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【佐賀】【長崎】長崎新幹線に揺れる西への鉄路――JR佐世保線 #22

新幹線への期待と不安…武雄温泉駅

博多から44分の佐賀で自由席からは多くの下車があり、指定席からも初めて下車があった。ただ、指定席はやはり自由席よりも長距離志向が高く、多くは博多から動かない。その次の肥前山口では長崎本線から佐世保線が分岐して列車がばらけるため、博多から続いた複線区間もここで尽きる。接続列車がないため下車は僅か。しかしながら長崎発上り特急かもめ30号とは時刻表上で1分接続。長崎・諫早←→早岐・佐世保は大村線が結んでいるとはいえ、武雄温泉・諫早・肥前鹿島など、大村線ではカバーしきれない動きもあるだろう。しかしホームを跨ぐ1分接続ではほぼ乗り換えは不可能で、肥前山口で特急同士を乗り継ぐ利用などは殆どないのであろう。ここまで来て博多からようやく1時間である。

佐世保線に入って最初の停車駅、武雄温泉には博多から1時間10分、17:40に到着。ここでは先行して整備が進む長崎新幹線の暫定始発駅として整備が進められており、すでに在来線の高架化は完了。2022年の開通に向けて新幹線の高架駅や高架線も徐々に建ち始めており、遠い未来に思われた新幹線が現実のものになってきている。

f:id:stationoffice:20180725192947j:image在来線の高架化は2009年に完成
f:id:stationoffice:20180725192936j:image高架橋が建ち始めた
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f:id:stationoffice:20180725192943j:image新幹線のトンネルが口を開けている

長崎新幹線には批判的な意見も多い。武雄温泉─長崎間のみの暫定開業では、現状の最速かもめとの短縮がたった26分でしかない上、武雄温泉駅での乗り換えを強いられる。このため、新鳥栖─武雄温泉間の在来線利用をやめてフル規格新幹線に格上げさせようという声も主に長崎県から根強いが、長崎県以上に時短効果を享受できない上に運賃値上げが避けられない佐賀県が慎重な姿勢を崩していない。当然のことだとは思う。新鳥栖─武雄温泉間のフル規格化の見通しが立たない中で、この区間を往復するだけのフル規格新幹線に果たしてどれだけの意義があるだろうか。フル規格新幹線は、やはり山陽新幹線に直通してこそ意味があるのではないか。

しかし、肥前山口─肥前鹿島─諫早間は急カーブが連続する単線の隘路であり、有明海に沿って走るために強風や大雨に弱い。この区間の改良は喫緊の課題であるのもまた事実ではある。加えて博多〜鳥栖間は先述したように特急が普通に足を遮られる高密度運転でもあり、これを一挙に解決するのが新幹線であったはずだ。

そうであれば、武雄温泉─長崎間は新幹線ではなく、長崎本線の高速新線として開通させるべきではないだろうか。新幹線の260km/h運転は無理にしても160km/h運転は実用化されているし、武雄温泉の乗り換えも必要ないため乗り換えに要する3分をアドバンテージにできるので、新幹線との所要時間の差はそこまで開かないだろう。当面の間は長崎本線高速新線として運用し、新鳥栖─武雄温泉間のフル規格化の目処がたってから新幹線仕様に改修すればよい。

加えて言えば、長崎本線高速新線として運用すれば諫早─長崎間の整備も暫定開業の段階では必要なくなる。この区間の大部分を占める喜々津(諫早から2つ目)─浦上(長崎の1つ前)間には国鉄時代に既に高速新線が整備されており、特急はこの区間のほぼ全てで130km/hの最高速度を維持できるため、特急は途中浦上駅に停車してなお僅か16分で結んでいる。新幹線は浦上駅に停車しない予定であるが、ほとんどその分の短縮効果しか出ない。浦上駅は宅地化が進み人口が増加傾向にある長崎市北部の玄関口として機能しており、全ての特急が停車し、路面電車やバスへの乗り継ぎも便利なので、浦上駅に新幹線が停車しないことに不満を抱く長崎市民は多かろう。浦上駅利用者が遠回りになる長崎駅まで出なければならなくなるとすると、新幹線の時短効果も彼らには削がれてしまう。

武雄温泉─諫早間を長崎本線高速新線として運用するのであれば、長崎市街地を通過するために建設費も膨らむ諫早─長崎間の整備は不要だろう。この区間の整備は、やはりフル規格で新鳥栖まで繋がってこそ意味を持つ。

地域の期待を背負いながらも、前途洋々とは言い難いスタートになりそうな長崎新幹線。長崎本線と同じように隘路だった熊本─鹿児島間の交流を九州新幹線が強化させ交流人口を増やし、本来の地域創生に寄与したような変革を起こせるだろうか。今の長崎新幹線にはまだ、それが見えない。

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「早岐駅のスイッチバックと”或る列車”」

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