関西

【兵庫】関西の奥座敷・有馬温泉を目指した鉄道たち(2)──神戸電鉄有馬・三田線 #38

乗り換えなしのバス・高頻度運転の電車

ほくほくした顔で、金の湯を出た。湯を出るときは、海水浴をしてそのままでいると肌が炎症を起こすのと同じ理屈で、「必ずシャワーで温泉成分を洗い流してから上がるように」という注意書きがある。なんだか勿体無いような気もするが、温泉成分は既に肌の中へ浸透しているわけで、洗い流さない方が塩分が肌に残ってしまい、その方が身体に悪いということなのだろう。洗い流してから出たおかげで、湯冷めもしないし、肌もしっとりしている気がした。

金の湯を出てすぐのところにある、阪急バス有馬案内所から阪急バスに乗れば、大阪・梅田まで乗り換えなし。阪急電鉄の前身、かつての箕面有馬電気軌道(箕有電軌)が果たせなかった大阪・梅田─有馬温泉の直通を、現在では阪急バスが担っている。温泉街の近く、というかバスの強みを活かして温泉街の真ん中に構えており、神鉄有馬温泉駅よりも有利な場所にある。

ただ、神鉄とモロに競合する神戸・三宮行き有馬エクスプレスはここではなく、有馬温泉駅付近にある太閤橋周辺の路上バス停から発着する。

このように、神戸・三宮、大阪・梅田へのアクセスはどれも複数あるが、それぞれ比較してみよう。

  • 有馬温泉から神戸・三宮まで
所要時間 運賃 頻度
神戸電鉄(新開地経由) 50分 710円 4本/h
神戸電鉄(北神急行経由) 30分 930円 4本/h
有馬エクスプレス 30分 770円 1本/h

有馬温泉から大阪・梅田まで

所要時間 運賃 頻度
神戸電鉄(新開地経由) 85分 1,010円 4本/h
神戸電鉄(北神急行経由) 65分 1,250円 4本/h
阪急バス有馬急行線 60分 1,370円 2本/h

どれも甲乙つけがたいが、概して神鉄は高頻度運行を武器としており、新開地を経由すれば安く、北神急行を経由すれば早く到着する傾向にある。一方で、バスは乗り換えなしを武器としており、所要時間も電車と同じかやや早い。しかしながら、有馬温泉を訪れる観光客はやはり中高年が多く、彼らは多少の安さや早さよりも「座っていける」ことに重きを置く。従って、神鉄の乗客は安さを優先する若者か、日常的に行き来する近隣の沿線住民(有馬温泉の旅館や浴場、飲食店で働く従業員も数多い)がメイン。阪急バス有馬案内所の待合室は、大阪・梅田行きを待つ中高年の乗客で、たいへんな賑わいを見せていた。

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貴重な有馬温泉─新開地直通電車

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