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【福岡】時代に翻弄され続けたバスを補完する鉄道 – 西鉄貝塚線 #30

“バスを補完する鉄道”貝塚線

福北線へ発展する機会を失い、元々の区間さえもほぼ半分が廃止されてしまった現在の貝塚線に残された役目は「西鉄バスの補完」。「西日本鉄道」という社名とは裏腹な役目である。

千早、香椎、和白、新宮などといった沿線の各駅からは、博多駅や天神へ直行する西鉄バスが数多く発着する。例えば、和白駅近くの「和白」バス停からは都市高速経由の天神行きが10〜20分間隔で出ており、天神までは25分、運賃は520円。対して、貝塚での乗り換えが必要な西鉄貝塚線+地下鉄箱崎線は35分かかり、バスの方が10分も早い。ただ、電車ならば西鉄・地下鉄の乗り継ぎ割引が適用されるため、運賃は470円とバスよりも50円安い。こうした状況とあっては、天神直行のバスを選ぶ人も多いであろう。

しかし、各地からおびただしい数のバスが集まる天神一帯は渋滞に見舞われることも多く、特に朝夕のラッシュ時は定時性が覚束ない。対して、電車であればまだ時間は読める。こうしたことから、バスで運びきれない乗客を地下鉄にリレーする役割としての鉄道という、完全にバスの裏方としての仕事に徹しているのが、今の貝塚線に与えられた役目なのだ。

バス会社と鉄道会社が違っていれば競合も起こっただろうが、どちらも同じ西鉄がやっているからこその分担とも思う。西鉄にとって、貝塚までの電車に230円しか払ってくれない乗客と、天神へのバスに520円を払ってくれる乗客のどちらがありがたいかを考えれば、その結論は自明である。

しかしながら、今の貝塚線は三大都市圏以外ではワーストとなる混雑率150%を記録するほど混雑するようになってしまった。これは、部分廃止前に比べて千早・香椎の人口が増加していることに加え、博多湾の人工島「アイランドシティ」の玄関口が千早であり、アイランドシティ発のバスから貝塚線、そして地下鉄に乗り継ぐ流れも重なっていることが挙げられる。また、部分廃止前のラッシュ時は貝塚─三苫間6〜7分間隔の高頻度運転であったのに対し、現在はラッシュ時でも10分間隔でしか走らないことが影響している。利用が増えているにもかかわらず古い車両を放置し、部分廃止前の水準にすら増発もされないのは、幾ら何でも利用者軽視と言われても仕方ないのではないかと思う。

次回はそんな貝塚線と地下鉄箱崎線に乗り、現在の貝塚線が置かれた状況と今後の展望について考えてみたい。

(つづく)

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