貴重な有馬温泉─新開地直通電車
有馬温泉駅に戻ってくると、二階が明るくなっていた。有馬温泉駅ビルの二階は「有馬茶房」という喫茶店になっており、気軽に地のものが味わえる。駅ビルにはぴったりの雰囲気の軽食処といった雰囲気。ただ、意外といえば意外だが、こんなビルの中にも本格的な茶室「有大庵」も入居しており、そこは平安時代以来の歴史を持つ有馬温泉ならでは、といったところか。
19:08、有馬温泉発。神戸電鉄有馬線普通新開地行き。有馬温泉発の電車は、殆どが隣の有馬口止まりな中で、貴重な神戸・新開地への直通電車だ。しかし、有馬口で三田発の急行新開地行きに接続するため、いきなり6分も停車する。このため、「谷上、鈴蘭台、新開地方面へお急ぎの方は、次の有馬口で急行新開地行きへお乗り換えください」と案内される。
土休日夕刻の直通列車は、この19:08発普通新開地行きの前にも、18:23発普通鈴蘭台行きが走るが、これもやはり三田発の急行新開地行きに有馬口で接続する。平日にしても、有馬温泉─新開地直通は三田方面の急行とペアで設定されているのが常で、急行通過駅を有馬温泉発着の普通がカバーする形。
そのため、直通列車は温泉客の利便を図るというよりも、ラッシュ時のみ運行される急行のフォロー役として設定されているといえ、あまり観光のためという配慮は見られない。観光客が多くなるはずの土休日夕刻に設定がなく、帰宅のピークを過ぎた18・19時台に1本ずつという、観光客向けとはいえない設定が、それを物語っている。
有馬温泉から4分、19:12に有馬口に着くと、有馬温泉から乗った20人ほどの乗客のうち、多くが急行へと乗り換えた。残ったのは、数名のお年寄りだけ。「時間がかかってもいいから、座ったまま行きたい」という向きは、やはりお年寄りに顕著だ。隣に急行が着こうが、お構い無しに話に花が咲いていた。
特に急ぐ理由もなかったが、乗客の波に乗って急行へ乗り換える。急行は1分接続で慌ただしく発車。普通はもう5分停車するが、新開地到着は9分しか差がつかない。普通との停車駅数の差は5駅なので、1駅通過すると約1分早くなる原則に従うと、まあそんなものか。19:13、有馬口発。神戸電鉄有馬線急行新開地行き。
(次ページ)
北神急行と神戸電鉄の微妙な関係