関東

【茨城】新駅設置とバス再編で「攻めのローカル鉄道」へ――関東鉄道竜ヶ崎線(2) #44

連携を欠くコミュニティバス

一般路線バスがここまで衰退してしまった中、もっとも多くの本数を確保しているのは今やコミュニティバスとなってしまった。そのうち最も本数が多いのは、竜ヶ崎駅と竜ヶ崎ニュータウンを環状ルートで結ぶ「循環ルート」で、7〜18時台にかけ、内回り・外回りとも1時間に1本が走る。その他、A〜Eルートがそれぞれ2時間に1本程度が走る。佐貫駅前をターミナルとする関鉄バスの一般路線に対し、コミュニティバスは竜ヶ崎駅と市域周辺部を結ぶように走っており、住み分けを図っている。

▲竜ヶ崎駅14:39発の総合福祉センター行き。乗客が比較的多い環状ルート以外はマイクロバスでの運転となる

しかし残念なのは、竜ヶ崎線と環状ルート内回りの接続が極めて悪い点だ。環状ルート内回りは、竜ヶ崎駅を起点に中心市街地の商店街を2kmにわたって貫き、流通経済大学前を経由して龍ケ崎済生会病院・竜ヶ崎ニュータウン方面へ向かうルートを採る。かつての江戸崎線メインルートが経由した戸張も通り、竜ヶ崎線と結節しての理由が期待できそうなのだが、日中は毎時30分発とされているために、02・32分到着の竜ヶ崎線と極めて接続が悪く、28分待ちとなってしまっている。主たる需要源である龍ケ崎済生会病院へは、佐貫駅からの関鉄バス一般路線が20分間隔で出ており、佐貫駅から病院へはそちらを利用した方がよほど便利だから、ということもあるだろうか。

それに対し、竜ヶ崎線とやや並行する環状ルート外回りは毎時03分発とされているため、竜ヶ崎線とは1分接続と、こちらは頗る接続が良いが使いどころが思い浮かばない。環状ルート外回りが目指す方向は佐貫駅や入地駅にも近いあたりで、竜ヶ崎線からわざわざコミュニティバスへ乗り換えるよりも、佐貫駅からの関鉄バス一般路線に乗れば事足りるからだ。

仮に竜ヶ崎線から環状ルート内回りへの接続が良くなれば、竜ヶ崎駅から離れたコロッケ店へもアクセスが良くなる。竜ヶ崎駅からコロッケへはどこも徒歩10〜20分程度離れており、この中で一番人気の「髙橋肉店」へは竜ヶ崎駅から1.7kmと、歩いて行くには少々遠い。かといって、28分も待ってバスに乗るよりは、歩いてしまった方が早い。これよりも遠い店もいくつかあり、加盟店であっても、徒歩ではアクセスできないほど離れた店もある。

コロッケ店めぐりには、竜ヶ崎駅で借りられる無料レンタサイクルの利用を勧めているようではあるが、中心市街地をゆっくり巡るには、バスも利用できると散策しやすくなるのは、言うまでもない。竜ヶ崎線と中心市街地を有機的に結ぶためにも、竜ヶ崎線とコミュニティバスの接続は留意すべきと思うのだが…。

竜ヶ崎駅の改札目の前から出発する3種類のバスは以上となるが、駅前広場の片隅からは竜ヶ崎線と並行する佐貫駅・取手駅行きのバスも出発する。しかし、本数は1〜2時間に1本と、竜ヶ崎線の30分に1本と比べてだいぶ少ない。この佐貫駅・取手駅行きの正体は江戸崎線など、竜ヶ崎よりも先から来るバス。竜ヶ崎駅で打ち切らず、常磐線までを乗り換えなしで結ぶための延長運転の側面が強いためで、竜ヶ崎駅から常磐線へ出るならば、竜ヶ崎線に乗った方が早くて安いからだ。そのため、竜ヶ崎駅からの乗車はあまりないと思われ、乗り場も片隅の茂みのような場所に追いやられてしまっている。

クルマ社会真っ只中の竜ヶ崎駅から出るバスを紹介した。どれも試みとしては悪くないのに、調整不足が祟って、全体としての利便性向上になかなか結びつかない様子が見て取れる。例えば、江戸崎線にしても、稲敷エリア広域バスにしても、コミュニティバス環状内回りルートにしても、竜ヶ崎駅からいったんは中心市街地を1〜2km辿ってから済生会病院へ向かうため、ルートはほぼ同じなのに、運行間隔が調整されているとは言えない。このため、役割をほぼ同じくするバスが固まって走ったり、或いは1時間空いてしまったりと、フリークエンシーが犠牲になってしまっているのだ。

これを30分間隔の竜ヶ崎線に合わせ、3つのバスのうちのどれかには接続するという風に改められないだろうか。そうすれば、竜ヶ崎線を中心市街地に引き込むのと同等の効果を得られる。また、龍ケ崎市街地から済生会病院へのアクセスも良くなる。

龍ケ崎市は日中のバス運賃を上限210円とする施策を実行するなど、鉄道が乏しいが故にバスを積極的に活用しようとする土壌がある。コミュニティバスのダイヤも、循環ルートはきっかり1時間間隔と、覚えやすく利用しやすいものとなっているのは好ましい。予算不足で「ないよりマシ」というレベルでしかない、ランダムなダイヤとなっているコミュニティバスが珍しくないなかで、先進的な試みと言えよう。

幸い、竜ヶ崎線を運行するのも、バスを運行するのも両方関東鉄道であり、利害関係者は多くない。竜ヶ崎駅発のバスの運行間隔調整はすぐにでもできる話だし、観光客のみならず龍ケ崎市民の利便性向上のために、今後とも取り組んで行ってほしい。

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「竜ヶ崎線の活用で渋滞緩和を」

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