東北・北海道

【福島】芦ノ牧温泉へ、大内宿へ…日本の原風景を求めて──会津鉄道会津線 #66

湯野上温泉駅から大内宿へ

さて、南会津観光の主役といえば、今は何と言っても大内宿であろう。

大内宿とは、かつての会津西街道(下野しもつけ街道)の宿場町である。会津藩の参勤交代にも用いられた、歴史あるものだ。しかし、その価値が見出されたのは比較的近年のことであり、それまでは茅葺き屋根の建物をトタン葺きに変えたり、集落の中央を貫く道路が舗装されたりと、その歴史的景観が失われゆくところであった。

その大内宿への玄関口となるのは、会津線の湯野上温泉駅。浅草からだと、会津田島で会津若松行きに乗り換え、会津田島から8駅、約30分。塔のへつりからは1駅、5分。湯野上温泉駅から大内宿までは5.5km離れている上にかなりの上り坂となるため、バスかタクシーでの移動となる。

しかしながら、まだまだ公共交通機関によるアクセスはメジャーではないらしく、バスの運行は安定していない。

最も本数が多いのは広田タクシーが4〜11月に運行する「猿游号」で、湯野上温泉駅発9:00〜15:50まで1日8往復・1日フリー1,000円での運行。列車との接続も概ね整っており、猿游号が走っているのであれば一番便利だろう。会津鉄道と猿游号を組み合わせた「共通割引きっぷ」も用意されており、西若松―湯野上温泉―会津田島間から設定されている。

4〜11月の土休日にはこれに加え、会津バスによる白河駅・新白河駅─湯野上温泉駅─大内宿を結ぶ観光路線バスが1日3往復(12:15・13:40・14:45発・運賃400円)が加わり、都合11往復となる。なお、会津バスは一般路線バスも通年3往復・運賃430円で走るものの、下り大内上行きの始発は15:30、かつ土休日運休のため、おおよそ観光客向けの設定とは言えない。

このため、平日の観光需要はほぼ広田タクシーの猿游号に依存している状況である。また、その猿游号にしても12〜3月の冬季は基本的に運休のため、冬季の平日に大内宿へ向かう公共交通機関は15:30始発の会津バスしかなく、冬場の観光は実質的にタクシーしか機能していない。

【湯野上温泉駅→大内宿 バス時刻表】

  • 09│00広
  • 10│00広 40広
  • 11│30広
  • 12│15会◆ 50広
  • 13│35広 40会◆
  • 14│30広[下] 45会◆
  • 15│30会◇ 50広
  • 16│55会◇
  • 17│
  • 18│45会◇

(凡例) 広:猿游号(広田タクシー、4〜11月は毎日運行『大内宿入口』行き) 会:会津バス◆:土休日運行、観光路線バス(『大内宿』行き)◇:平日運行、一般路線バス(『大内上』行き)

【大内宿→湯野上温泉駅 バス時刻表】

  • 07│10会◇(下郷中学校)
  • 08│
  • 09│20広
  • 10│20広
  • 11│00広 50広
  • 12│00会◆(塔のへつり駅)
  • 13│10広 55広
  • 14│00会◆(白河駅) 40会◆(塔のへつり駅)
  • 15│00広[下] 50会◇(会津下郷駅)
  • 16│10広
  • 17│10会◇(新湯入口)
  • 18│
  • 19│00会◇(新湯入口)

(凡例)広:猿游号(広田タクシー、4〜11月は毎日運行) 広[下]:猿游号(下郷町周遊・大内宿食の館前14:55始発・塔のへつり駅経由) 会:会津バス ◆:土休日運行、観光路線バス ◇:平日運行、一般路線バス

僕が訪れた3月の3連休(春分の日)の頃は、まだ猿游号が冬季運休の期間だった上、休日とあっては15:30の会津バス一般路線も運休であり、タクシーしか訪れる術がなかった。湯野上温泉駅前には「湯野上タクシー」の事務所があり、声をかければ随時出発してくれるものの、待機しているタクシーは3台程度しかないため、繁忙期は出払ってしまうこともある。どうしてもタクシーに頼るほかないときは予約しておくのが賢明だろう。

▲茅葺屋根が印象的な湯野上温泉駅。となりに広々とした足湯も隣接しており、冬の列車待ちでも寒くない

湯野上温泉10:55着の会津田島行きで到着し、この時は4名で訪れていたため、タクシー代2,000円を割り勘。自分達以外にも2組が湯野上タクシーを利用したため、待機していたタクシーはやはり出払ってしまった。駅を出てほどなく国道121号から分岐し、県道329号「大内宿こぶしライン」へと進んでゆく。

・・・しかし、県道329号に入ってしばらく進むと、ご覧の通りの渋滞となった。マイカーの駐車場待ちが県道にまで延々と伸びてしまっており、しかも午前中とあってはこれからお昼時を迎えるので駐車場は満車、それも出庫するクルマがほぼゼロのため、渋滞は全く進まない。

タクシーや観光バスなど、マイカー以外は対向車が全く来ないことを利用し、警備員の誘導のもと対向車線を逆走して大内宿まで横付けしてくれるが、それでも戻りのタクシーや観光バスとの交互通行であり、逆走の許可が出るまで5分ほど待たされた。湯野上温泉駅から大内宿までは15分前後だが、ピーク時ともなると2時間かかる時もあるという。渋滞対策のためにも、マイカー観光客の路線バス・会津線への誘導はもっと進められるべきだろう。

対向車線を逆走して大内宿へようやく辿り着き、運賃を支払って下車。戻りの時間を2時間後でお願いし、タクシーは湯野上温泉駅へととんぼ帰りしていった。早く戻らないと、次の列車が湯野上温泉駅に着いてしまう。

大内宿の中は、まるでタイムスリップしたかのような、茅葺屋根の建物が並ぶ世界だった。街路を歩いているだけで、時代劇の中に飛び込んだかのような気分に浸れる。

当然電気は通っているものの、電柱は埋められ、トタン葺になっていた建物も茅葺に葺き替えられ、雰囲気満点。景観保護への配慮は相当のものだ。

名物ねぎそばを食べつつ、往還の終点まで向かうと、大内宿を見渡せる高台への遊歩道があった。遊歩道とはいっても相当高低差があり、雪に埋まっているとスノトレは必須。足を滑らせている観光客も多くいたため、ここに上るのであれば相応の靴を用意していった方が良い。

しかしまあ、これだけの建築物が、戦災や震災を乗り越え、よくぞ現代まで残っていたものだ。岐阜・白川郷、富山・五箇山の合掌造り集落のような華やかさこそないものの、大内宿は「江戸時代のごく普通の街並み」の姿を、色濃く残す貴重な場所である。会津線旅行の際は、ぜひ湯野上温泉から少し足を延ばし、この世界に浸ってほしい。

***

会津線には、芦ノ牧温泉、湯野上温泉、大内宿に留まらず、こうした古き良き日本の姿を残すスポットが各所に点在している。東京・浅草から特急リバティ会津で一本、たった3時間で、こんな素朴な景色に会いに来れる。今度の会津旅行はいつにしよう・・・。

今日も会津は、春夏秋冬の美しい日本の景色を取り揃えて、旅人の訪れを待っている。

(会津編 おわり)

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