関東

【茨城】「関鉄レールメイト」が育む縁──関東鉄道常総線(3) #42

都市と農村の境目…水海道

16:24、大宝発。関東鉄道常総線普通水海道行き。この列車は水海道止まりであるが、水海道で水海道始発普通取手行きに連絡するため、「水海道乗換取手行き」と案内される。大宝で2分停車し、下り下館行きと交換してから出発。

TX開通前は水海道を境に、乗客の多い複線区間を「南線」、少ない単線区間を「北線」と通称されるほどに運転系統が分かれており、取手―下館間の全線通し列車は僅かしかなかった。車両も南線用の2両編成、北線用の1両編成とで構造が違い、北線用車両に搭載されるワンマン対応の運賃箱が南線用の2両編成には無かったり、北線用の1両は車両端の扉が片開きなのに対し、南線用の2両編成は全て両開き3扉になっているなどの違いがあった。それが、2005年にTX開通によって境目が水海道と守谷に分散し、北線の1両が守谷へ乗り入れるようになったり、ラッシュ時は逆に南線用の2両編成が北線へ乗り入れるようになった。2017年からは日中の列車が全線1両になったことで、取手―下館間の全線直通列車が大幅に増加。南線にとっては減車となったが、北線にとっては水海道での乗り換えが減り、総合的には利便性が向上したと言えるだろう。

やってきたのは2009年登場のキハ5000形で、やはりキハ2100形に端を発する新系列気動車の一員。キハ5000形から新塗装となり、京成グループの観光バスに準じた塗装(KaNaCカナックカラー)から、KaNaCカラーのイメージを残しつつも関鉄独自の塗装となった。現在はキハ5000カラーが標準となったようで、KaNaCカラーは姿を消しつつある。個人的にはKaNaCカラーの方が、観光バス流のスピード感があって好みだったんだけれども。矢印のような複雑な塗装もあり、前面もグレーアウトしているなど、なかなか凝っているKaNaCカラーに対して、キハ5000カラーは単純な横線のみとなっており、塗装簡略化=コスト削減の意味合いもあろうかと思う。

大宝で交換したばかりだが、次の下妻で8分停車。ただし平日・土休日とも下妻での交換はなく、時間調整目的と思われる。この列車の下館発車を遅らせると、下館でのJR水戸線下り友部行き(15:59着)→16:06発と7分接続であるところ15分接続となってしまい、接続時間が長くなりすぎてしまうがための配慮だろう。この列車が下妻で時間調整をするあたり、水戸線→下館乗り換え常総線の流れは下妻くらいまでで、逆に言えば下館から下妻を通り越す利用が多くないことの裏返しでもある。ちょうどこの日は祭りの真っ最中で、祭り帰りの小中学生が大勢乗り込んできた。といっても、1両編成の座席が埋まり、立客が多少出た程度ではあるが。隣に座った小学生は「守谷に着いたら起こして!」と同行の友人に頼んでいる。守谷までの小児運賃でも片道500円(大人990円)するが、下妻の祭りは、思ったより広域から人々を集めているようだ。彼らも自分と同じ一日フリーきっぷ(小児750円・大人1,500円)利用なのだろうか。PASMOを持っていたような気もするが。

宗道、玉村を経て、石下で再び下り普通下館行きと交換。その後も南石下、三妻、中妻と各駅で小さな乗り降りを繰り返した。次の北水海道は1972年、土地区画整理事業の進行に伴って追加開業した市街地内の棒線駅。常総線で1面1線の棒線駅はここと、やはり石下市街地内の南石下、および玉村の3駅しかなく、比較的珍しい存在。北水海道から水海道まで1駅だけの利用もあり、都市的な利用が出てきた。北水海道―水海道は1.8kmと、これまでの北線の各駅に比べ、駅間距離も短い。TX開通前、取手口の列車は殆ど水海道止まりであった頃と比べ、現在は水海道を越えて運転される普通が増えたこともあってか、乗客数は2005年TX開業時に280人だったところ、2017年は447人と微増傾向にある。

北水海道を出て市街地の単線を静々と走り、17:06、水海道着。接続の普通取手行きは7分接続と、思ったより接続時間が開いていたので、7分接続の間に水海道駅構内を少々見物。まず目を引くのは構内踏切が現役である点だ。人口4万人を数えた旧水海道市(現・常総市)の中心地にしては、なかなかローカルな構え。

しかしながら、改札口には磁気券対応のフルスペック自動改札が3通路+有人1通路あり、改札の脇には発車時刻のディスプレイも設置されているなど、設備は都市型だ。北線の各駅は簡易IC改札機(磁気圏非対応)でありチャージもできなかった中で、これら設備はやはり都市型のもの。エレベータ付きの自由通路で結ばれる駅裏には中層のホテル・マンションが立ち並び、単線区間にはない都市的な光景が広がっている。やはり水海道は今でも都市圏の区切りなのだ。

3番線に到着した水海道止まりが南水海道車両基地へと引き上げ、追って2番線の普通取手行きが出発してゆく。水海道乗り換えとなる場合は原則2・3番線の対面接続となっており、水海道を通り越す乗客にも配慮している。駅舎は片面ホームの1番線に隣接しており、1番線発着(主に下館方面行接続がない水海道発着が使用する)の列車は勿論、構内踏切であるために2・3番線発着の列車へも改札までバリアフリーとなっている点は、寧ろ跨線橋よりも人にやさしい。

列車本数がそこまで多くない常総線だからこそ構内踏切が生き残っているとも言える。「踏切は危険」という考えも根強いが、跨線橋の上下動を嫌って踏切でも何でもない線路を横断されるよりは、よほど安全かつバリアフリーを両立した構造でもあり、もっと評価されてもいいと思う。さすがに南線は列車本数が多いため構内踏切は減るが、北線は水海道のほかにも石下、下妻といった快速停車駅にも構内踏切が残っている。

複線区間の列車は新世代気動車の第一陣、キハ2100形の2両編成。運賃箱はなく全ての扉が両開きで、エンジン音が床下から響く以外は、都会の電車そのものだ。17時を過ぎると、輸送力確保のために取手―水海道間は殆どが2両編成となる。この時間に水海道を跨ぐのは、17~20時にかけ、TX快速に接続して東京都心と常総線沿線をスピーディに結ぶ役割を担う快速と、17・19・22・23時台にかけてわずかに走る普通のみ。

(次ページ)
「複線区間に連なる新駅」

1 2 3 4