大混雑の鹿児島本線快速
ひと通りの九州土産をキャナルで買い込み、JR博多駅へ歩いていった。道のりははかた駅前通りを経由してまっすぐ徒歩10分ながら、辺りは中小の雑居ビルが立ち並ぶビジネス街で、新幹線の駅に近いことから金融機関の支店やビジネスホテルが目立つ。キャナルの客層には縁がないものばかりで、キャナルが”ぽっと出”であることを強く認識させられる。言い換えれば、休日ともなれば無人であったはかた駅前通りに、キャナルが買い物客を呼び寄せたとも言えるのだが、それによる街の変化までには至っていないようだ。
博多駅は人の渦だった。博多駅自体も2011年の九州新幹線全通を機に「JR博多シティ」として全面リニューアルを果たし、九州初の阪急百貨店や東急ハンズが強力に集客しているほか、日本郵政グループによるKITTE博多とも繋がり、天神地区に対抗する一大商業地区を形成するに至っている。そのため、九州新幹線開通以前は通過点・ビジネス拠点の性格が強かった博多駅にも、かなり彩りが出てきたように思う。
博多18:24発快速門司港行きに乗るべく発車5分前のホームに上がると、既に行列が広いホームの反対側にまで達していた。1ドアあたり30〜50人は並んでいるだろうか。ホームが多数あるので先発・次発のような乗車区分こそないが、それでも東京圏顔負けの整然とした整列乗車である。
博多18:24発快速門司港行き(荒木17:34→博多18:24→小倉19:36→門司港20:00)は、817系3両×3本の9両編成で18:22に到着。かつて近郊電車の主役だった811系や813系は転換クロスシート主体だったが、この817系はオールロングシート。着席時の快適性を若干犠牲にしてでも混雑緩和に重点を置いており、それが必要な状況であるということも理解できた。
また、着席時の快適性を求める向きは特急に誘導したということでもある。この時間帯、小倉方面へは快速も特急も約20分間隔であり、運転間隔は互角である。快速は小倉まで1時間10〜20分を要するが、特急ならば40〜50分。博多近郊を主眼に置いた快速と、対北九州を主眼に置いた特急とで役割分担をしているのだろう。
この18:24発の快速は博多から北九州市内の八幡まで特急に抜かれず、赤間・折尾・黒崎といった主要な特急停車駅まで先着という、毎時3本あるうち最も先着区間が長い快速だった。他2本はというと、18:04発区間快速(福間から各駅停車)は赤間、18:47発快速は古賀と、博多圏から抜け出す前に特急待避がある。他を見ていないのでわからないが、ともかく混雑はかなりのものだった。
地下鉄の6両編成に比べ、列車頻度が下がるが故の9両編成という長い編成の満員電車は、やはりボリュームが段違いだ。夕ラッシュは9両編成が最長だが、朝は名古屋圏にすらない12両編成の快速があるというから、その混雑の激しさが窺い知れよう。
到着した快速からはパラパラと降車があるが、降車が終わった途端、待ち構えていた乗客の長い列を飲み込んでいく。地方にありがちな、ドア付近ばかり混雑して車内中央が空いているということもなく、むしろ先頭に並んでいた乗客が率先して奥へ奥へと詰めていく。後からどんどん乗ってくるということが体で分かっているのだろう。発車間際に乗り込む乗客はドアの上に手をかけて自分の体を押し込んで乗るレベルで、まるで中央線の新宿駅さながらの乗車シーンである。
それでも2分停車の間になんとか乗り込み、18:24の定刻に発車。ゆらゆらとポイントを渡り、都市高速を潜ってスピードを上げる。博多から3分、JRにおいては福岡県庁最寄りとなる吉塚でもさらに帰宅客を乗せ、車内の混雑は更に激しくなる。九州大学箱崎キャンパスに近く、大学生の姿が見える箱崎を高速で通過し、多々良川を渡る。一応福岡都心と言えるのは箱崎までで、段々と住宅街になっていく。
博多から8分で千早。さいたま新都心のように旧国鉄香椎操車場(貨物ヤード)を再開発した地で、2003年の駅開業以来高層マンションの建設ラッシュが続く。乗降客数も約24,000人(2017年度)とJR九州11位を記録しており、これは長崎(約21,000人)や久留米(約16,000人)、また同じ福岡近郊で伸びが著しい筑肥線の九大学研都市(約17,000人)や筑前前原(約15,000人)より多い。
従って千早での下車がそこそこあり、乗車もあるが差し引き若干混雑がやわらいだ。自分も千早で降り、西鉄貝塚線へ乗り換える。それでも千早からの乗客はドアの上に手をかけて乗る始末で、9両編成にも関わらず相当な混雑であることに変わりはなかった。
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「独占区間故の混雑なのか」