東北・北海道

【栃木】快速を継いで会津へリレー:北関東を駆ける東武日光線急行──東武日光線 #64

分岐駅・下今市

8:07、下今市着。南栗橋から1時間あまりで6050系の旅は終わり、ここからは先述の通り、特急リバティ会津101号の特急料金不要区間に便乗させてもらう形になる。

▲下今市を出る急行東武日光行き。快速と違い下今市での分割・併合は行わない

以前の快速であれば、後ろ2両の東武日光行きと、前4両の会津田島行きの分割のため2〜3分の停車時間が取られていたが、急行は4両とも東武日光へ行くため、1分停車でさっさと発車してゆく。下今市での分割・併合は儀式のようなものであっただけに、あっけなく発車してゆく急行に、変化を感じずにはおれなかった。なお、一般列車の下今市分割・併合は全廃され、すべて下今市で接続列車へ乗り換えとなった。

▲東武日光駅でたむろする下今市─東武日光間の区間列車たち。

東武下今市駅とJR日光線今市駅とは徒歩10分程度で、新鹿沼と違ってこちらは乗り換え検索でもヒットするレベル。東京─今市間はIC2,592円なので、青春18きっぷ1回分の値段に相当する2,370円を上回っているため、あまり目立たないが今市乗り換えで会津線方面へ向かうのは、18きっぷ利用の際も有効である。ただ、下今市─西若松間は3,250円かかる(西若松─会津若松間はJRなので18きっぷが有効)ため、単に東京から会津若松へ向かうのであれば、郡山経由の磐越西線で向かえば18きっぷ1枚で行けるというのは、言うまでもない。

下今市は東武鉄道の新名物となった「SL大樹」の始発駅でもある。2017年に下今市─鬼怒川温泉間で運行を開始したのに合わせ、下今市駅には「下今市機関区」が設けられ、SLの機関庫・転車台に加え、客車の留置線が設けられた。下今市機関区は駅からつながる見学スペースがあり、間近でSLの機回しや方転作業を見学できるようになっている。

また、駅舎自体もレトロ調に改装されたが、これがまた鉄道ファン好みの逸品。1929年日光線開通当時の電車急行をアピールするポスターに、漢数字書きの時刻表など、東武鉄道の歴史を感じさせるものになっているのだ。

急行東武日光行きから特急リバティ会津への乗り継ぎではそこまでじっくり見物している時間はないが、それでもレトロ調に交換された駅名標や番線表示などに、SLが発着する駅の雰囲気を感じ取ることはできるだろう。

それにしても、浅草や東京スカイツリーを見物する外国人観光客を特急列車で日光・鬼怒川温泉へと誘い、オプショナルツアーとしてSL大樹の旅を用意しておき、さらに日本の原風景が残る会津へと送り出してゆくという、東武鉄道の周到な観光戦略には感服させられる。浅草─とうきょうスカイツリーの1駅から誘い出し、その隙に日光・鬼怒川のPRを乗客に見せつける。そうして乗客の興味を引き、東武鉄道の奥深くへと導くという寸法だ。東武鉄道の広大なネットワークと、1929年の日光線開通以来積み上げてきたノウハウが、90年の時を経て、満開を迎えているといってもいいだろう。

待つこと4分、8:11に特急リバティ会津101号がやってきた。4分停車のうちに、後ろ3両のリバティけごん1号と分割。この分割にしても、かつての快速の働きをなぞっていると言えるだろう。6両固定編成の特急スペーシアと到着時には、スペーシアから連絡列車への乗り換えの波ができるのが常であったが、リバティは其々が目的地へ直行するため、乗り換えの波は殆どなかった。急行東武日光行きから特急リバティ会津101号へ乗り継いだのは、約30名ほど。思っていたより少なく、やはり多くは特急へと移行しているのだろう。

そうこうしているうち、4分停車の時間はあっという間に過ぎた。8:15に前3両のリバティ会津101号が先発し、1分後の8:16に後ろ3両のリバティけごん1号が追って出発してゆく。

***

次回は、東武鉄道自慢の新型特急・リバティ会津101号に揺られ、いよいよ会津線へ。

(つづく)

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