核を持たない街の顔…流山駅
そして馬橋から5.7km、12分で終点・流山に到着する。
旧市街である流山本町の真ん中に位置し、流山市役所や流山市立図書館、流山市立博物館、文化会館といった公共施設も集積する。また、車両基地も流山駅に隣接しており、2両編成の電車が休んでいた。
2番線は行き止まりだが1番線はそのまま車両基地へ繋がっており、昼間は1番線だけの使用。
各駅と同じく「舟」が改札口に鎮座しており、”切符切り”が電車到着の際には立つ。よく手入れされた木造駅舎が現役で、駅舎は流鉄の本社も兼ねる。本社兼駅舎の前にはタクシーが屯し、一昔前の地方都市の、素朴ながらも町の顔であった駅の在り方を、よく残している。
文字通り流山の顔となるべき駅なのだが、先述したようにここから先へ向かっても4kmほどで東武野田線初石駅にぶつかり、流山駅の駅勢圏はここから先の2kmほどしかなく、しかもTX流山セントラルパーク・流山おおたかの森両駅の開業により、その残った駅勢圏すら侵食されている状況である。これを反映してか、地方の中心駅によくあるようなバスターミナルの類は全く無く、小さなタクシー乗り場があるだけだ。
市役所と旧市街がありながらここまで立場が弱い駅というのも珍しいが、いまや流山市民であっても流山本町に関係しない、TX・東武野田線沿線住民の方が圧倒的多数に及ぶとあっては、致し方ないだろう。
流山市は合併の経緯もあって歪な形をしており、特に向小金地区は常磐線を越えた南側に大きく張り出し、最寄駅は常磐線各駅停車の北小金か南柏となるほどだ。TX、東武野田線、武蔵野線、常磐線と、流山線以外にも流山市は鉄道の便には恵まれるものの、流山線以外が悉く流山本町をスルーしているため、市域内でそれら鉄道網が結びついていない。
結果として、市内に南流山・流山おおたかの森の2つの乗換駅を持ちながら、2つとも流山本町とは結ばれていない。また柏市が隣接し、流山市内とは東武野田線・常磐線で結ばれる柏駅前が商業地として大きく発展したこともあって、流山市内には柏ほどの商業地が形成されなかった。このため、流山市内は旧市街である東部、柏を向く北部、松戸を向く南部、そしてTX開通と共に発展した西部とにくっきり分かれてしまっており、「核を持たない市」として今に至るのである。
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次回は流山駅を起点に市内各所を歩き、都会に残ったローカル線・流山線の在り方を、考えてみたいと思う。
(つづく)