九州・沖縄

【沖縄】西表島の秘境-船浮で見つけた”名もなき浜”──船浮海運フェリー #72

ニューふなうき号に乗って船浮へ

さて、白浜港から船浮港へは、船浮海運の高速船「ニューふなうき号」が1日5往復出ている。所要5〜10分、運賃は片道500円、往復960円。

下り豊原→白浜→船浮行きの接続は概ね30分前後とまずまずだが、上り船浮→白浜→豊原行きの接続が悪く、白浜港12:55着の高速船を振り切るように、12:40に豊原行きのバスが出て行ってしまう。詳しくは前回記事をご参照いただきたいが、これは石垣港─上原港の高速船と結節し、上原港─白浜間を結ぶ安栄観光・八重山観光フェリーによる西表西部地区送迎バスとの接続を優先しているためだ。観光客、地元客を問わず、船浮発着の人の流れとしても、西表島内というよりは、石垣港を目指す方が多くなるのは、想像に難くない。

この上り便の接続の悪さを補うため、チャーター船をお願いすることにした。船浮海運…というよりは「民宿ふなうき荘」のHPにも「定期船のお時間が合わない方はチャーター船もあります」とある通り、片道2,000円で3名まで乗船できる(それ以上は1名700円)。前日に電話したところ繋がらず、留守電に吹き込むだけとなったが、朝にもう一度掛け直したところ、今度は繋がった。

「ああ、昨日お電話いただいたS駅さんですね。内容、承知しております。いや、昨日はなんだかバタバタしておりまして、電話に気づいたのが23:30ごろだったんですね。もうお休みかと思いまして、お電話は控えておりました」

普段の23:30などまだまだ起きているが、たしかに携帯の電波すらあまり入らない西表島の夜など、することといえば読書くらいしかない。そんな時間では、僕もたしかに寝ていたかもしれない。

「12:40の白浜発のバスに乗るんでしたら、12:30ごろに船浮を出れば十分間に合いますからね。時間になりましたら、港にお越しください」

ともかく、これで一安心。滞在わずか90分だが、船浮への旅を楽しむこととしよう。

  • □下り 一般路線バス→船浮海運
  • ⚪︎ (バス1便)10:23着→(船2便)10:55発
  • × (バス2便)11:23着→(船3便)13:20発
  • ⚪︎ (バス3便)15:23着→(船4便)15:50発
  • ⚪︎ (バス4便)17:23着→(船5便)17:50発

□上り 船浮海運→一般路線バス

  • × (船1便)8:20着→(バス2便)10:40発
  • ? (船2便)10:40着→(バス2便)10:40発
  • × (船2便)10:40着→(バス3便)12:40発
  • × (船3便)12:55着→(バス4便)15:45発
  • ⚪︎ (船4便)15:35着→(バス4便)15:45発

※?印は同着同発のため接続しているか不明

白浜港10:55発の船浮港行きを待つ乗客は15名ほどいた。同じバスからの乗り継ぎもあり、やや意外にも感じた。帰りも路線バスなのだとしたら乗り継ぎは最悪だし、どうするのだろう。上原港への送迎バスに乗るのだろうか。流石にここまで来ると日本人ばかりで、外国人の姿は殆どない。

定刻の20分ほど前に、1隻のモーターボートがやってきた。舵をとるのはいかにもな船浮のアンマー。「ニューじゃじゃまる」というコミカルな船名がつけられ、とてもユーモラス。申し訳程度の屋根しかない開放的なつくりで、「まさか、アレが船浮行きの船じゃないよな」と思いながら待っていると、白浜港でなにかの荷物を受け取ったアンマーはとんぼ返りしていった。ホッとしたような、ちょっぴり残念なような。

▲スタンディングで舵を取る姿が様になっている。さすが海人

船浮集落に住まう50名は、ほぼ全員が自家用車ならぬ自家用船を所有しているというから、まさに海と共に生きる、海人うみんちゅである。ああやって船が日常の交通手段として活躍しているのだと思うと、感慨深いものがあった。

さて、そのニューじゃじゃまる号と入れ替わりに、ここらにしては大型の船がやってきた。

行きに乗った石垣港→大原港の高速船と似たつくりで、定員も恐らく同じくらい。思っていたよりも立派な高速船「ニューふなうき号」がやってきた。

船が浮桟橋へ近づくと、船長の子どもらしき少年がひょいと船から飛び移り、慣れた手つきでロープを手繰り寄せ、フェンダー(接岸時に船が岸壁に衝突しないよう噛ませるクッションの役割をするもの)の位置を合わせていく。左舷がフェンダーをクッションにして当たり、左舷前方をコンパスの針の要領で支点にし、船尾をコンパスの鉛筆の要領で浮桟橋へ近づけてゆく。親子の息のあった連携プレーで、驚くほどスーッと停止した。さすがは読んで字の如く、船浮に生きる人々、まさに海人である。

接岸が終わると、下船客が降りてきた。観光客、地元客合わせ、やはり15名ほど。下船が終わると、いよいよ乗船。さすがに現金を扱う仕事は船長の仕事らしく、真っ黒に日焼けした船長が乗船口へズズイと出てきた。

「はい、往復960円ね」「あの、帰りはチャーターをお願いしてあるんですが」「あ?帰りはチャーターだ?そんじゃあ、片道500円だな。はい、ちょうど。次のひとー」

さすがは海人らしく、ぶっきらぼうな接客である。でもまあ、慇懃無礼になるよりはよっぽどいい。海の男らしいじゃないか。

(次ページ)
知られざる旧網取集落と西表炭鉱

1 2 3 4