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【山梨】【神奈川】水で繋がる神秘の村──富士急山梨バス道志線・神奈川中央交通[三56]三ケ木─月夜野線 #46

道志村へ繋がる3つのバス

鉄道が通っていない道志村へ公共交通機関でアクセスする手段は、当然バスに限られるものの、そのバスですらも非常に限られた運行となっており、到達は容易でない。

このうち、最も本数が多いのは、山梨県側の山中湖から山伏峠を越え、道志村へと至るアプローチである。とはいえ、それでも最大4往復しかない(以下『山中湖─道志線』と呼ぶ)。

▲日中でも30分間隔と幹線と言える河口湖―御殿場線。道志線もこの線の支線に位置づけられる
  • 富士山駅7:00→山中湖旭日丘あさひがおか7:29→道志小学校8:39(平日運行)
  • 富士山駅9:00→山中湖旭日丘9:38/9:50→道志小学校10:40(4〜11月の間毎日運行)
  • 富士山駅13:00→山中湖旭日丘13:38/13:45→道志小学校14:35(4〜11月の間毎日運行)
  • 富士山駅16:55→山中湖旭日丘17:24→道志小学校18:09(平日運行)

富士急行線との接続駅、富士山駅からの直通運行は朝夕の1往復ずつのみだが、これは平日のみの運行。つまり、道志村→富士吉田市街地への通学にほぼ特化したダイヤであり、おおよそ観光客向けの設定ではない。朝の便は、中央線からだと、中野4:25発の始発電車から乗り継いでくればギリギリ間に合う。しかし東京や新宿からでは間に合わず、この電車に間に合うのは、横浜線橋本─八王子間など、東京・神奈川のなかでもごく限られたエリアでしかない。

したがって、観光客が一般的に利用できるのは、以下の2つのどちらかだろう。

  • 富士山駅9:00→山中湖旭日丘9:38(乗り継ぎ)/9:50→道志小学校10:40着
  • 富士山駅13:00→山中湖旭日丘13:38(乗り継ぎ)/13:45→道志小学校14:35着

この時間帯は、富士急行バスの中でも御坂峠を越える富士山駅─甲府線と並ぶ本線格である、河口湖─御殿場線(A-line/C-line)が30分間隔で頻発している。このため、山中湖─道志線は、この河口湖─御殿場線から分岐する、山中湖旭日丘で折り返しとなり、ほぼ道志村内のみの運行となる。

▲富士山駅に到着する河口湖発御殿場行き。河口湖からの乗客で既に混んでいる

しかし、日中運行のこの2便は毎日運行ながら4〜11月のみの運行であり、冬季は運休となる。したがって、12〜3月の土休日に公共交通機関で道志村を訪れようと思っても、山梨県側からのバスはすべて土休日運休であり、訪れる術がないということになる。この12〜3月に村外と繋がっているのは、土曜朝1往復のみだが「月夜野つきよの─道志線」があり、これは後述する。

ちなみに今回、結果的に富士山駅9:00発の便を利用せざるを得なくなったのだが、それはまた別の話。

次なる存在と言えそうなのが、富士急行線都留市つるし駅から道志小学校を経て、山梨・神奈川県境の月夜野までを結ぶ路線(以下『都留市─道志線』と呼ぶ)。

ただ、都留市駅を出る3〜4往復/日のうち、道坂トンネルを越えて道志村へと入るのは2往復しかなく、しかも土休日運休。土休日は4往復の全便が道坂どうざかトンネルの手前で折り返してしまうため、道志村へ向かう観光客は実質利用できない。都留市─道志線も、やはり道志村から都留市、富士急行線へ乗り継いで大月市への通学に特化したダイヤであると言えよう。

道志村に入る本数でいうと、3路線のうち最も少ないのがこの都留市─道志線なのだが、これほど本数が少ない理由は、道坂トンネルの開通が1990年と比較的近年のことで、それまでは不安定な峠道しかなかったためだろう。道坂トンネル開通までは日常的な流動があったわけではないために元々の交流も太くなく、バスの運行も非常に限られたものとなっている。ただ、バスを利用して道志村を訪れるには最もこのルートが所要時間が短く、実際に道志村役場の最寄駅は、富士急行線の谷村町やむらまち駅か都留市駅(約20km)となり、次いでJR中央線藤野駅(約25km)となる。

3つのルートのうち、もっとも日陰のルートと言えそうなのが、山梨・神奈川県境の月夜野から入るルートだ(以下『月夜野─道志線』と呼ぶ)。

始発の月夜野では、神奈川中央交通(以下「神奈中かなちゅう」と呼ぶ)の[三56]三ケ木みかげ─月夜野線と接続を取ってから出発する。三ケ木みかげとは相模原市緑区、旧津久井郡津久井町の中心部にある「三ケ木バスターミナル」のことを指し、この三ケ木では、[橋01]橋本駅北口─三ケ木線、[湖21][湖28]相模湖駅─三ケ木線と接続を取ってから[三56]月夜野行きは出発する。つまり、橋本駅・相模湖駅─三ケ木─月夜野─道志村というリレーが成立するのだ。

▲三ケ木で発車を待つ[三56]月夜野行き

しかしながら、橋本駅・相模湖駅─三ケ木─月夜野まで、要は神奈川県内の神奈中運行エリアは1日2往復ながらも毎日運行なのだが、山梨県内の富士急運行エリアは、1日4往復のうち3往復が土休日運休、残る1往復も休日運休である。つまり「冬季の日曜日は、公共交通機関で道志村を訪れることはできない」ということになる。

冬季は山中湖─道志線、都留市─道志線とも全便運休となるため、この月夜野─道志線が唯一村外と繋がるバス路線となる。かつ、月夜野─道志線も土曜日に1往復が運行されるのみで、日曜日はやはり全便運休。よって、冬季の土休日に公共交通機関で道志村を訪れるには、土曜日に橋本駅・相模湖駅から三ケ木・月夜野経由で入るしかない。しかも土曜日の朝1往復しかないため、一度道志村へ入ってしまうと、その土日の間には道志村から出られない。

(次ページ)
道志村を辿る唯一の行程

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