九州・沖縄

【沖縄】バスで行く小さな無人島への旅- 東陽バス【38】志喜屋線(2) #34

三ヶ所に分立する志喜屋バス停

那覇バスターミナルから1時間4分、【38】志喜屋線の終点・志喜屋は、志喜屋集落のど真ん中にある何の変哲もない停留所だった。終点らしく折り返し場があるとか、小さなバスターミナルになっているとか、そういうことは全く無く、何も知らなければ本当に単なるいち停留所にしか見えない。

この理由は、山側をバイパスしていく国道331号と、海側に分岐して集落を経由する道とが、集落を胃袋状の形で取り囲んでいることによるものだろう。

▲志喜屋付近の変則的なルートがわかる路線図(「バスマップ沖縄」より)。東陽バス【38】志喜屋線は単なるラケット型の経路であるが、琉球バス交通【53】志喜屋線の志喜屋付近は別表に開設が加わるレベル。いずれも志喜屋集落内は時計回りの一方通行。

東陽バス【38】は知念半島をぐるりと周り、志喜屋へ東側から来て折り返すが、胃袋状のルートの下辺、集落の中を通って収束部で終点とし、そのまま上辺、国道331号へ反転して戻ってゆけば、集落を時計回りで周りつつ、折り返し待機が必要ないため、効率の良い運行ができる。ただし、志喜屋終点を通り越してそのまま那覇方面へ乗り続けることはできない。

一方、内陸部をバイパスして那覇と志喜屋をほぼ直線で結ぶ琉球バス交通【53】志喜屋線は、志喜屋へ西側から入ってくるが、こちらも同じく志喜屋集落を時計回りに回る。まず国道331号上の志喜屋バス停に停車し、胃袋状のルートの上辺を通り、収束部で下辺へ反転、【38】の終点バス停を経由して、ループを出て行く。

このように、志喜屋集落自体がラウンドアバウトのようなループ状の道路で構成されているため、ループ区間にバス停を散りばめることで、双方の折り返しに対応しているのである。いわゆる駅と住宅団地を結ぶニュータウン路線ではよくある形だが、集落自体がループ経路を持っている例は珍しいと言える。

▲【38】志喜屋終点のポール。何と「志喜屋の隣は志喜屋」である

Yahoo!路線情報ではそれぞれの停留所について国道東向き(東陽バス【38】の始発)を「志喜屋」、同じ地点の琉球バス交通【53】を「志喜屋1」、国道東向きの集落東側(東陽バス)を「志喜屋入口」、至近の集落東側を「志喜屋2」、集落中央を「志喜屋3」と、便宜上の数字を割り振っている始末。もちろん現地ではこのような案内はなく、志喜屋入口を除きすべて「志喜屋」として案内されているのだが、【38】と【53】を志喜屋で乗り継ぐ利用者がさほど多いとも思えず、大した問題ではないのだろう。このあたりのユルさも沖縄らしい。

ただ、【38】志喜屋線については、ループ状の経路とはいえ、ループを出たところに待機場を設けている。那覇からの所要が1時間を超えるため、乗務員の休憩場所も兼ねているものと思う。このため、ループを出る手前、集落の中にある停留所を終点とし、ここで乗客を降ろす。その後待機場に移動し、降車点検も兼ねて折り返し。そして国道上の停留所を始発として、再び那覇方面へ折り返してゆくという手順になる。

待機場を持っているのは【53】も同じで、こちらは志喜屋が終点ではなく、わざわざ経路上にある百名バスターミナルを通り越して5kmほど離れた志喜屋集落でUターンし、再び百名バスターミナルに戻ってそこで終点という、かなり特殊なルートを辿る。志喜屋集落の需要が高くとも、志喜屋の中での折り返しが難しい(待機場が確保できない)ため、近隣の百名バスターミナルを代わりの起終点としているのだろう。

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優しい色の島バスに惹かれて

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