「すいません!乗ります!すいませーん!」
切羽詰まった状況のなか、今にも発車すべく扉を閉めかけていたバス。大声で呼び止め、なんとか乗せてもらった。…さて、これからどうしようか。
大迂回ルートを組み立てよ!
道志村の入口にして旧・津久井町の中心、神奈川中央交通・三ケ木バスターミナルに着いてから、[三56]三ケ木─月夜野線の土砂崩れによる区間運休を知り、道志村に入る前に行程が破綻してしまった。
「月夜野行き」を表示するも月夜野へは行かない旨乗務員さんにも案内され、「道志村へ向かうのであれば、都留市へ出られるか…うーん…」と首を捻られる始末。さて、どうしたものか。
道志村へバスで入る3ルートのうち、1ルートが通行止めとなってしまった今、残るルートは2つ。1つは富士急行線都留市駅からのバス、そしてもう一つは富士急行線富士山駅から一旦山中湖旭日丘バスターミナルへ向かい、そこから道志小学校行きへ乗り換えるルートだ。
しかし、この日は土曜日。東京・横浜方面から電車で道志村へ向かう場合、最も所要時間が短くなる都留市発のバスは、土休日は道志村へ入る道坂トンネルの手前、道坂隧道までで折り返してしまう。このため、都留市ルートも使えず、自然と山中湖ルートしか残らなかった。よって、まずは三ケ木バスターミナルから山中湖へ向かわざるを得なくなった。
山中湖ルートしか残らなかったといっても、最大4往復/日しか山中湖ルートも走っていないなか、果たしてうまく繋がるのか…と、不安は募る。追い込まれた状況で頭をフル回転させ、代替ルートを考えているうち、ふと目をやると、6:57発の[湖21]プレジャーフォレスト経由相模湖駅行きが出発するところであった。ドアが閉まり、ウインカーが点滅している。まずい。このまま三ケ木バスターミナルに留まっていても仕方なく、一刻も早くまずは中央線へと戻らなければならなかった。となると、取るべき行動はひとつ。
「すいません!乗ります!すいませーん!」
…大声が通じたのか、ありがたいことにバスは再びドアを開けてくれた。PASMOをタッチし、乗車。すぐにドアが閉まり、三ケ木バスターミナルを後にした。
6:57、三ケ木発。神奈川中央交通バス[湖21]プレジャーフォレスト経由相模湖駅行き。
道志村から遠ざかるが、再び「道志橋」を渡り、さっき来た道のりを戻っていく。出鼻を挫かれるとはまさにこのことで、道志村に入れすらしないうちに引き返す羽目になるとは…。まさに、この道をすすむという志なくば辿り着けないのが道志村ということか。やるせない気分になるが、三ケ木から先が通じていないのでは仕方ない。「阿津」バス停で先ほど通ってきた[湖28]桂橋経由と分かれ、こちらの[湖21]プレジャーフォレスト経由は国道412号を直進していく。
バスに乗りながら、代替ルートを考える。すると、このまま乗り継いでいけば、奇跡的にも山中湖ルートがすんなり繋がりそうであることが、浮かび上がってきた。
三ケ木6:57─(神奈中バス[湖21]プレジャーフォレスト経由相模湖駅行き)─相模湖7:16/7:20─(JR中央線普通 大月行き)─大月7:48/7:52─(富士急行線普通 河口湖行き)─富士山8:37/9:00─(富士急山梨バスA-line 御殿場駅行き)─山中湖旭日丘9:38/9:50─(富士急山梨バス 道志小学校行き※12〜3月は運休)─道志小学校10:40
危ないところだった。今乗っている三ケ木6:57発のバスを逃すと、山中湖旭日丘9:50発の道志小学校行きに間に合わなくなり、その次は4時間後。とても午前中の到着は間に合わないところだった。不幸中の幸いと言えよう。ともかく、これで一安心。富士急山梨バスの運行情報を見てみても、道志線の運休情報は特に出ておらず、大幅な遅れでも出ない限り、道志村へは着けるだろう。
しかしながら、1日4往復ある道志小学校行きのうち、山中湖旭日丘9:50発、13:45発は毎日運行ながら、12〜3月の冬季は運休。残る7:29発(富士山駅7:00発)、17:24発(富士山駅16:55発)は、通年運行ながら土休日運休。よって、メインルートとも言える山中湖ルートですら、12〜3月の土休日は全便運休となってしまうのだ。この日は10月の土曜日だったので、山中湖旭日丘9:50発・13:45発の2便が走る。
道志村へバスで向かうには、諸条件が整わないと辿り着くことができない。改めて、道志村へ至る道の険しさ、まさに「道をゆく志」が試される旅路だという思いを、新たにしたのだった。
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東京から山梨へ通う高校生