関東

【千葉】流山の歴史と流転を眺めて──流鉄流山線 #61

伸びゆく”センパ”

流山駅から徒歩10分ほどで平和台五丁目の戸建てエリアが尽きると、道路一本を挟んで流山センパ駅近くのマンション街になる。住所も平和台五丁目から前平井に変わるが、「流山市セントラルパーク一丁目」とかの新地名にはなっておらず、昔のままの地名が残る。その土地の歴史を塗り替え、地名ごと変えてしまう1970年代の開発との差を表していると言えるだろう。

駅前エリアではあるが、5〜6階建のシックな中低層マンションが中心で、普通のみ停車駅の静かな雰囲気が維持されている。近年開通した新しい鉄道だけあって、駅前ながら電車の音もほとんどせず、パチンコ屋やキャッチの声といった騒音もなく、住環境としては極めて良好。時折電車の姿が見えても、ヒューと滑るように去ってゆくだけだ。

駅に隣接するエリアにはケーヨーデイツー(ホームセンター)とマミーマート(スーパー)が肩を並べ、これら2店舗は道路にも面しているため、駅前スーパーとロードサイド店の性格を併せ持つ。最寄品需要を満たす店は一通り揃っているので、日常生活に不便はなさそう。

行き止まりとなっているロータリーを通り抜けると、駅の反対側、東側にもロータリーがあり、こちらにはやや広いバスターミナルも設けられている。東口側の駅前には真新しい「東葛病院」が建っており、駅前に建つ大規模病院という様に、現代らしさを感じずにはおれない。

見舞客や通院客は安定した人の流れを生むし、遠来の客も珍しくないため、公共交通機関の便が良い地に病院を立地させるというのは、まさしく理に適っている。ただ、当たり前といえば当たり前なのだが、病院とはその街へ大きな付加価値をもたらす存在ではない。そのため、こうした普通電車のみの停車駅に病院を立地させ、より土地の価値が高い快速停車駅やターミナル駅へは、商業施設を立地させるのが理想といえる。

センパ駅および両隣の南流山駅・流山おおたかの森駅の場合は、まさしくこの図式が成り立つ。駅ができて40年を超えた南流山駅は、旧来の流山本町に対する流山の新市街地として発展し、成熟期を迎えている。もう一方の流山おおたかの森駅は、TXと東武野田線の結節点として、大型マンションに加え、商業施設の進出が著しい。そして、その中間に挟まれたセンパ駅は、駅前は大規模病院と中低層マンションが並ぶものの、少し離れれば戸建て中心の、閑静な住宅街が広がるばかりであり、快速停車駅の街並みとは明らかに異なる。

流山市内にできたTXの3駅は、それぞれはっきりと役割が異なっており、一見地味なセンパ駅前も、センパ駅にしか担えない役割を負っている。こうした明確なゾーニングが実現したのも、現代に開通した新しい鉄道ならばこそ。街の発展を成り行きに任せるしかなかった100年前の鉄道である流山線に対し、90年を経て現代らしい計画都市・流山を創造したTX。その両者がたった1.3kmをおいて並存しているというのも、実に興味深い景色である。

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次回は、TXに1駅揺られて南流山へ向かい、南流山から流山線鰭ヶ崎駅へと歩いてみよう。

(つづく)

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