東北・北海道

【北海道】1日1本の終着駅・新十津川へ──JR札沼線(学園都市線)(2) #51

新十津川行きに乗る大学生

札沼線気動車の定位置となっている3番線を離れ、ゆらゆらとポイントを渡り終わったころ、自動放送が流れた。

「今日も、JR北海道をご利用くださいまして、ありがとうございます。普通列車、新十津川行きです。ワンマン運転のため、お降りの際は一番前のドアをご利用ください。運賃は、つり銭の要らない様ご用意ください。両替機は、運賃箱に付いております。お客様にお願い致します、携帯電話は、マナーモードに設定の上、通話はお控えください。また車内はすべて禁煙です。次は、北海道医療大学です」

いまや1日1回しか聞けない「新十津川行き」の放送である。もちろん、何の飾り気もない至って普通の自動放送なのだが、それでも静かに聞き入っている人が多かった。

窓の外には当別町の新興住宅地が広がる。石狩当別―北海道医療大学までは電化区間であることもあり、なんだか「1日1本の新十津川行き」に乗っているというわくわく感に乏しい。それでも、石狩当別駅から遠ざかるにつれ、窓の外には広大な農地が広がるばかりとなってくる。

「まもなく、北海道医療大学です。お降りの方は、前の方にお進みになり、一番前のドアをご利用ください。運賃、きっぷは、整理券と一緒に、運賃箱へお入れください。定期券の方は、わかりやすいよう、運転士にお見せください。Kitacaでご乗車の方は、Kitacaを運転士にお見せの上お降りになり、駅の改札機へkitacaをタッチしてください」

▲曲線上に開設された北海道医療大学駅

北海道医療大学駅は、札沼線区間で唯一Kitacaが使える駅のため、通常の案内に加えてKitacaの案内もあり、放送が長い。それにしても、キハ40形ワンマン単行が全国相互利用ICカード対応駅に停車するなんて例は、そう多くないんじゃないかと思う。他に思い当たるのは、佐賀県の唐津線、唐津―西唐津間に筑肥線電車も乗り入れる1駅間くらいだ。

降車口に近い前ドアの方に目をやると、「ちょっとそこまで」といった感じの大学生が何人も乗っていた。彼らは観光客で混み合うボックスシートに目もくれず、運賃箱に近い先頭付近に固まって立っている。この時間帯はまだ札幌発北海道医療大学行きの運転はなく、石狩当別7:02発の浦臼行きか、この7:45発の新十津川行きへ乗り換えとなる。札幌発北海道医療大学行きの初便は9分後、石狩当別7:54発となり、その後も9:00の始業に合わせて20〜30分おきに立て続けに直通が来る。大学生の多くは石狩当別での乗り継ぎでなく、これら直通便を利用するのが大半だろう。

しかし、北海道医療大学駅周辺には学生アパートの供給が少ないため、市街地でありアパートも多い石狩当別駅周辺に住まい、石狩当別─北海道医療大学の1駅間のみ学園都市線を利用して通学する学生も相当数に上るという。そのため、「1日1本の新十津川行き」を日常的に利用して大学へ通う稀有な(?)大学生もいる、ということになる。1日1本の新十津川行きは、少ないながらも北海道医療大学の通学輸送に貢献しているのだ。もっとも、北海道医療大学以遠が廃線になれば、この新十津川行きは札幌から直通の電車に置き換わるのであり、学生にとってはよほどそちらの方が便利になるのであるが。

北海道医療大学駅が近づいても、学生街の雰囲気は全くない。広大な農地の中に、大学が浮島のようにポカンと寄り集まっているだけだ。なるほど、このような環境では大学の周囲にアパートがあるはずもなく、石狩当別駅の近くに借りるしかないのも道理。

7:49、北海道医療大学着。運賃箱の近くに固まっていた学生15名くらいが降りていった。全員がKitaca定期券を持っており、運転士に見せてから簡易改札機へタッチしていく。9分後には札幌からの電車が到着するのだが、この新十津川行きも学生輸送の一端を担っていることに改めて驚く。

2番線は行き止まりで、新十津川方面へ通じるのは1番線のみ。しかし1番線には屋根がないのに対し、2番線は電車6両分の屋根がある。このことからも、もはや2番線がメインとなっているのは明白だ。行き止まり部分に小さな駅舎、その先にセイコーマート北海道医療大学店があり、その先はもう大学構内である。駅舎脇は駐車場となっているが、この駐車場の拡張をはじめ、駐車場の一角にバスターミナルを新設するなどの計画が報じられている。少ないとはいえ札沼線を利用して札幌方面へ向かっていたところ、北海道医療大学駅まで車で来て、そこから「電車」に乗り換える利用が増えるのを見越しているのだろう。

駐車場1.4倍に/南西側に新改札口/スロープ新設… 北海道医療大駅改修へ 札沼線廃止覚書調印 当別町、バス利用を促進:どうしん電子版(北海道新聞) https://www.hokkaido-np.co.jp/article/260562

これによると、代替バスは列車と同じく石狩当別発着、北海道医療大学駅を経由し、石狩月形までを1日18便(9往復?)とする計画という。現在の列車が1日7.5往復なので、1.5往復が増える計算だ。ただ、石狩月形を越えた浦臼方面との直通はしない計画となっているため、石狩当別←→浦臼間の移動には乗り換えが増えてしまうし、接続も図られるかどうかは未知数。しかし、そんな需要はほぼ消滅しているのもまた事実ではある。

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「か細い鉄路を行くキハ40」

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