「まもなく終着、新十津川です。お降りの際は、一番前のドアをご利用ください。運賃・きっぷは、整理券と一緒に、運賃箱にお入れください。どちら様も、忘れ物の無いようお仕度ください。今日も、JR北海道をご利用くださいまして、ありがとうございました」
淡々とした自動放送が、新十津川到着を告げる。キハ40車内の期待も、最高潮に達する。
※本来、「学園都市線」は(札幌―)桑園―新十津川間、札沼線全線に付けられた愛称であるが、本項では札幌―北海道医療大学間の電化区間を「学園都市線」、石狩当別―新十津川間の非電化区間を「札沼線」と呼び分けることとする。
新十津川行きは大賑わい
札沼線の廃止報道が出た12/8(土)に先立つこと6日の12/2(日)、僕は朝の石狩当別駅にいた。
札幌6:39発→石狩当別7:18着の学園都市線電車で石狩当別に着き、石狩当別7:45発の新十津川行きに乗る算段でいた。もう20分後、札幌6:58発→石狩当別7:38の学園都市線電車でも石狩当別7:45発の新十津川行きへは間に合い、むしろ一本後の方が所定の接続列車となっているのだが、札沼線の気動車はキハ40形の1両と決まっており、キャパシティが少ない。所定よりも1本早い列車で座席を確保しておこうと思ったのだ。
しかし、その危惧は現実となった。1番線へ7:18着の同じ学園都市線電車からの乗り換え客で、ボックスシートはあっという間に埋まってしまった。僕は学園都市線電車の先頭車に乗っており、真ん中かやや後ろ(札幌)寄り石狩当別駅の跨線橋から遠く、気動車が出発する3番線への跨線橋を渡るのに出遅れてしまったからだ。このため、やむなく後方(札幌寄り)のロングシート壁寄りの位置を確保。ここで新十津川までの1時間半余りを過ごすこととなった。
やがて7:38着の学園都市線733系電車が同じホーム向かいの2番線へ到着すると、新十津川行きへぞろぞろと乗換客が乗り込んできた。「エッ、こんなに混んでるもんなの」みたいな顔を浮かべている人もいる。そりゃそうだろう、「北の国から」の世界そのままのキハ40形がそこにいて、ひと気もまばらな北海道のローカル線をのんびり…なんてのを想像していた人も多かろうに、現実に止まっている新十津川行きは、4人がけボックスシートを4人で座る状況なのである。
正直、乗客は鉄道ファンばかりかと思っていたが、鉄道ファンはむしろ少数派。多く目につくのは、中高年の夫婦といった感じの観光客だ。新十津川まで往復したとしても12:15には札幌へ戻ってこれるし、後述するが新十津川からは函館本線滝川駅までバスですぐ出られるので、旭山動物園をはじめ旭川方面へ出るのも容易い。札沼線は、札幌からほど近い「北海道のローカル線」として、札幌発の観光ルートに組み込みやすいことが、こうした観光客の人気に繋がっているのかもしれない。
「普通列車、新十津川行きです。札幌方面には行きませんのでご注意ください。Kitacaのご利用エリアは、次の北海道医療大学までです。北海道医療大学より先の各駅へお出での方は、Kitacaをご利用になれません」
停車中、キハ40形の車外スピーカーから、札幌へは行かない旨、および北海道医療大学以遠はKitacaが使えない旨の自動放送が何度も流れた。今のように、学園都市線電車が3扉ロングシート3・6両編成、札沼線気動車がキハ40形単行と明確に分かれているのであればまだしも、2012年の学園都市線電化までは、札沼線だけでなく学園都市線にもキハ40形はいたわけで(ただしロングシート化・デッキ撤去など都市型仕様に改造されていたものが多い)、紛らわしさは今の比ではなかっただろう。
やがて定刻となり、乗務員さんのホイッスルが吹かれた。程なくドアが閉まり、静々と出発。ボックスシートは完全に埋まり、ロングシートも殆ど埋まり、運賃箱に近い前方には何人か立っているという盛況である。
7:45、石狩当別発。札沼線普通新十津川行き。
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「新十津川行きに乗る大学生」