関東

【茨城】「関鉄レールメイト」が育む縁──関東鉄道常総線(3) #42

静かな重要文化財…大宝駅

15:48、騰波ノ江発。関東鉄道常総線普通守谷行き。関鉄レールメイトの皆さんに見送られ、騰波ノ江駅を後にした。列車一本分、僅か30分の滞在ではあったが、木造駅舎が育む人の縁を感じることができた。

次の途中下車は一つ隣の大宝。僅か3分、15:51に到着。降車は自分だけで、乗車はなし。交換設備を持つが、列車交換も無かった。自分一人を誰もいないホームへ降ろし、普通守谷行きは淡々と出発していった。

しかしまあ、何もない駅だ。上りホームに小さな駅舎があるだけで、下り下館行きホームには上屋すらない。といっても、永年にわたりこのままという訳ではなく、2005年の快速運転開始後、2008年に交換設備を新設している。このため、駅舎と向かい合う2番線はまだまだ新しい。その後、2010年に快速列車が減速なしで通過できるよう1線スルー式に信号設備が改修されており、少しずつ変化を遂げている駅ではある。もっとも、少しずつ変化しているのは大宝駅に限らず、TXの開通により環境が激変し、快速運転開始、全線ワンマン化などの変化が続く、常総線の各駅に共通する現象である。

構内踏切に降りてみると、まあ空が広い。空を飛び交う電線もなく、天を衝く高層建築もない。広がっているのは、どこまでも続く青天井と、青々とした木々だけだ。非電化の線路が、地平線まで、ひたすらにまっすぐ伸びている。なるほど、これが”関東の北海道”か──。

しばし”関東の北海道”の景色に浸ったあと、大宝駅を出た。外から見ると、小さいながらもがっしりとした瓦屋根を乗せた、風格のある良い駅舎だ。

駅名板を見てみると、一枚板に力強い木彫りで「大宝駅」とある。駅ナンバリングだとか、外国語併記だとか、そういった今風の配慮は微塵もない。外国人にはある意味不親切だが、これはこれで、この潔さは大事だと思う。一枚板の木彫りに”Kantetsu Daiho Station(KJ-21)”なんてのが彫られていたりしたら、それはそれで雰囲気を壊しそう。でも、茨城の片田舎まで来る外国人だったら、外国語併記よりもこういうのを望んでいるんじゃないだろうか。そんな気がする。

さて、大宝駅に降り立った目的は、近隣に所在する大宝八幡宮への参拝だ。しかし、駅を一歩出たはいいが、駅前にこれといって案内がないのには拍子抜け。駅前の十字路をどちらへ進んだらいいのか、さっぱりわからない。いたって普通の住宅地なのだ。GoogleMapを開くと、どうやら直進して突き当たりを左折したところのよう。スマホがあったからまだいいようなもので、駅前に案内の一つでも設置しておいてほしいところだが、常総線で参拝に来る客など殆どいないのだろうか。駅徒歩3分とあるあたり、ヘタな有名寺社最寄駅の道のりよりもよっぽど近いんだけれども。

駅前の道をまっすぐ進み、すぐの突き当りを左折すると大きな鳥居があった。確かに徒歩3分くらいだ。「関東最古の八幡宮」だけあって、その佇まいたるや堂々たるもの。

総門を抜けると、すぐに拝殿に至る。関東平野のただなかだけあって、古刹にありがちな長い石段のようなものはなく、鳥居と拝殿・本殿にほとんど高低差がない。

拝殿の奥には国宝の本殿がある。本殿は一般公開されておらず、拝殿から参拝する形となる。本殿の屋根の意匠はかなり独特で、701年という創建の古さを感じさせる。

▲これが「重軽石」思い悩んでいるときは重く、願い事が終わった後は心のつかえがとれて軽く感じられるのだとか

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「都市と農村の境目…水海道」

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