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【福岡】キャナル新駅が変える福岡都心 – 福岡市地下鉄七隈線(延伸区間)・JR鹿児島本線(博多-千早) #29

七隈線”おとなりきっぷ”が福岡を変える

延伸区間唯一の途中駅となる”キャナル新駅”は台風の目となるはずだ。現状でも高い集客力を持つキャナルが”地下鉄直結”となれば、商圏がさらに拡大し、七隈線だけでなく地下鉄全線と相乗効果を上げるようになる。また、博多駅⇔キャナル、天神南⇔キャナルといった短区間利用の掘り起こしも大いに期待でき、現状はほぼ沿線住民の利用に限られる七隈線が、福岡都心の域内移動にも利用できるようになるのは、大量輸送機関たる地下鉄の面目躍如となる。

そこで、復活を期待したいのが「おとなりきっぷ」である。七隈線開通すぐの2006年からスタートし、隣駅まで100円(ICカード利用含む)としたものだが、「所期の目的であった増客を果たした」として2016年に廃止、代替となるポイント加算に移行されてしまった。

当時のPR。100円を強調するあたり西鉄バスへの対抗心が透ける

明らかに西鉄バスの福岡都心100円(1999年開始)を意識した施策であったが、どうも長続きしなかった。地下鉄1駅のような短距離利用であれば、歩道からすぐ乗れるバスの方がラクだったということもあるだろう。

しかし、「博多駅⇔キャナル」「天神(天神南)⇔キャナル」といった短距離利用の掘り起こしに際して、おとなりきっぷの復活は七隈線の利用促進に間違いなくプラスに作用する。歩いて10〜15分だが地下鉄なら僅か2分、博多駅でのJR乗り換えも便利とあらば、初乗り200円だと躊躇しても100円ならば乗ってみよう、という流れを生み出せる。この点、博多駅前の乗り場が非常にわかりにくい西鉄バスに対して、「七隈線のりば」という確固たるランドマークを持つ七隈線はバスに対しても非常に有利になる。

ただ単に造っても利用されなければ意味がないし、税金を投入したインフラが放置されるという最悪の事態を招いてしまう。歩いても行ける距離を利用してもらうには、ハードの整備ももちろんながら、効果的な運賃制度を構築するというソフトの拡充も怠ってはならない。おとなりきっぷの復活は、空港線から外れた福岡都心の南側を活性化させるという意味合いも持たせることができる。

博多駅のイメージ。空港線・JR乗り換えは150〜180mと、天神南の550mに比べ大幅に短縮される。JR乗り換えも空港線に劣らず、大いに利用を見込めるだろう

単なる地下鉄の延伸でなく、”線”の動きに留まっていた福岡都心の人の流れが、”面”的に拡大するといっても過言ではない七隈線の延伸。天神南─(七隈線)─博多─(空港線)─天神の間が実質的な環状線となり、この”福岡環状線”に囲まれた範囲は高度な都市機能の集積が図られることになろう。地下鉄のみで環状区間が形成されるのは、東京、名古屋、大阪以外では初となるのだ。

地下鉄路線図を再掲。七隈線天神南〜博多〜空港線天神間が環状となるのがわかる。環状線の内側はどこの駅へも近くなり、高度利用が進みやすくなる

西鉄バスとの調整は今後とも課題になるが、西鉄には具体化しないマリンメッセ福岡、および福岡タワー・ヤフオクドーム等のウォーターフロント地区への交通整備において頑張ってもらばよいと思う。現状は天神一帯にバスが溢れている状況であり、そのバスも渋滞に阻まれて遅く、時間通りに来ない。都心部のバス需要を地下鉄へ振り向け、その余力を開発が進むウォーターフロントのバスの充実に振り向けてもらえば、両者の棲み分けに繋がるだろう。

キャナルシティ
キャナルシティ

駅から離れたキャナルの賑わいと、西鉄バスの混雑ぶりからは、七隈線を待ち望む街の声が透けて聞こえるかのようだった。

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「大混雑の鹿児島本線快速」

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