北神急行と神戸電鉄の微妙な関係
唐櫃台、大池に停車し、次は谷上。ここで北神急行線に接続し、新神戸・三宮方面へ急ぐ場合は乗り換えとなるが、その分運賃が高くなるため、今回は新開地まで乗り通すことにした。
北神急行線は1988年に開業。神戸市営地下鉄西神・山手線と直通運転し、谷上─三宮間を僅か10分で結んでいる。それまでの神戸電鉄有馬線・神戸高速線の乗り継ぎで35分を要していたところ、25分もの短縮となった。阪急阪神東宝グループに属し、開業以来阪急との関係が深い。そのため、同じく阪急阪神東宝グループに属する神戸電鉄のバイパス線として機能している。当時は有馬・三田線も、鈴蘭台で分岐する粟生線も輸送量が伸び続けていてダイヤが逼迫していたため、遠回りの経路であった有馬・三田線の乗客を北神急行線に振り向け、既存の鈴蘭台経由のルートを粟生線の需要に特化させる思惑があったと言われている。
しかし、バブル崩壊によって有馬・三田線沿線の輸送量の伸びが止まったこと、建設費償還のために運賃が高く設定されていること、および新神戸─三宮は神戸市営地下鉄線であるために、神戸電鉄から三宮までの乗り継ぎだと初乗り運賃を3回も取られることが重なり、利用は振るっていない。このため、1999年には運賃を430→350円に値下げしたり、2001年には谷上駅での神戸電鉄乗り継ぎを同一ホーム化したり(ラッシュ時を除き、神戸電鉄は上下線とも北神急行線と同一ホーム乗り継ぎができる3番線に発着する)、利用促進に向けた策を展開している。
ただ、望ましいのは北神急行線と有馬・三田線の相互直通運転であったと言わざるを得ない。例えば、三田線沿線で最大のニュータウンを形成する岡場から三宮であれば、北神急行線を経由すると僅か27分。これが新開地経由になると52分を要するため、かなりの遠回りになる。有馬・三田線沿線は、今以上に神戸のベッドタウンとして発展していたのではないかとも思う。
しかし、直通運転のネックとなるのは、神戸電鉄(1,067mm:狭軌)と北神急行線-神戸市営地下鉄西神・山手線(1,435mm:標準軌)で軌間が異なること。北神急行線-神戸市営地下鉄西神・山手線は阪急神戸線との直通運転を視野に入れているため、改軌をするならば神戸電鉄の方になる。谷上─三田・有馬温泉、および公園都市線間のみの改軌にしても30km弱の改軌となり、改軌工事としては規模が大きくなる。また、狭軌で残ると粟生線系統と、標準軌となる有馬・三田線系統で車両を共用できなくなる問題も出るが、これは谷上の北神急行の車両基地を共用すれば良い話ではある。
つまるところ、利便性を追求すれば谷上─三田・有馬温泉間の改軌をするのが最良だったにせよ、工事の規模が膨大になりすぎるために断念せざるを得なかったのであろう。しかし、三田線はニュータウン鉄道へと発展してゆくにつれ、谷上駅・岡場駅の高架化をはじめ、新線建設に匹敵するほどの投資を行っているのもまた然り。この投資を北神急行線への直通に振り向けても良かったのでは、という気がしなくもない。地下鉄三宮駅から、谷上、有馬口、三田を経由する「ウッディタウン中央行き」が出ていたのではないかな…などと想像するのも楽しいが、それは夢物語だ。
ただ、谷上駅は乗換駅としてあまり優れた構造とは言えない。関西でいうところの近鉄・京都市営地下鉄烏丸線竹田駅のような、地下鉄が内側で折り返し、神戸電鉄が外側ホームに発着する構造であれば、往復とも三田方面は同一ホーム乗り換えにできたが、現状では有馬・三田線の上下線を3番線に発着させるため、時としてダイヤに歪みが生じている。最初の設計段階でそうならなかったことに、ここでも悔やまれる。
その谷上では、1両に15人ほど乗っていた急行の乗客のうち、半分程度が北神急行線へ乗り換えていった。この人数が乗り換えていくあたり、やはり三宮へ25分短縮で結ぶ北神急行線への直通需要は高いものがある。
(次ページ)
新開地ターミナルいまむかし