九州・沖縄

【沖縄】バスで行く小さな無人島への旅- 東陽バス【38】志喜屋線(2) #34

優しい色の島バスに惹かれて

10:54に志喜屋終点へ到着。バスが待機場へ去ったのち、150mほど離れた国道上のバス停へ向かった。路傍にポールがぽつんと建つだけの終点バス停に対し、国道上の始発バス停は上屋があり、風除けにベンチもある、しっかりしたもの。ここは【38】が始発とし、【53】の那覇行きが経由するため、降ろすだけの集落内部のバス停よりも、バス待ちの需要が高いということもあろう。

遠くに波音が聞こえる以外、風の音しかしない静かな、でも堅牢なバス停でのんびり過ごしていると、さっき降りたバスが再びやってきた。再び整理券を取り、フリーパスを見せる。

11:20、志喜屋発。東陽バス【38】上泉行き。

方向幕は「与那原・開南 38 那覇行き」だが、車内の液晶モニタでは「上泉行き」。上泉行きでは正直何が何だかわからないが、実際のところ上泉行きなのだから仕方がない。「那覇(上泉)行き」くらいのほうがいいように思うが、正々堂々と上泉行きとしているのは、バス会社なりの思い入れがあるのだろうか。だが少なくとも、観光客にはわかりにくい。

志喜屋を僕ら二人だけ乗せて出発したバスは、行きとほぼ同じく、斎場御嶽入口までカラで走った。志喜屋〜斎場御嶽入口の末端4.2km、約7分は観光客のルートから外れている上、平和祈念公園(平和の礎)やひめゆりの塔など、本島南部の観光スポットへも複数回の乗り継ぎを要するなど、回遊性が良くない。

このため、観光スポットが点在する【38】志喜屋線の中でも、末端区間では観光客の姿を殆ど見かけない。斎場御嶽入口バス停でも、下り志喜屋行きを待つ人はいなかった。斎場御嶽入口で見学帰りの乗客を5人乗せ、出発。ここまで来て、ようやく僕ら以外の乗客が増えた。

斎場御嶽入口の次は、いよいよ目的地の知念海洋レジャーセンター前。ほどなく到着し、フリーパスを乗務員さんに見せつつ、整理券を渡す。僕ら以外にもちろん降車はなかったが、入れ替わりに観光客が3人ほど乗り込むと、扉が閉まる。

那覇→志喜屋→知念海洋レジャーセンター前と、約1時間40分にわたり乗り続けてきたバスが走り去ってゆく。アイボリーにグリーン、オレンジといった優しい色合いのバスは、やわらかな沖縄の景色にとてもよく溶け込んでいる。南国らしい深い色合いの青空のもと去ってゆくバスは、見る者を穏やかな気持ちにさせてくれるかのようだった。

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いざ、無人島へ

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