九州・沖縄

【沖縄】池間島へ渡る小さなノンステップバス──八千代バス【6】池間一周線 #58

最北端でようやく迎えた初乗客

平良を出発し、池間方面への県道83号を進んでいく。平良停留所を出てしばらくは市街地が続くものの、3.4km先の「西辺にしべ」停留所まで途中停留所はない。その西辺停留所の手前、「西原入口」交差点にはかの有名な「宮古島まもる君」が立哨にあたっており、交通安全に一役買っている。

その西原入口交差点で、古くからの西辺集落を経由する旧道と、集落をバイパスする新道とに分岐し、当然、新道方面に「↑池間」と振られているものの、バスは集落を経由するために旧道へと分岐してゆく。

西辺集落を出たところに「成川なりかわ入口」停留所があり、多くのバスはここで右折して県道83号の本線に戻るものの、この便は450mほど本線から離れた「成川」停留所を経由する。成川停留所を経由するのは、下り池間行きはこの15:48発のみ、上り平良行きは7:33発のみと、上下1本ずつしかない。実はこの成川停留所、与那覇前浜ビーチと並ぶ宮古島随一のビーチ「砂山ビーチ」の最寄り停留所であるのだが、徒歩20分とかなり離れているうえ、上り7:33、下り15:48の設定では観光客の利用はできない。そのため、成川地区から平良市街への通学に用いられるだけなのだろう。この日は日曜日であり、学校帰りの乗客がいないのも道理である。成川停留所周辺はロータリーのようになっており、切り返すことなく転回し、本線に戻った。

成川入口停留所の1km先で、県道83号本線を経由していく「野田経由」と、本線から外れる「大浦経由」に分岐する。1日8往復のうちどちらも4往復ずつの運行で、往路と復路で経由を違える。この便は「野田経由」であり、気持ちよく伸びやかなルートが続く県道を直進してゆく。平坦な地形に直線の道路がどこまでも伸びており、案外山が多い沖縄本島のそれとは全く異なる、珊瑚礁の島・宮古島独特の風景である。

なお、この分岐点から県道83号は東へ逸れていくため、ここから直進する県道は83号に代わり230号となる。その県道230号を直進する「野田経由」にめぼしい途中停留所はなく、「宮古特別支援学校前」がやや目立つ程度。それに対し、「大浦経由」は国立ハンセン病療養所:宮古南静園の中にある「南静園」停留所や、宮古諸島の中で唯一宮古島への橋がない大神島へのフェリーが出る「島尻港」停留所など、目的地になり得る停留所が多い。そのため、「野田経由」は池間島への短絡ルート、「大浦経由」は途中経由地を縫うルートとして機能している。

また、「野田経由」にも「大浦入口」「南静園入口」停留所があり、4往復しかない大浦経由を補完している。ただ、大浦入口停留所から大浦停留所へは徒歩7分ほどだが、南静園入口停留所から南静園停留所までは徒歩20分と、だいぶ離れる。

ここまで来ても自分以外の乗客はなく、淡々とした走りが続く。分岐点に近い「大浦入口」停留所から3km先の「島尻入口」停留所で再び合流し、なおも北上。宮古島最北の集落・狩俣集落には「中学校前」停留所と「狩俣」停留所の2つが設けられており、集落の規模もやや大きい。ここまでの停留所は1集落1停留所が原則であることからも、集落の規模が窺える。

終点まで自分以外の乗客はないかと思っていたが、宮古島最北の停留所:狩俣停留所から、病院帰りと思しきオジイが一人乗ってきた。狩俣集落には診療所がないのだが、狩俣在住の知人の車にでも乗せてもらったのだろうか。しばらく走っているとオジイの携帯電話が鳴り、「おもちゃの兵隊のマーチ(※キユーピー3分クッキングのテーマ)」が長時間鳴り響くものの、耳が遠いのか全く気付かない。1分以上鳴ってようやく気付いたと思ったら、「今バスに乗ってるよー」という報告の電話だった。ちゃんとバスに乗ったかどうか、家族からの確認だったようだ。

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「池間ブルーの海を渡って」

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