関西

【兵庫】タカラジェンヌに逢える街・宝塚──阪急今津線・JR福知山線(JR宝塚線) #35

宝塚をめぐる攻防

しかし、大きな阪急宝塚駅、小さなJR宝塚駅という規模の差とは裏腹に、1日の乗降人員は阪急約50,000人に対してJRは約64,000人と、JRの方が多い。これは、大阪(梅田)へは阪急宝塚線急行が33分なのに対してJR快速は25分と、所要時間ではJRに分があることが主因。しかし、観劇客はその多くがJRではなく、阪急から来ているように見受けられる。

つまり、大阪への通勤・通学は速いJR、宝塚歌劇へ向かう観劇客は豪華な阪急という、役割分担がなされているのだろう。阪急電車はそのブランドイメージゆえにどの車両も美しく整備されており、電車そのものが観劇へと誘うような雰囲気すらある。日常の通勤・通学は速いJRでも、たまの観劇は阪急でという人もいることだろう。また、所要時間ではJRに劣る阪急であるが、大阪・梅田先着列車はJRが15分間隔の快速のみなのに対し、阪急は10分間隔の急行すべてが先着となるため、本数では阪急の方が多い。

JRは快速の他に普通も走るが、普通はすべて2つ大阪寄りの川西池田かわにしいけだで快速を待避するため、大阪先着とはならない。しかし、快速が大阪止まりなのに対し、普通は新幹線と連絡する新大阪を経由する高槻たかつき行きなので、新幹線を利用して宝塚へ向かう際はJR普通が一番便利。また、1時間に1本ではあるが、特急こうのとり号も新大阪まで乗り換えなしで利用できる。新幹線乗り換えであれば特急料金が半額となるため、自由席なら320円の追加で利用できるのも大きい。

逆に阪急を利用しようとすると、混雑する大阪・梅田で乗り換えるか、新大阪から地下鉄御堂筋線に乗って次の西中島南方にしなかじまみなみがたで下車、隣接する阪急南方みなみかたから京都線に乗って次の十三で再び宝塚線に乗り換え…と、なかなか面倒なことになる。乗り換えなしで宝塚と新大阪を結び、新幹線の観劇客をJRに呼び込んでしまおう…というのは、JRならではの広域ネットワークが為せる業である。

宝塚歌劇は阪急のものだが、阪急の牙城を崩さんと腐心するJRの取り組みも見ていて興味が尽きない。乗客の実数としてはJRの方が多くとも、宝塚の街には阪急ががっちりと根を下ろしており、存在感では圧倒的に阪急。いわば阪急の街にJRが横から入ってきたようなもの。その対比にも、実に興味深いものがある。

* * *

しばらくホームで電車を待っていると、普通新三田しんさんだ行きがやってきた。福知山線廃線跡歩きの起点、生瀬駅へは宝塚からこの普通電車で1駅。

来週は、いよいよ廃線跡歩き。

(つづく)

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