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【沖縄】冒険と開拓の島・西表島へ──安栄観光フェリー西表島大原航路・西表島交通バス #69

西表島を走る3つのバス

まず、島内交通を担う一般路線バスが「西表島交通」である。西表島の背骨である県道215号・白浜南風見線のほぼ全線を走破する唯一の公共交通機関であり、南東部の豊原から大原港、上原港を経て、白浜南風見線の終端である白浜まで約50km、中型乗合バスで1日4往復が運行される。白浜南風見線のうち、西表島交通バスが走らないのは豊原終点から南風見田の浜までの3.8kmのみで、かつ豊原終点から先は集落がない。このため、西表島交通バスは西表島のすべての集落を結んで走っているということになる。

▲多くの観光客を迎える一般路線バス(由布水牛車乗場)

定期便は1日4往復なのは一年中同じだが、4~9月の観光シーズンには、東部・大原港―由布ゆぶ水牛車乗場までの短距離を往復する臨時便が5往復追加される。こちらは定期便と違って観光車が充当され、混雑しやすい定期便に対し座席数が多いため、まず座れないことはない。また、大原港―由布水牛車乗場の全線利用が殆どではあるが、途中停留所の利用も定期便と同様に可能であるため、例えば水牛車観光を楽しんだ後、イリオモテヤマネコの保護活動で知られる「環境省西表野生生物保護センター」を見学して帰る、といったこともできる。

▲大原港―由布水牛車乗場間を結ぶ臨時便。観光車を使うため乗り心地は一般路線バスよりも良い

次に、高速船との結節によって、石垣島と西表西部の各集落を結ぶのが、安栄観光・八重山観光フェリーによる送迎バスだ。これは西表西部・上原港発着のフェリーに連絡して、上原港─白浜間を結ぶ。1日8往復全ての高速船に接続があり、1日4往復の一般路線バスの倍の本数がある。西表島を走るバスとしては、島内のみを走る一般路線バスよりも、石垣島とを結ぶこちらの送迎バスの方が、存在感があると言えるだろう。

▲安栄観光の船と接続して島内各地を結ぶ「あんえいバス」。島内のみの利用はできない

西表島にはコンビニや大手スーパーが1件もなく、個人経営のスーパーが点々とあるだけなので、ちょっとした買い物があれば、石垣島まで出向かなくてはならない。その点、船賃だけで集落まで送ってくれるこの送迎バスは、西表島民にとって欠くことのできない生活インフラの一つであるし、また港までクルマを走らせなくてもいいというメリットもある。港までクルマを走らせたところで、クルマごと高速船に乗せられる訳ではないし(カーフェリーによる自動車航送はあるが、石垣島内は路線バスが充実しているため、クルマなしでも大抵の用は足りる)、高速船の時間に合わせなければならないのは、クルマにしてもバスにしても同じことだからだ。

▲1日4往復とはいえ西表島ただ一つの公共交通機関の役割を果たす

しかし、注意を要するのは、この送迎バスを安栄・八重観それぞれが運行していること。そして、停車する停留所の設定も、2社のバスで微妙に異なる。このため、乗船券は共通化されているのに、送迎バスは乗船券ごとにバスが異なるという事態を招いている。つまり、石垣港で安栄の乗船券を買うか、八重観の乗船券を買うかで、同じ船に乗るにもかかわらず、乗るバスが異なってくるというわけだ。おかげで、訳もわからず上原港にやってきた観光客が、バス乗務員さんに「あなたはあっちのバス」と追い返されるということが、日常茶飯事となっている。これはもう、混乱を通り越して混沌としていると言っていいだろう。高速船だけでなく、バスも含めた共同運行化が早急に必要である。

そして3つ目が、上原航路欠航時に運行される、上原航路代替バスである。八重山諸島の島々の間を縫うコースを辿る大原航路に対し、上原航路は外洋に出るコースのため、海況の影響を受けやすく、欠航となることが多い。上原航路が欠航していても、大原航路は台風でもない限り運航していることが多いため、このような場合は、上原港─白浜間の送迎バスが、大原港─上原港─白浜間の代替バスへと振り返られる。

しかしながら、ここでも安栄と八重観で扱いが異なる。まず、八重観の乗船券なら八重観の代替バスのほか、一般路線バスにも乗車可能なのに対し、安栄の乗船券では安栄のバスにしか乗れないという点。この代替バスは安栄7往復、八重観4往復+一般路線バス4往復=8往復と、一般路線バスを含めれば八重観の方が1往復本数が多く、どちらも上原航路の高速船とほぼ同等の本数が設定されている。ただ、大原航路8〜10往復の全てに接続するわけではない上、安栄・八重観どちらかにしか代替バスの設定がない便まである始末(例:石垣港14:40→大原港15:20便は一般路線バスの接続しかなく、八重観の乗船券でないと乗れない)。

また、送迎バス・代替バスに共通する点として、原則として予約制であること、手を挙げて合図をしないとバス停へは停車しないこと、そして乗船券を持っていないとバスへの乗車はできない、といった点が注意点として挙げられる。このため、西表島を訪れる観光客は、石垣港で往復の乗船券を購入し、同時に往復のバスを予約するのが基本となる。

また、代替バスは上原航路の振替という役割を担うものの、大原航路との接続を第一にしたダイヤであるため、上原港発着の送迎バスとのダイヤとは大きく異なるのにも、注意が必要だ。上原航路に乗るつもりでバス停へ行っても、上原航路が欠航していればバスの時間が変わっており、待ちぼうけを食うことになる。このため、高速船に乗る際は、各社のサイトでの確認が必須だ(トップページに運航状況が記載されている)。

▲会社のトップページに運航状況が大きく掲載されている

以上、一般路線バス、上原港送迎バス、上原航路代替バスの3社、計6種類のバスをご紹介した。今回は一般路線バスを中心に、広い西表島をバスで冒険してみることとしよう。

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生活航路・西表大原航路

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