奥西表:船浮の入口 終点-白浜
祖納の次は、いよいよ終点・白浜である。この間4kmの間には、県道215号で唯一のトンネル「西表トンネル」があり、いよいよ地形が険しくなってきたことがわかる。西表トンネルは700mと結構長く、「ちょっとした尾根の付け根を貫く」感じとは異なる。西表トンネルの開通は1993年と県道の全通(1977年)よりだいぶ後のことで、それまでは尾根の東側をえっちらおっちら山道で越えていた(旧道は今でも通行可能)。道路の改良で交通量が増したのは言うまでもなく、またトンネル化によって野生動物の保護にも繋がっただろう。それにしても、「離島に立派な道路トンネルがある」ということ自体、西表島の地形がいかに険しいものかを物語っている。
トンネルを抜けると、ほどなく終点・白浜に着く。15:23、白浜着。
終点・白浜は、船浮港への高速船が出る白浜港旅客ターミナル(と言うにはかなり小規模だが)に隣接しており、「白浜港」と名乗っても良さそうな立地。15:50の船浮港行き高速船や、15:45発の折り返し豊原行き路線バスを待つ乗客が数名いた。
バスは岸壁のすぐ近くで器用に切り返しを行い、波打ち際と言ってもいい場所に止まった。こんなに海のすぐ近くに止まるバスというのも珍しく、沖縄らしい開放感に包まれた。
豊原から1時間45分を経てようやく終点・白浜に着いた感慨もそこそこに、バスは20分ほどの小憩を挟んで、白浜15:45の最終豊原行きとなる。
宿を取ったのが20分ほど手前、浦内バス停近くの「ペンション・イリオモテ」であったため、三たびバスに揺られて引き返す。朝5時の京急線に乗って以来ずっと動き続けており、この辺りで疲れが出てきた。目指す船浮はもうすぐ先だが、ここから先はまた明日だ。
さて、白浜港から先へ向かうには、船浮海運の定期船かチャーター船が唯一の足となる。本数は1日5往復で、4〜11月と12〜3月では船浮発の始発便の時刻が変わるものの、その他の便は通年同時刻での運航である。運賃は、定期船が片道500円、往復960円。チャーター船は片道2,000円となり、3名まで乗船可能。4名以上は1人700円が追加となる。
なお、船浮海運は民宿「ふなうき荘」を運営しており、というかふなうき荘の方がメインで、その傍ら船会社を運営しているといった方が正しいかもしれない。電話をすると「はい、ふなうき荘です」と受け応えされるが、掛け間違いではないのでご安心を。
「バスより1往復多いじゃないか」と思うが、残念なことにバスとの接続は良くない。以下、それぞれ接続を見てみよう。(接続30分前後で収まっていれば⚪︎、そうでないものは×とする)
下りはまだ良い方で、バスの第2便を除く各便が概ね30分程度で接続している。
- □下り 一般路線バス→船浮海運
- ⚪︎ (バス1便)10:23着→(船2便)10:55発
- × (バス2便)11:23着→(船3便)13:20発
- ⚪︎ (バス3便)15:23着→(船4便)15:50発
- ⚪︎ (バス4便)17:23着→(船5便)17:50発
問題は上り。まともに接続するのは、なんと最終バスしかないのだ。
- □上り 船浮海運→一般路線バス
- × (船1便)8:20着→(バス2便)10:40発
- ? (船2便)10:40着→(バス2便)1040発
- × (船2便)10:40着→(バス3便)12:40発
- × (船3便)12:55着→(バス4便)15:45発
- ⚪︎ (船4便)15:35着→(バス4便)15:45発
- ※?印は同着同発のため接続しているか不明
特に12:55着の船浮海運を振り払うように、バスが12:40に出てしまっているあたりは、なんとももどかしい。この便が船浮出発を20分繰り上げてくれれば、(バス1便)白浜10:23着→(船浮海運2便)白浜港10:55発〜船浮港11:00着…(船浮海運X便)船浮港12:30発〜白浜港12:35着→(バス3便)白浜12:40発〜…というリレーが組め、船浮滞在時間も1時間半が確保できることから、日帰り観光の定番となりそうなものなのだが…。
なぜこのような時刻設定になっているのかといえば、路線バスでなく、上原港発着高速船の西表西部地区送迎バスとの接続を主眼においているからではないかと思う。それぞれ、上り下りとも送迎バスとの接続を見てみよう。
- ■下り 安栄観光送迎バス→船浮海運
- ⚪︎ (送迎バス1便)8:10着→(船1便)8:45発
- ⚪︎ (送迎バス4便)10:50着→(船2便)10:55発
- × (送迎バス5便)12:15着→(船3便)13:20発
- ⚪︎ (送迎バス7便※15:40着→(船4便)15:50発
- ⚪︎ (送迎バス9便)17:30着→(船5便)17:50発
※7〜9月のみ運行。それ以外は送迎バス6便:14:50着からの接続となり、残念ながら×
- ■上り 船浮海運→安栄観光送迎バス
- ⚪︎ (船1便)8:20着→(送迎バス3便)8:30発
- ⚪︎ (船2便)10:40着→(送迎バス5便)11:00発
- ⚪︎ (船3便)12:55着→(送迎バス6便)13:30発
- ⚪︎ (船4便)15:35着→(送迎バス8便※)15:40発
- ⚪︎ (船5便)17:15着→(送迎バス10便)17:30発
※7〜9月のみ運行。それ以外は送迎バス9便:16:10発への接続となるが、それでも⚪︎
先程とは打って変わって、どの便も概ね30分前後での接続となっている様子がわかる。これは、石垣市内からやって来る観光客への対応はもちろん、船浮住民の石垣市内への買い出しなどに対応する方を、西表島内のみ運行する路線バスへの接続よりも、優先しているということが言えるだろう。
いくら日本最後の(実質的)三次離島とはいえ、接続がよければ石垣港から1時間半で来れてしまうのである。この辺りを勘案すると、地理的には長崎県五島あたりの小島や、奄美の離島の方がよっぽど険しく、従って観光客の到達も難しいといえる。だからこそ、キリシタンが数百年もの間潜伏できたということでもあろう。
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廃村に次ぐ廃村…離島の困難