関東

【千葉】”町民鉄道”は今日も走る──流鉄流山線 #60

元西武101系が元気に走る

馬橋からの乗客は10名程度。幸谷まで常磐線と並行するものの、線路が完全に並んでいるのは馬橋駅付近のみ。

流山線は2つ先の小金城趾駅付近まで新坂川に並行して走るため、水戸方面へと北東に向けて走る常磐線とは、徐々に間が空き、民家も建ち始める。このため、流山線の中から並行する常磐線は見えず、その逆も同じである。

新松戸駅前を大きな踏切で横切り、武蔵野線の高架をくぐると幸谷に着く。

常磐線新松戸駅とは100m程度の距離で、常磐線・武蔵野線とは馬橋と同じく、2分程度あれば乗り換えはできる。やはり幸谷からの乗車が多く、全体で30名程度になって出発。

新坂川に沿って北西へと進んでゆく。新坂川は、その名の通り逆流が多かった坂川(=逆川)の分流として1932年に開削されたもので、鉄道の方が開通は早い。

メインラインの常磐線沿いは切れ目なく市街地が続くが、支線である流山線は、幸谷を出るとほどなくして農地も現れる。個人宅にのみ繋がる第4種踏切(警報機・遮断機ともになし)もあり、手前で警笛を鳴らす。このあたりの動作も、実にローカル線らしい。

幸谷から1.1kmで小金城趾こがねじょうし。馬橋から2駅目であるが、馬橋から2.8km、流山から2.9kmと中間地点にあり、殆どの列車がここで交換する。セオリーに従い、ここで上り馬橋行きと交換する。交換相手はピンク色の「さくら号」で、その派手な出で立ちは目を引く。

静かな街の規模にそぐわない立派な橋上駅舎を持つが、これはかつて隣接地に建っていた県営住宅と駅舎が一体的に接続されていたものの、県営住宅だけが解体されたという名残である。

ただ、新松戸駅からも北小金駅からも徒歩15〜20分程度の位置にあって両駅から徒歩圏内であること、流山線は常磐線の約半分しか運転本数がないことなどの理由から、利用者数は1,600名とそこまで多くない。今となっては、多くの乗客に対応した橋上駅舎がもったいないくらい。

むしろ、階段しかないためにバリアフリー対応がなされていない。この程度の利用者数であれば、橋上駅舎を廃止して地上駅舎とし、駅舎とホームを構内踏切で結べば十分だと思う。しかし、列車本数や利用者数を無視して十把一絡げに「踏切は危険」という意見も根強いだけに、なかなかそうもいかないのだろう。

小金城趾を出ると、左手に複線化用地が並行し始める。0.8km先の鰭ヶ崎駅手前までそれは続き、一旦途切れるものの、鰭ヶ崎駅を過ぎてなお複線化用地は並行し、平和台駅の手前まで続く。幸谷─流山間4.0kmのうち、中間の約2kmにわたり複線化用地が確保されていることになる。これは将来の列車増発を見据えたものと言えるが、今のところは資材置き場程度の使い道しかなさそう。これについては、後述したい。

馬橋から3.6kmで鰭ヶ崎ひれがさき。武蔵野線・TX南流山駅から850m・徒歩11分と絶妙な遠からず近からずな離れた位置にあり、流山市南部の拠点として商業施設やマンションが立ち並ぶ南流山駅に対し、こちらは住宅地の真ん中である。

乗換駅とは言い難い距離感であり、乗換駅として機能している訳ではないが、小金城趾─流山間で最もTXに近い駅であり、最も大きな影響を受けた駅である。TX開業前は小金城趾よりも多い2,700名程度あった乗降客数が、現在では1,200名程度にまで落ち込んでしまっており、流山線内で最も少ない。小金城趾はTXから離れているため横ばいであり、利用者数最少の駅の座が移ってしまった。その鰭ヶ崎では想像よりも多い7〜8名の降車があり、3名程度の乗車もあったのは意外。

馬橋─幸谷の1.7kmに次ぐ、1.5kmの駅間距離を置いて、馬橋から5.1kmで平和台。

開通当初は駅がなかったが、1933年のガソリンカー導入時に赤城あかぎ駅として開業、その後1965年に赤城台駅と改称、1974年に駅東方の流山平和台住宅の造成に伴って平和台駅へ改称したという、流山線で最も改称が多い駅である。駅南西300mほどにある赤城神社の最寄駅として開業したが、この赤城神社は流山の地名の由来である。群馬県の赤城山から洪水で山の一部が利根川・江戸川を経て流され、流山に流れ着いたとされるのが「流山」の由来であるという。

現在は流山平和台住宅の最寄りであるほか、流山本町の南端にあたることから、イトーヨーカドーやケーズデンキといった郊外型店舗が建ち並ぶ。馬橋・幸谷を除き、流山線内では最も駅前の商業施設が充実しているため、電車到着の際には、電車からこれら店舗へと向かう人の流れが見られる。流山線は初乗り運賃が120円と安く、隣駅の鰭ヶ崎・流山からは120円、小金城趾からでも130円である。これだけ運賃が安く、駅前にイトーヨーカドーが立地しているという便利さもあって、高齢者の買い物需要を満たす、コミュニティバスのような役割を、流山線が担っている。

終点・流山と0.6kmしか離れていないが、平和台駅前の交差点は交通量が多く、電車とイトーヨーカドー等を行き来する人々が多いこともあって、流山本町に隣接するとは思えない、郊外の駅前らしい景色が広がっている。

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「核を持たない街の顔…流山駅」

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