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【福岡】残された11.0kmの鉄路が向かう先 – 西鉄貝塚線(2) #31

代替バスと廃線区間のその後

かつて西鉄新宮以遠は日中でも13分間隔で電車が走っていたが、代替となる西鉄バス【5】津屋崎新宮線(西鉄新宮駅〜津屋崎橋)の運転は概ね30分間隔。この代替バスも線路跡を忠実に辿るのではなく、旧西鉄福間駅は経由せず、JR福間駅を経由して津屋崎へ向かうように経路が変更された。このため、鉄道時代は西鉄新宮〜津屋崎間を22分で結んでいたが、代替バスは40分となり、大幅に時間がかかるようになった。

とはいえ、現状で津屋崎から西鉄新宮に出て貝塚線に乗り継ぐ乗客がそんなに多いとは思えず、天神にしろ博多駅にしろ、多くはJR福間駅から鹿児島本線に乗るだろう。そう思えば、この代替バスは津屋崎〜JR福間駅・JR福間駅〜西鉄新宮駅の役割の違う2系統をまとめただけに過ぎず、それに宮地岳線代替の機能を兼ねさせているだけとも言える。

このようなケースでは、補助金等の兼ね合いで鉄道ルートからの現状に即した逸脱(この場合はJR福間駅に立ち寄るルートへの変更)が許されず、あくまで鉄道代替に拘ってルートが硬直化し、住民の利便性が置き去りになるといった例がある。しかし、宮地岳線の場合は鉄道も代替バスも同じ西鉄による運営のためか、このあたりの扱いはかなり柔軟になされている。

このため、JRからやや離れている津屋崎・宮地岳の両駅からはJR福間駅へのバスが充実し、それ以外の各駅は鹿児島本線の代替駅が開業したことで、かなりの面でフォローがなされたと言えるのは、評価すべき点であろう。時代遅れと化した西鉄がいつまでも残るより、体質改善が進むJRへ移行してくれた方が良い、という住民も多かったはずだ。

しかしながら、廃線区間にあたる糟屋郡新宮町、古賀市、福津市はいずれも人口が増加し続けている地域であり、このような地域と福岡市内を結ぶ鉄道でありながら宮地岳線が廃線になってしまったというのは、やはり社会的な損失と言わざるを得ない。大都市圏内に含まれ、日中でも毎時4〜5本電車が走っていたところがいきなり廃線になるというのは、全国的にも珍しい事例と言えよう。

特に古賀市はJR九州発足前後、鹿児島本線のテコ入れが進み始めたあたりからの人口増加が著しく、JR九州発足前の1985年に約41,000人だった人口が、2015年には約58,000人まで増加している。この間の1997年には人口増加に伴い、糟屋郡古賀町が単独市制施行を果たしている。寧ろ平成の大合併では動きがなく、この時期の単独市制施行は古賀市の伸びを象徴する出来事であり、特筆すべき動きと言える。

福津市も1985年に47,000人だったのが2015年に58,000人に増加。こちらも市制施行を経ているが、これは平成の大合併に伴うもので、2005年に宗像郡福間町と宗像郡津屋崎町が合併して福津市となった。2007年の宮地岳線廃線後、2010→2015年の5年で3,000人の増加を見ており、宮地岳線廃線が人口増の流れに何ら影響を及ぼさなかったのは、廃線後に人口が増えていることからも明らかである。

ただ、鹿児島本線は前回紹介したように混雑が激しい。特急、貨物列車と線路を共用する関係上、快速・普通の増発が難しいという側面もあるのだが、9〜12両編成の快速が走っていながら、それでも激しい混雑に見舞われている。隣を走る宮地岳線が廃線になったことでその分の乗客を受け入れ、かつ沿線の人口が増え続けているのだから、混雑しないわけがないのだ。

そして、その貝塚線も最近では利用者が増加傾向にある。1992年に貝塚─津屋崎間全線で33,000人の利用者数を記録したのをピークに、部分廃止前の2006年には19,000人まで減少。部分廃止後の2007年には16,000人となったが(つまり全線の半分近くが廃線になっても16%減にしかならなかった)、2015年には20,000人にまで増加し、部分廃止前の水準以上になっている。

福岡市の統計より。箱崎線は開通以来ほぼ一貫して利用者が増加傾向にある。貝塚線利用者も部分廃止後の2007年からほぼ一貫して増加傾向にあり、既に部分廃止前の利用者数を上回っている。また、その中でも貝塚〜西鉄香椎間の利用増が著しいことがわかる。

この結果、2017年度の混雑率は152%(名島→貝塚)と、近畿圏(阪急神戸線:147% 神崎川→十三)や中京圏(名鉄名古屋本線:143% 神宮前→金山・栄生→名鉄名古屋)を抑え、首都圏以外ではワースト1の混雑率となってしまっているのだ。ちなみに前年の2016年度は148%であり、1年で4%も悪化しているというのも、千早をはじめとした沿線の発展ぶりを窺わせる。加えて、部分廃止前よりも多くの乗客が、部分廃止で短くなった路線に乗っているのだから、貝塚口の密度は相当なものになっているだろう。

しかし、この混雑は部分廃止時に行われた6〜7→10分間隔への減便と、3→2両編成への減車が主因といえ、もはや部分廃止前よりも乗客が多い現在においては、混雑を放置していると言わざるを得ない。仮に部分廃止前のダイヤ・編成に戻したとすれば、少なくとも他の福岡近郊路線(西鉄天神大牟田線 西鉄平尾→薬院:136%、地下鉄空港線 大濠公園→赤坂:136%)と同等かそれ以下に落ち着く程度ではある。

現状では香椎花園前駅の交換設備が使用停止となっているため、ここがネックとなって10分間隔以上への増発ができない。しかし、関西圏・中京圏をも凌ぐ152%の混雑率を放置していいとは思えない。

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「西鉄香椎までの暫定直通をすべきでは」

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