【5】新里宮国しんざとみやぐに線の3.5往復のみで、空港徒歩6分程度の場所にある「空港入口」に停車する便を含めても1日7往復(土休日・学休日6往復)しかない。また、乗り入れるバスにしても、9:50着の東京直行便を受ける設定にはなっておらず、東京直行便を振り切るように、9:35に平良行きが出て行ってしまう。次の平良行きは11:56発と、2時間後である。

▲平良行き4本、宮国行き3本の計3.5往復しかない

このような状況であるため、ターミナル内にすら路線バスの掲示や案内は全くない。外に出て左に進むと、タクシー乗り場の片隅に、何の主張もないバスポールが1本立っているのを、ようやく発見できるだけである。ここに停車する平良行きは9:35、11:56、16:56の3本のみ。「空港入口」停車を含めると8:03、18:30(土休日18:40)、19:35(土休日運休)も利用できるが、例によってその案内もポールにすら掲出されていない。

このため、空港から宮古島の中心市街地である平良ひららへ向かうにはタクシーの利用が一般的。もっとも、平良市街は観光要素に乏しく、あくまで地域の中心という感じ。リゾートエリアとされる上野うえの地域へは、そのリゾートホテルのシャトルバスがほぼ必ず設定されているため、このような状況でも観光客の受け入れにはあまり問題がないのである。

なぜこのような状況になっているかというと、推測の域を出ないが、宮古空港のターミナルビルの向きが影響しているように思う。宮古空港は、平良市街から約3kmの現在地に1975年に開港したが、当時のターミナルビルは当然平良市街を向いていた。空港と市街は、平良市街を貫く下里しもざと通りで直結しており、3kmという近さもあって、まともな空港アクセスが整備されなかったのだろう。タクシーに乗っても数百円の距離である。

ところが、1989年の東京/羽田線就航、1992年の大阪/伊丹線就航を経て、1997年に航空旅客の増加に対応すべくターミナルビルが増築・移転し、平良市街の反対を向くようになってしまった。

このため、平良市街から空港へは滑走路を回り込まなくてはならなくなり、アクセス距離はほぼ倍の6kmとなった。それにも関わらず、空港アクセスバスは既存の【5】新里宮国線の一部を若干経路変更させただけであり、バスが多数発着する沖縄本島や石垣島、奄美大島に対し、宮古島は空港アクセスをほぼタクシーに依存する状況が続いている。

▲一日4本の貴重な空港経由平良行き

新ターミナルが開業した1992年といえば、バブルの残り香があった頃。平良市街と反対の下地・上野地区でリゾート開発が進んだ時期であり、ターミナルの移転によって、それらリゾートへは逆に近くなった。平良市街の重要度が下がっていたのだ。そして、散在するリゾートへは各ホテルの送迎バスで事足りるため、新ターミナルからの路線バスは殆ど設定されなかったというわけだ。

ただ、何も取り組みがされていなかった訳ではなく、空港と平良市街を結ぶアクセスバスの実証運行が度々行われている。直近では2018年4月~9月に「宮古島くるりんバス」が運行され、空港と平良市街を1周50分・循環(双方向運行)・各1時間に1本、さらに宮古空港発が15・45分発=両方向合わせてきっかり30分に1本という、なかなか使いやすい設定であったのだが、残念なことに本格運行に至っていない。2015年の伊良部大橋開通に伴うバス路線の再編でも、空港関係は改善されなかった。

▲「まちなか循環バス」の時刻表が剥がされていた

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「”たいらな島”ならではの事情」

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