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【千葉】流山線を取り巻く新しい鉄道たち──流鉄流山線・つくばエクスプレス(TX) #62

なぜ別駅?流鉄幸谷・JR新松戸

セオリー通り、小金城趾で下り流山行きと交換。小金城趾には安全側線がないため同時進入ができず、下り流山行きが1分先に到着し、上り馬橋行きを待ち合わせるという設定になっている。そのため、上り馬橋行きは待ち合わせることなく、数名の乗客を乗せるとすぐに発車。幸谷に着く頃にはやはり2両で30名くらい乗っていた。

18:07、幸谷着。30名くらいの乗客のうち20名ほどが降りてしまい、終点・馬橋まで向かうのは10名ほど。乗降客数でも馬橋1:幸谷2の比率であり、ほぼ利用動向に従っている。

幸谷駅は流鉄所有のマンション1階に同居する形で、そのマンションが線路の西側に建っているため、線路の東側であるJR新松戸駅の改札へ向かうには、流鉄の踏切を渡らなければならない。上り馬橋行きを降りた乗客は、改札を出たところで、馬橋行きが通り過ぎるのを暫し待つことになる。

特に下り流山行きの到着直前にJR新松戸駅から流鉄幸谷駅へ向かうと、下り流山行きが到着するために踏切が閉まってしまう。踏切が開いてから停車中の流山行き目掛けてダッシュするか、諦めて次の電車を待つかのどちらかとなり、ホームの位置が悪いとしか言いようがない。ホームを東側へ移設すれば踏切にまつわるトラブルはなくなるのだが、幸谷駅舎はマンションとの合築であり、移設は容易でない。

幸谷駅ホームには「新松戸駅のりかえ」と大書きされた案内板が掲げられており、連絡運輸を行なっていないために乗換案内放送はないものの、実質的な乗換駅として機能している。実際、馬橋行きを降りた乗客のうち半分以上は、JR新松戸駅の改札を抜けていった。

幸谷・新松戸を接続駅とした連絡切符・連絡定期券はないので、連絡乗車券の場合は馬橋まで行くことになる。しかし、幸谷から流山へは運賃170円・6ヶ月定期34,240円なのに対し、馬橋からでは運賃200円・6ヶ月定期43,420円と、一気に9,180円も値上がりする。連絡乗車券を買ってしまうと必然的に馬橋乗り換えとなるので、5.7kmしかない路線ゆえに少しでも長く乗ってもらい、少しでも高い運賃を得るための運賃制度になっていると言える。

しかしながら、流山線はSuica非対応のため、連絡定期券の場合は必然的に磁気券となり、JR線利用時に不便を強いられる。このため、やむなくJRのSuicaと流山線磁気定期券の2枚持ちとなる人も多いだろうし、そうなると2枚になるのは馬橋乗り換えでも幸谷乗り換えでも同じ。割高な馬橋乗り換えよりも安い幸谷乗り換えを選ぶ人が多くなるのは、当然と言える。

流鉄馬橋駅の乗降客数は、TX開通前の2004年度は5,800名/日あったのだが、開通翌年の2006年度には3,560名/日へと、2,240名・39%も減少してしまった。幸谷駅は2004年の7,140名/日から5,260名/日へ、1,880名・27%減に踏みとどまっているあたり、馬橋の方が減り方が著しい。

もちろんTX開通が最大の要因であるわけだが、その中で幸谷の方が減少数・率とも踏みとどまっているのには、流鉄がSuicaに対応していないという事情もあるだろう。2001年のSuica導入後、2007年のSuica・PASMO相互利用開始によって、常磐線各駅停車が直通する地下鉄千代田線でもICカードが利用できるようになったというのも、このタイミングに合致する。

以前は武蔵野線の高架下を通ることで、両線の乗り換えは実質屋根付きとなっていたが、高架下にロッテリアが開店したため、現在の乗り換えは公道経由となってしまっている。雨天時は傘を差さなければならず、これはいただけない。JRとしては自社が所有する敷地を有効に利用しただけのことなのだろうが、せめて敷地の半分は乗り換え通路として存置するなどの配慮があってもよかった。

流鉄幸谷・JR新松戸の改札口間は50mほどと、別駅扱いにしては極めて近い。ただ信号を1か所挟むため、乗り換えには2~3分みておく必要があるだろう。しかしこの距離感では、元々流鉄側が現在地の南に幸谷駅を設けており、国鉄→JRが武蔵野線開通を機に新松戸駅を後から開業させたという経緯があるにせよ、堂々と流鉄側も「新松戸」を名乗ってもまったく問題なさそうである。

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「幸谷─流山の10分間隔運転を」

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