タクシー不足でバスの出番!
宮古空港を発着するバスが少ない事情は先述した通り。そんな土壌がある宮古島において、航空便は1日1便ながらエアポートバスが2路線開設され、しかもリゾート直行でなく平良市街、宮古空港を経由していく・・・などとはだいぶ画期的。過去にはリゾートホテルが合同で空港とリゾートを結ぶ路線バスを走らせようとしたものの、タクシー業界の反対を受けて頓挫したといったエピソードがあったり、空港と平良市街を結ぶ循環バスが定着しなかったりと、過去には失敗が多かった。それにも関わらず、2路線の開設に漕ぎつけることができたのは、近年の観光客急増によるタクシー不足といった事情があるだろう。
クルーズ客増でタクシー不足・・・宮古島、解消へ「乗り合い」導入 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/136873
クルーズ船が平良港に入港すると、数千人のクルーズ客がいっぺんに島へと入ってくるため、地元住民がタクシーに乗れなくなる事態になるという。そればかりでなく、数千人が観光バスで島をめぐるため、かき集めても宮古島全体で70台=約3,000名の貸切バスで乗務員が手一杯となり、乗務員を貸切バスへと割り振らねばならず、余計にタクシーが減るといった事態になっているのだ、という。いわゆる、宿泊地のキャパシティを超えて観光客が押し寄せることで地元住民の生活が脅かされるという、オーバーツーリズムの問題である。
そんな中で、平良市街から15km離れた下地島空港にまでタクシーを割り振らなければならなくなってしまうと、余計にタクシーに乗れる機会が減少してしまう。そうなるといよいよタクシーで運びきれるものではなくなり、バスの出番ということになったのだろう。仮にA320-200の定員・180名の半分がタクシーに乗ったとしたら、全部に3名を乗せたとしても、30台を下地島空港へ向かわせなければならなくなる。1往復の航空便めがけて30台ものタクシーが伊良部大橋に集中するのは、明らかにオーバーツーリズムの弊害のひとつと言える。そういった事情もあって、今回はタクシー側も反対しなかったのではないか。
これを機に、宮古空港でも気軽にバスを使えるようになればいいとも思う。乗務員や車両を効率的に配分するためにも、平良市街や、観光施設が集中する上野地区など、ある程度まとまった利用が見込めるエリアへはバス、そうでないエリアへはきめ細かく対応ができるタクシーと、棲み分けを図るべきだ。バスへの集約によって生じた余力を、更なる観光の伸びへ対応するバッファとした方がいい。今まではタクシーで対応しきれるくらいしか乗客がいなかっただけに、エアポートバスに対するタクシー業界の反発もあったのだろうが、もはやそんなことは言っていられないだろう。
下地島空港エアポートバスは、宮古島のバスとタクシーの雪解けのきっかけを与えてくれたのかもしれない。
なお、下地島に隣接する伊良部島には、伊良部大橋が開通する前から島内でバスを運行していた「共和バス」という事業者があり、現在でも伊良部島と平良市街を結ぶバスを運行している。しかし、同社:佐和田車庫の目と鼻の先に空港ができるにも関わらず、共和バスは下地島空港エアポートバスには参入しないこととなった。既存路線をそのまま延長するだけでエアポートバスになりそうなものだが、そうならなかった背景については、今後の記事で述べていきたい。
みやこ下地島空港および宮古空港を取り巻くバスの状況について、おわかりいただけただろうか。次回からは、そんな激動を控えた宮古島の一般路線バスに乗り、「南ぬ島をゆくるバス」の姿に、迫ってみよう。
(つづく)