九州・沖縄

【沖縄】総論・沖縄のバス(2) 沖縄県庁のバス再編案解説とS駅私案 #11

バスモノ乗り継ぎを含めた制度設計を

提案の骨子は以下の3つだ。

  1. バス(直通)・バス⇔バス・バス⇔モノレールのゾーン運賃化
  2. 赤嶺駅、おもろまち駅、てだこ浦西駅の交通結節点整備
  3. 市外線の牧志経由をおもろまち駅折り返しに短縮
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①バス(直通)・バス⇔バス・バス⇔モノレールのゾーン運賃化

ゾーン運賃とは、A⇔B間の移動において、直通バスでも、バス⇔バス乗継でも、バス⇔モノレール乗継でも運賃が同額となる制度のこと。こうすることで、時間がかかってもいいから乗り換えなしで行きたい人(高齢者など)、急行バスと支線バスを乗り継ぐ人、渋滞を避ける為バスとモノレールを乗り継ぐ人など、様々なニーズに、様々なチャンネルで応えられるようになる。西ヨーロッパの都市では「運輸連合」を交通事業者間で組織し、協定を結ぶことで運賃収入を各事業者へ按分する仕組みを整えているところが多い。

f:id:stationoffice:20180511191151j:imagef:id:stationoffice:20180511191223j:imageドイツ・デュッセルドルフのUバーン。市内では地下鉄、郊外では路面電車、田舎では普通鉄道と様々な区間を直通運転する不思議な乗り物。モードがコロコロ変わるが、同一地点間の移動であればゾーン運賃制であるため、電車でもバスでも路面電車でも乗り換えても直通でも運賃は同額だ

これを那覇市でも応用すべきだと考える。それに際し、重要になるのがICカードの導入である。OKICAは既にバス大手4社とモノレールが導入を済ませており、連絡定期券の発行など共通化も進められている。現金でのゾーン運賃化は運賃収受の手間がかかりすぎるので取り扱わないにしても、OKICA利用時に限れば技術的にはそこまで難しくないはず。

後は運賃収入の按分方法であるが、現行制度上のバス・モノレール乗継に比べると減収になってしまうのが課題だ。

しかしながら、モノレールには隣駅まで150円となる「おとなりきっぷ」が設定されている。このおとなりきっぷは2016年の値上げまでは100円であったため、市内短距離利用の掘り起こしに大きく寄与していた。このおとなりきっぷ制度を踏まえ、バス・モノレール乗継利用に対してはモノレール会社へ100円を按分すれば十分だと思う。以下の例をご覧いただきたい。

例:牧港→安里

●バスのみ・・・450円・29分

●バス・モノレール乗継(おもろまち経由)・・バス380円+モノレール150円(おとなりきっぷ)=530円・28分(乗継3分)

バスとモノレールを乗り継いでも、バスのみで行っても所要時間は互角な上、おとなりきっぷが100円であれば30円差にまで縮まる。バスの定時制の無さや国際通りの混雑を思えば、利用者の掘り起しに繋がるのは確実だ。加えて、大手バス4社の運賃は同一区間であればほぼ揃えられている上に鉄道(モノレール)会社は1社のみであることから、運輸連合結成による調整は本土よりもやりやすいはず。ソーン運賃化は、沖縄の公共交通復権のカギになると思う。

②赤嶺駅、おもろまち駅、てだこ浦西駅の交通結節点整備

上記のゾーン運賃化の効果を高めるにあたっては、もちろんバスモノ乗継のシームレス化が不可欠になるのは言うまでもない。

特に、おもろまち駅はバスモノ乗継を見据えた駅前広場の整備がなされているが、天久・安謝方面への出発・進入にしか対応しておらず、駅前広場を通り抜けることができないのはいかにも使い勝手が悪い。先般紹介した【7】【8】首里城下町線などは、おもろまち駅前広場発着にするために、逆「コ」の字を描くような大回りになっているのだ。この駅前広場を国道330号へ貫通させ、おもろまち駅折り返し便も那覇BT発着便もおもろまち駅を経由させるようにすれば、現状は数少ないおもろまち駅行きを待つしかないのと比べて大幅な利便性向上になる。駅を経由するバスの本数を増やし、エスカレーターや雨に濡れない上屋の整備を通し、シームレスな乗り継ぎ環境の整備を目指してほしい。

併せて、日本最南端の駅・赤嶺駅の広場を本島南部・糸満方面への交通結節点として、てだこ浦西駅をコザ方面最寄駅としての整備を進めてほしい。那覇都心部へ直行するバスを減らし、乗継メインとなれば、公共交通全体の速達性・定時性の向上に繋がるはずだ。

③市外線の牧志経由をおもろまち駅折り返しに短縮

県のプランで国道58号経由の急行バスを定時性の高い久茂地経由に統一することになっており、これには自分も賛成する。しかし、各停バスは牧志経由で残ることになっている。これをもう一歩踏み込み、①②を踏まえて市外線の牧志経由はおもろまち駅折り返しに短縮してよいと考える。都心直行は基幹バス(急行)に任せ、牧志近辺への需要はおもろまち乗継のモノレールにリレーするといったイメージだ。それでもなお残る国際通りのバス需要に対してはおもろまち駅等での市内線への乗り継ぎで十分カバーできる。定時性を損なう上、乗客が多いわけではない牧志経由の効率化を通し、余力を振り向ける必要がある。

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「沖縄のバスが日本のバスをリードする」

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