東北・北海道

【北海道】大賑わいの新十津川駅・鉄道亡き後を担うバス――JR札沼線(学園都市線)・北海道中央バス滝川浦臼線(3) #52

新十津川町の幹線「滝新線」

さて、そんな観光客の喧騒に満ちた新十津川駅もそこそこに、駅前通り(?)を新十津川町役場方向へ歩く。役場までは、ものの5分ほどだ。

「新十津川役場」から滝川駅までは、北海道中央バス「滝新線」が1本/h、他の系統を合わせると1〜3本/h程度走っており、北海道のローカル路線バスとしてはかなり頻繁に運転されている部類と言える。新十津川役場からの始発は7:45、9:50〜18:50まできっかり1時間間隔、最終は19:14までと、サービスレベルもまずまず。日常の足としては、十分に機能する。

このうち、滝新線本線は新十津川役場を始発とするため、新十津川町役場の敷地内ロータリーから出発するが、それ以外の支線系統は国道275号線上のバス停を経由するのみで、ロータリーには入らない。また、新十津川役場始発のバスは、国道275号のバス停には停車しない。このため、新十津川役場から乗車する際は注意を要する。

▲新十津川駅から5分ほど離れた役場前。コンビニや商店が立ち並ぶ

札沼線列車からちょうど良く接続するバスは、9:50発の滝新線・新十津川役場始発・滝川駅前経由・滝の川団地行きと、9:56発のふるさと公園線・滝川駅前行きの2本がある。新十津川役場と滝川駅前を結ぶのは同じだが、滝新線は石狩川を下流側の「滝新橋」で渡り、滝川駅前を経由してから滝川市街を廻る。これに対し、ふるさと公園線および滝川浦臼線はまず支流の徳富川を「新十津川橋」で渡ったのち、かつて石狩橋本駅があった橋本町を経由してから、石狩川を「石狩川橋」を渡り、滝川市街を経由してから滝川駅へ向かうという違いを持つ。

本来であれば9:50発の滝新線に乗る予定であったが、「寺子屋」でのお土産選びに手間取り、滝新線には間に合わないと判断。国道上のバス停に着いた頃には、9:50発の滝新線がそこそこ座席を埋めて、ちょうど役場の敷地から出て行くところであった。

バス停には、同じように札沼線列車を降り、9:56発のふるさと公園線を待つ客が20名ほどいた。滝新線も同じくらいの乗客を集めており、全員が札沼線からの乗り継ぎではないにしろ、滝新線とふるさと公園線の2台体制でちょうどいいくらいの乗客数だ。これを1台で運ぼうと思ったらかなりの満員状態となり、とてもではないが快適とは言えない。

▲雪に埋もれた国道上のバス停

6分差で2台のバスが立て続けに新十津川役場を出て行くのは一見供給過剰のように映るが、札沼線からの乗り継ぎが多いことを見越しての設定なのかもしれない。浦臼から札沼線と並行する滝川浦臼線は札沼線列車が走る時間帯には設定がなく、新十津川役場8:19発滝川駅前行きの次は、13:46発まで空く。無闇な競合を避けており、実数としては札沼線の利用は皆無に近いものの、補完関係にあると言えるだろう。

ふるさと公園線・滝川駅前行きは定刻通り9:56にやって来た。先客は2名のみで、20名ほどがぞろぞろと乗り込み、整理券を手にする。乗り込んだ客のうち大半が観光客だったのは、新十津川駅の滞在時間を少しでも延ばせるからだろう。新十津川役場始発の滝新線は地元客中心、6分後のふるさと公園線は観光客中心と、役割を分担しているのかもしれない。

▲ふるさと公園線は中型バスでの運行であった

徳富川を新十津川橋で渡った先、橋本町でも地元客を2名乗せた。かつて駅があった集落でもあり、バス停の周囲には郵便局やセイコーマートがあるなど、ややまとまった市街地を持つ。鉄道が滝川でなく石狩沼田などというあさっての方向に走っていたのが悪かったのであって、沿線は決して人がいないところではなかったのだ。

雄大な石狩川を渡れば、すぐに滝川市街地へと入る。寂れつつあるものの、歩行者がいないわけではない滝川市街の「銀座通」「NTT前」などで若干の地元客を降ろした。札沼線からの乗り継ぎと思しき観光客はやはり全員が滝川駅まで降りなかった。10:10、滝川駅前着。

▲中空知の中心・滝川駅。バスターミナルは画面左手

札沼線からの観光客の乗り継ぎを含むとはいえ、6分差で2本のバスが雁行するとは…。人口6,600人の町としては、非常に活発な交通需要を持っていると言えるだろう。石狩川を挟むものの、新十津川町は実質的に滝川市の郊外住宅地として機能している。人口も減少傾向にあるとはいえ、「母村」である奈良県吉野郡十津川村の倍の人口を有し(1889年の十津川大水害の被災者が移り住んだのが新十津川町のはじまり)、中空知地方の中心都市・滝川市の人口40,500人に対しても、結構なボリュームを持っている。

要は、滝川と新十津川は一続きの市街地を形成しているようなもので、滝川の市内循環線バスがやはり1本/hの運転であるように、市内線のような感覚なのだろう。その証拠に、新十津川までは1本/hが確保されていても、その先の浦臼や、或いは雨竜・北竜方面となると、途端に1日数便になってしまう。新十津川から先は、一続きの市街地とは言えないというわけだ。

そうであるからして、新十津川にとっては、滝川へのバスがきちんと確保されていれば、札沼線が無くなろうが、殆ど影響はないのである。現に、札沼線の廃線に伴う代替バスはこの区間だけ設定されず、既存の滝川浦臼線をもって代替とし、利用促進を図るとしている。滝川浦臼線は5往復/日(土休日4往復/日)あり、僅か1往復/日の札沼線が無くなろうが、それで全く問題ないのだ。

札沼線が観光資源として賑わっているうちは滝新線をはじめとする各線も多少は潤うだろうが、それもあと1年ほど。札沼線が廃線となれば、もとの落ち着きを取り戻すだろう。そうなったとしても、滝新線は滝川と新十津川を結ぶ幹線として、変わらず機能してゆくことだろう。滝川駅前に到着したバスの車内にできた行列を見て、そう思わずにはいられなかった。

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「札沼線を受け継ぐ“滝川浦臼線”」

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