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【福岡】時代に翻弄され続けたバスを補完する鉄道 – 西鉄貝塚線 #30

鉄道の借りをバスで返す!西鉄の意地

西鉄による福岡~北九州の鉄道はついに実現しなかったが、その代わりに西鉄バスによる高速バス、福岡~北九州線(西鉄天神高速バスターミナル~JR小倉駅前・砂津)が1980年に運行を開始した。この前年、1979年には九州自動車道が福岡~北九州間で開通しており、追って福岡都市高速や北九州都市高速も充実してゆく。西鉄高速バスの発展は、高速道路網の拡充と二人三脚であった。

そして現在、福岡~北九州間の輸送は、安くて(往復きっぷ・片道あたり1,030円)本数が多いが(10~20分間隔)時間がかかる(約90分)西鉄バス、そこそこ安く(2枚きっぷ・片道あたり1,440円)そこそこ本数があり(30分間隔)そこそこ速い(約50分)JR特急、高いが(2,110円)本数が多く(10-20分間隔)とても速い(約15分)山陽新幹線が分担し合う状況となっている。1980年まではほぼ国鉄の独占であったところ、現在では西鉄がその一角を担うまでにシェアを拡大したというわけだ。

西鉄バスの広告本数の多さと運賃の安さをアピールする西鉄バスの広告。定期券には福岡・北九州市内路線バス無料というサービスぶり

現在は1社単独運行にして1日124往復(平日)と、日本の高速バスでは桁違いの運行本数を誇るまでに成長した。日本のバス業界の中では、一般路線バスも含めた輸送人員で、西鉄バスが日本最多となっている。

西鉄がなぜこれほどまでに高速バスに注力したかといえば、福北線の挫折をはじめ、天神大牟田線の熊本延伸(大熊鉄道・だいゆう─)の挫折など、西鉄による鉄道ネットワークの拡大が悉く国鉄→JRによって阻害されてきたという、いわば冷や飯を食わされ続けてきた苦い経験によるものではないかと思う。

その反骨ゆえなのか、今や西鉄バスは九州一円どころか、福岡~東京・新宿間「はかた号」をはじめ、超広域のネットワークを広げている。2011年の九州新幹線全線開通によって博多~熊本のJRは値上げとなったためにJR特急の利用者が完全に新幹線に転移せず、低価格志向の利用者を寧ろ高速バスに取り込み、福岡~熊本間における高速バスのシェアが拡大した…などというエピソードは、西鉄のJRへの対抗心がいかに強いものであるかを物語っていよう。鉄道の借りを、高速バスで返したというところだ。

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「”バスを補完する鉄道”貝塚線」

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